Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Amaryllis & Belladonna / Mary Halvorson - パンデミック渦で花開いた音楽

また少しレコードを買いはじめて、その一つが少し前から欲しかったフリージャズギタリストのMary Halvorsonの(アナログでは)2枚組のアルバム『Amaryllis & Belladonna』をようやく手に入れた。新譜のアナログ盤でも買い時を逃すと、次のチャンスはなかなか…

Carl Stone, Brian Eno, Kali Malone, Laura Allan, Forgiveness - 最近のリリースで気になったもの

最近レコードをあまり買っていなくて、仕事をしながらストリーミングで聴いていた中で気になったものを少し紹介。 Carl Stone / We Jazz Reworks Vol.2 Carl Stoneとは90年代初めにCD-ROMソフトのプロジェクトで関わったことがあり、その後も数回日本でのコ…

失われた Low の天使の声 Mimi Parker が死去

このニュースはショック。Lowのサウンドの中核であるミニマリスティックなドラムと凛とした歌声の Mimi Parkerが死去。2020年から卵巣がんをわずらっていたらしい。今年のツアーの映像では何もそんなことを感じさせていなかったので、ファンとしては二重のシ…

ベートーヴェン/後期弦楽四重奏曲 - 耳が聞こえなくなった作曲家の音楽

ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770 - 1827)は学校の音楽室にこのジャッケットのような胸像が飾ってある大作曲家。年末なれば「第九」の「歓喜の歌」のメロディが流れてくる。ドイツを除けば日本ほど第九が好まれている国はないだろう。元はドイツ…

SHURE カートリッジ V15 Type3のウッドケース化 - ハイファイからロウファイ、音楽に豊かな響きを加える

これまでもSHURE M44GやM75EB Type2をシルバーハートの黒檀やローズウッドの材質でウッドケース化を行なってサウンドの変化を楽しんできたが、いよいよV15 Type3のウッドケース化をやってみた。今回はその話を。 カートリッジとウッドケースの関係 カートリ…

Monument / Molchat Doma - 静かに溺死させてくれ、と歌うダンスミュージック

最近気になっていたレコードを偶然見つけた。それはMolchat Doma の『Monument』。このグループのことを知ったのは、YouTubeのおすすめに表示されたこのビデオを見たことがきっかけだった。 www.youtube.com チェルノブイリの跡地を思わせる共産主義を象徴す…

Pere Ubu - David Thomasの不思議音楽世界

bandcamp.comでDavid Thomasの特集があった。 daily.bandcamp.com David Thomasは、1970年代後半、DEVOと同じ頃にクリーブランド州オハイオ出身のグループ『Pere Ubu』のリーダー、リードシンガーとしてシーンに登場する。バンド名の『Pere Ubu』は前衛的な…

The Bridge / Thomas Leer & Robert Rental - エレクトリックでモノクロームな世界

1979年のリリースされたダークウェーブ、ダークアンビエント、インダストリアルテクノの原点とも言えるアルバム。この作品の影響を受けた人も少なくないだろう。最近リイシューされて入手しやすくなったのはよかった。ストリーミングでも聴けるようになって…

Pink Floyd / Animals (2018 Remix) - 混迷したハードロックバンドとしてのピンク・フロイド

リミックス、リマスターが続くPink Floyd。1977年にリリースされたアルバム『Animals』の2018年盤リミックスが単独でリリースされた。今、聴いているのはApple Musicの192KHz/24bitのハイレゾストリーム版。 コンセプトを変えて混迷の末のリリース この『Ani…

レコードを買うことよりも聴くこと - 悩んで買って繰り返し聴くことで見えてくること

COVID-19の前は仕事の打ち合わせがあると、その帰りにレコード店に寄って買っていたりしたが、パンデミックになって全てリモート会議に移行して便利になった分、そうしたチャンスはなくなり、たまに学芸大のサテライトに散歩を兼ねて行く程度になってしまっ…

SHUREカートリッジの交換針の今 - JICO製・無垢楕円針とナガオカ製の交換針を買ってみた

レコードを聴くにはカートリッジが必要で、その針は消耗品なのでいずれ交換が必要になる。ただ針先のクオリティやユーザーの使用状況によってその寿命はずいぶん変わる。きちんとクリーニングされた埃のないレコードを再生するのと、クリーニングをしないで…

スティーブ・レイシーとの対話 / ジェイソン・ワイス編 - 言葉で追う孤高のジャズミュージシャンの生涯

スティーブ・レイシー(Steve Lacy 1934 - 2004)は、ソプラノサックスの可能性を追求し続けたジャズ・ミュージシャン。生前は残念なことに、日本のジャズジャーナリズムでは、インプロバイザーとしての側面ばかりが強調され過ぎたところがある。まあ、時代…

Roger Waters / This is Not a Drill - これが訓練でないとしたら、いったい何なのか?

元Pink Floydのロジャー・ウォーターズ(Roger Waters )の4年ぶりのツアーが始まった。今回のタイトルは『This is Not a Drill(これは訓練ではない)』。前回の『US+THEM』ツアーでは、当時のトランプ大統領を激しく攻撃するのがメインテーマだった。トラ…

Camembert Electrique / Gong - 自由であれと伝えるヒッピーの伝道師

Gongは不思議なグループで、1960年代末に初期にSoftMachineがフランスで演奏した後で帰国の段になったら、メンバーのDaevid Allenがドラッグかビザの問題で英国に入国ができなくなってフランスに止まったことには始まっている。元々Daevid Allenはメンバーの…

MOFT Snap iPadスタンド - 縦方向、横方両方向使えて、取り外せるすぐれもの

電子書籍を読んだり、WEBをチェックしたり、スケジュールを調整したり、原稿を書いたりのちょっとした作業や移動時に持ち歩いて重宝している10.3inchのiPad 9gen。ちょっとしたスタンドが欲しいと思ったら、Apple純正のカバースタンド(お風呂のふたみたいな…

Bang&Olufsen Beoplay M3 - 購入から4年でただの不燃ゴミに

この写真のBang&OlufsenのBeoplay M3 Bluetoothスピーカー、2018年に購入してから、小型で、音もそこそこ良く、インターネットラジオやストリーミングをBGMにする時に重宝していたが、今週初めに電源がONにならなくなってしまった。 それで、Bang&OlufsenのW…

Hellfest 2022 - 今、ヘヴィメタルは最も寛容なジャンルなんだろうか?

EUの文化事業の一環であるYouTubeのARTE Concertのチャンネルで、今年は観客を迎えて開催されたヘヴィメタルフェスティバル『Hellfest』の様子を見ることができる。『Hellfest』はフランス西部の都市で開催されるイベントで、今年は6月17日から26日にかけて…

Script of The Bridge / The Chameleons - 音楽と共に老いていく幸福なノスタルジア

この1983年にされたアルバムのことはつい最近まで全く知らなかった。The Chameleonsは英国マンチェスター北部で絶大な人気があったローカルバンドだったらしい。マンチェスターといえば、Joy Divisionを擁したFactoryレーベルの本拠地でもあり、僕も当時多く…

ウエスタン・エレクトリックのスピーカーケーブルを聴く - あるがままに音楽を聴かせる不思議なケーブル

Western Electric(ウエスタン・エレクトリック)のスピーカーケーブルの話。ウエスタン・エレクトリックのビンテージケーブルというのは、一部では絶対的な支持があり、カルトアイテム的な印象を持っていた。 ウエスタンエレクトリック社は1869年に電信設備…

STERLING刻印とMASTERDISK刻印の話 - カッティングによるアナログレコードの音の違い

アナログレコードのレーベル面がある内側の無音部分(ランアウトとも呼ばれる)には、そのレコードに関する情報が刻印されていて、コレクターや音の良いレコードを探す人にとっては重要な情報源となっている。それはレコードが制作されるプロセスとも密接に…

学芸大学「サテライト」へ久しぶり出かけて中古レコードをいろいろ買う - David Cross, Michael Hoenig, Codes In The Clouds, Steve Marcus, Michael Mantler, Olivier Messiaen

これまで何度か書いたことのある学芸大学にある街の中古レコード屋さんの「サテライト」。去年は2か月に1度くらいは行っていたが、仕事が忙しかったりいろいろあって今年になってから初めての訪問となったが、お店はいつも通りの雰囲気。あまり変わっていな…

SRSQ / Unreal - すべてのものが暗黒の中にあっても私は太陽のからの瞬き

この1年ちょっと探していた女性シンセ、ダークウェーブアーティストのSRSQ の『Unreal』とタイトルされたレコードが入手できたのでその話を。 多くの若者、アーティストが犠牲になったゴーストシップの火災 このアルバムについて書くにはまずこの事件に触れ…

シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルン、バッハ - 古いボックスセットのレコードを聴く

クラシックの箱物LPセットの話。ストリーミングの時代になってもロックやジャズのアニバーサリーボックスセットは手を変え品を変え登場するが、1960年代後半〜70年代後半に多かった豪華なクラシックのボックスセットは姿を消してしまったように思う。今では…

ガーゼでレコードのウェットクリーニング - 日常的な安価なクリーニング方法

レコードの日常的なメンテナンスの話。レコードと静電気、そして静電気に吸い寄せれらるホコリはいつも問題になる。このブログでも静電気除去ブラシのことを書いていて、そうしたブラシももちろんいいのだが、やはり盤面を直接拭くのが1番早い。 湿気を含ん…

Scott Walker / Bish Bosch - スコット・ウォーカーは過去を振り返らず闇の中を進む -

去年の終わり頃からScott/ Walkerの晩年のアルバムをまとめて聴いている。聴けば聴くほど深みにはまりそうな音楽で、彼の晩年のアルバムに比べたらDavid Bowieのベルリン三部作ですら当たり障りのないポップなアルバムに聴こえてくる。 多くのアーティストは…

Marantz Model 3250 再登場 - 音楽が心地よく歌うプリアンプ

仕事が詰まってしまってブログのまとまった記事が書けないのはストレスだったりするけど、レコードは相変わらずインターネットで買っていたりする。そんなこんなの中でメインで使っていたビンテージのプリアンプMarantz Model 7が不調に。 少し前からボリュ…

ECMレーベル - リバーブのつまみを握りしめた魔術師の世界

オーディオ雑誌の『STEREO』の特集が「ECMとオーディオ」だったので久しぶりに購入してみた。ECMレーベルとしての最初のリリースが1969年。それから50年を経てもオーナーのマンフレート・アイヒャーはずっと君臨し、レーベルのサウンドトーンも一貫している…

MMカートリッジの消磁を本気でやってみる - analog誌の記事「かないまる消磁レシピ」を検証

『analog誌『2022/Winter Vol.74』にカートリッジ の消磁に関する記事があったので検証してみた。この記事にもある通りカートリッジ の消磁はMCカートリッジではよく言われるが、MMカートリッジでも帯磁は音の劣化の原因になる(コイルの鉄心が帯磁する)。…

SHUREのカートリッジ を聴き続けて- 閉じ込められた過去の時間を蘇らせる

このブログを書き始めた2018年の初め頃からSHUREのカートリッジを意識してポツポツ集めて、いろいろ試行錯誤しながら聴いてみて、最近ようやく思うような音で再生ができるようになってきた。以前書いた記事と重複するところもあるが、SHUREのカートリッジ に…

2021年に手にしたアナログレコードから - 音楽は言葉では説明できないものを運ぶことができる器

去年も2020年によく聴いたアルバムの記事を書こうとしたのだけど時間切れでボツにしてしまったので、今年こそ2021年版を書いてみる。間に合うかな? 今年もアナログレコードを中心に新譜も中古も100枚近く買ったのではないかと思う。昔と買い方が変わってき…


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