Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

International Harvester / Harvester / Träd, Gräs & Stenar - 共同体幻想の見果てぬ夢のサイケデリックロック

最近、カケハシレコードで、1960年代〜70年代のスウェーデンのヒッピーグループ、「Harvester(International Harvesterから名前を縮めたもの)」の中古CDを購入して、聴きながらいろいろ思うことがあったのでその話を。

僕が最初に「International Harvester」のアルバムを買ったのは1990年ごろで、明大前にあった「モダーンミュージック」というサイケデリックアンダーグラウンド専門のお店でだった。インターネットがない時代なので、このアルバムを巡る言い伝えのような話がいろいろあったが、このCDのライナーを読んで、このグループが生まれた1960年代後半の様子がわかってきた。

共同体の音楽を目指したInternational Harvester

すべては、1967年の春に米国ミニマリズムの作曲家Terry Reillyが、ストックホルムの音楽大学に客演して、学生と一緒に「In C」と「Olson III」の2曲を演奏したことに始まる。音大生で当時の十二音技法やセリーによる現代音楽に行き詰まりを感じていたBo Anders Perssonは、「In C」の演奏に参加したことで大きく感化され、シンプルで共同体的な音楽を演るためにPärson Sound を結成し、それがよりコミューン的なInternational Harvesterに発展していく。

もう一つの動機には、これも当時の若者が抱いていた反資本主義、共産主義や社会主義への憧憬というイデオロギーもある。それは彼らが演奏の拠点が、共産主義者が集う「カフェ・マルクス」という場所だことからもわかる。当時のインタビュー映像がYouTubeに残っている。

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司会者の「どうしてシリアスな(芸術的な権威のある)音楽を演奏しないのか?」という問いに「我々の音楽が最もシリアスであり、これまでのシリアスな音楽は現実や社会、コミュニティとの接点を完全に失ったエリートのものにしか過ぎず、大衆が理解できるものとかけ離れてしまった。」とこれを批判し、「どんな文化おいても誰もが音楽に参加することができ、演奏家と聴衆を分断することに意味はない」、「すべては政治的で、オーケストラも政治的なものとなっている」と指摘する。そしてカメラは彼らが演奏するサイケデリックな音楽に移っていく。

その音楽はInCの影響か、単純な繰り返しが多く、ハードであっても瞑想的で、メランコリックなメロディには、甘美的なところがあって親しみやすいもあり、まさしく「共同体としての音楽」としてある。その素朴で、無垢な憧憬が今でも聴き手に訴えかける力を失っていない理由かもしれない。

Harvester から Träd, Gräs & Stenarへ

「International Harvester」は、その後、「Harvester」へと名前を縮め、Bo Anders Perssonは、ストックホルムの電子音楽スタジオでの作品制作に戻り、その音源はbandcampにもあった。一部はWERGOからFolke Rabeの“WAS”とのカップリングでリリースされている。タイトルは「蛋白質帝国主義」というものだった。

「Love is Here to Stay」というタイトルの曲があるのが、「Harvester」の名残を感じさせる。

残りのメンバーは、「Harvester」としての音楽活動を続け、よりサイケデリックでドローンな音楽に傾倒していき、1970年代に入ると、「Träd, Gräs & Stenar(木と草と石)」にグループ名を変える。

終わりなきサイケデリックの旅

「Träd, Gräs & Stenar」としてのライブは、bandcampやYouTubeに多数残っていて、今でも活動が続いている。

bandcampにある1970年のライブ音源。溢れるアシッド感のAll Along The WatchtowerやSatisfactionのカバーが聴ける。

近年のライブも充実していて、懐かしいグループという感じは全くしない。常に自分たちの音楽のルーツ(思想を含めて)を大切にしながら、アップデートされてきている。

これは、2017年のライブで、Harvestere時代のナンバーを演奏している。

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2018年のライブでのハードなサイケデリックナンバー。若い女性ドラマーの演奏がいい。こういう曲には重いドラムではなく、彼女のような知的でリズムが漂っていくようなリズムが必要で、それに応えるようなハードなギターソロも素晴らしい。

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現在はグループ名を「Träden(木々)」と変えてアルバムをリリースしている。その音楽も幸福感にあふれている。

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1960年代の若者が理想としたコミュニズムは、ロシア革命から100年の歴史において、その理想とはかけ離れた自由への弾圧と独裁者を生み出すメカニズムに変容してしまい、民衆ではなくエリートによる支配を指向するものとなってしまった。彼らが思い描いた理想の社会は、その幻想の中から出ることはなかった。

でも彼らの音楽だけは、その理想を諦めることなく、今でも鳴り響き続けている。

家路

家路

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DOORS、MUSIC MACHINE、JANIS JOPLIN、ROGER WATERS etc. - なんだか中古のCDは安くてよい

相変わらずCDを買っている。別に前衛ばかりでなく、オールドロックのCDも。少し前にもカケハシレコードのサイトで バーゲンをしていたので、500円から800円くらいものばかり少しまとめて買ってみた。

MUSIC MACHINE/TURN ON (2007 remaster)

Music Macchineは、1966年から1968年まで活動したLAのガレージロックバンド。時代的には日本のグループサウンズに近いかもしれない。ハードでリズムが太い、コンボオルガンが入った洗練されたサウンドで、「ドアーズ以前のドアーズ」と言われたりもしている。メンバー全員黒いタートルネック、片手には黒い革手袋というファッション。

www.youtube.com

キズが多いモノラルオリジナルLPも持ってるが、ステレオミックス+モノラルミックス+シングルのCDなので購入。CDらしい整理された音になっているが、この時代特有の妖しさは健在。

DOORS/L.A.WOMAN (2011 remaster)

今回の一番の買い物はこれだった。ドアーズ最後のスタジオアルバムの40周年2枚組。ライノレーベルらしい趣向で、1枚はオリジナルアルバムのリマスター、もう1枚はアルバムと同じ曲順に並べたスタジオアウトテイク。当時のドアーズはジムモリソンのステージ上での奇行が原因で米国内ではツアーができず、ワイト島のライブなどは数少ない機会だった。

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このレコーディング時は、人間関係を始めバンドの状態は良好とは言い難いものだっただろうが、このスタジオアウトテイクの荒々しい演奏は、まだこのバンドに音楽のマジックが残っていることを証明している。いつもならアウトテイクには否定的なのだが、これは手抜きのない本気のスタジオライブみたいで演奏の熱度も上がっていくほどすごく、聴きごたえたがある。 「Riders On The Storm」はTake10まであったことも発見だった。ライナーを読むと「自分たちのブルースを演る」というのがテーマだったようだ。ロスアンジェルスという都市に暮らす白人としてのブルース。

L.a. Woman -40th-

L.a. Woman -40th-

  • アーティスト:Doors
  • Rhino
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JANIS JOPLIN/JANIS (BOX) (1993)

ドアーズのジム モリソンと同じく27歳で亡くなったジャニスの死後、CDの時代になってリリースされたアンソロジーのCD3枚組ボックスセット。なんと800円だった。内容はデビュー前のブルースフォークの歌から最後のレコーディングまで彼女のキャリアが包括的に網羅されており、内容も充実している。

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僕はBig Brother & Holding Company 時代が一番好きかな。グループのメンバーとして伸び伸びしている気がする。ソロでフロントに立つようなってからもいいが、何かこうプレッシャーといつも戦っているような、ある種の悲壮感のようなものが歌にまとわりついているように感じてしまう。

ROGER WATERS / FLICKERING FLAME(2002)

元Pink Floydのロジャー ウォーターズのソロアルバムと未発表テイクから成るベスト盤。近年は政治的発言が物議をかもしてばかりだが、彼の無神論者で体制に関わらず全てに対して反戦主義者という一貫したスタンスは理解できないわけではない。

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彼の一連のソロアルバムもそうした思想を色濃く反映していて結構重いところがあるが、こうしてベスト盤として並べられると、楽曲の良さやメッセージが分かりやすく伝わってくる。1曲目がボブ・ディランのカバーの「Knockin’ on the heaven’s door」というのも変わっているが、最後の映画「海の上のピアニスト」のエンドロール用の曲のアウトテイクも変わっている。映画でのヴァン ヘイレンのギターが入ったロックバージョンとは全く違い、エンリコ・モリコーネが最初に送ってきたであろう、オーケ ストラ版の演奏をバックにオペラ歌手のように朗々と歌い上げる。戦争で亡くなった子供達を追悼する歌を。

SIMON & GARFUNKEL/LIVE 1969(2008)

サイモン&ガーファンクルの解散前の1969年11月のツアーで収録された音源が2008年になってリリースされたもの。このツアーとき、「明日にかける橋」のアルバムは録音は終わっていたが、まだリリース前。この英文ライナーにも書かれているが、当時の米国は、ウッドストックフェスティバルの開催、アポロ11号の月面着陸、ロバートケネディ大統領候補の暗殺、キング牧師の暗殺、泥沼化するベトナム戦争、といった状況。

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彼らは声高に政治的な発言をすることは一切なかったが、その音楽と通じて時代にメッセージを送ろうしていたのかもしれない。このライブでは、聴衆が初めて聴くことなる「Bridge Over Troubled Water」を切々と声の限りに歌うアートガーファンクルのパフォーマンス、そして、彼らの代表的な作品の「Sound Of Silence」の2人だけを演奏。ひとつは困難を超えての融和を促すもので、もう一つはコミュニケーションの断絶を告発する。それらは時代を超えた普遍的な問いを投げかけているように感じる。

Soaringtortoise - 飛翔する亀の音の旅 - 憧れと郷愁

これも最近YouTubeでよく見ているものの話。ひとつのことをずっと追求し続ける、やり続けるというのは、簡単なようでいて難しい。好きなことであってもそれを続けるていくには、ある種の胆力のようなものが求められる。普通は、どこかでそれを諦めたり、やめてしまったりするが、中には脇目もふらずに自分が信じる世界に向かい続けることができる人がいる。このSoaringtortoise(飛翔する亀の意か?)としてビデオのアップロード続けるDIY音楽家はそうした幸福な人のひとり。

ビデオを見てもらうとわかるが、古いアンプやミキサー、自作や改造楽器が散乱する部屋でドローンというかアンビエント、アバンギャルドというか、独自の音楽を作り続けている。

最新作はこのテリーライリー風の音楽。古いカシオトーンと思われるチープなキーボードのキーを9V乾電池を重しにして通奏低音のドローンを生み出し、電子ピアノとピアニカのメロディが重なっていく。

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彼の特徴的な自作機材の一つが、モーターで回転する卓上レスリースピーカー。回転スピードを変えることで独特のトレモロ効果を得ていて、それを聴いているとすごくサイケデリックな体験のように思えてくる。

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Pink Floyd の「Wish You Were Here」をチープなターンテーブルにのせてリアルタイムでサンプリングしながらの演奏。ここではポータルブルカセットを改造したテープループが活躍している。

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CANやAsha Templeを想起させるジャーマンロック風の演奏。この人の演奏を見ていると自分のDIYの機材を知り尽くしていることがよく分かる。ここでもエレクトーンのようなキーボードで9V乾電池のドローンが聴ける。

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民族音楽のオムニバス盤をサンプリングしながらの演奏。ここでもキーボードの奥にあるカセットループに注目。電圧で回転を調整してのスピードが調整できるようになっているようだ。音楽が変容していく様は、説得力がある。

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カセットプレーヤーを改造したテープループを全面的に使った演奏。恐ろしくローファイでシンプルなのだが、くらくらするような音楽。サイケデリックな夢の風景。

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この人の手にかかると、おもちゃのピアノやウクレレという楽天的な楽器も別の意味を持たされる。スライドギターを聴いていると、それはタルコフスキー的なノスタルジアかもしれない。

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このビデオを見ていると、僕も世界の片隅で自分の世界に籠って作品を作り続ける、こんな風になりたいという憧れを抱く。

Apple HomePod スピーカー - 就寝時の耳鳴りの友として。でも選曲をどうするか?

年齢を重ねるごとに耳鳴りが気になる。それは、ライブハウスで大音量のバンドを見た後の帰りで耳がずっと「キーン」と鳴っている状態が24時間続くようなもの。最初の頃は左耳だけだったが、今では右耳の側も同じ状態で、疲れが溜まったりすると、「ガサガサ」と紙を握りつぶすような音とかが加わってくる。なので、どこへ行っても、僕にはもう完全な静寂というのはない。絶えず、「キーン」という音がつきまとっている。

耳鼻科の専門医のアドバイスによると、耳鳴りを抑える治療法はなく、気にすると精神的に悪いので、起きたらすぐに音楽をかけるとか、ラジオをつけるとか、耳鳴りの音を気にしない環境にしてください、とのこと。

日中は仕事中も音楽をかけているのでいいのだが、最近問題なのはベッドに入ってから。一度耳鳴りが気になるとなかなか眠れない。そこで寝る時にも音楽をかけるワイヤレススピーカーでも導入しようと考えたが、手頃な価格で音質もそんなに悪くなく、ベッドサイドの狭い場所にも収まるものとなると、なかなか好みのものがない。Boseの音はもう飽きたし、B&Oは10万円越えで価格が高すぎる。B&Wは大き過ぎ、JBLは少音量の再生には向いてなさそう、となると選択肢があまりない。そこで、思い出したのが、AppleのHomePod。寝る時はiPadを持っているし(老眼なのでもうiPhoneの画面サイズで文字が読めない)、そこから再生すればいい。価格は安くはないが、インテリジェントなスピーカーと考えれば44,800円なら妥協できそう。

HomePodは音質も使い勝手も想像以上

届いてみると意外とコンパクト。Appleらしいすっきりしたデザイン。ACアダプタでなく、専用のACケーブルがピッタリ収まる設定になっている。ACアダプタでないのは嬉しい。Mac、iPhone、iPadは何台もセットアップしているが、HomePod はどうするのかと思ったらiPhoneの Homeアプリを使用する。iCloudのアカウントを使って設定はほぼ自動でWiFiのネットワーク設定も自動で終わる。つまり、外部スピーカーとしてはBluetoothでなくAirPlay2専用。

HomePod自体はインテリジェントなので独立して動作でき、「Hey Siri!」の音声認識で、曲やプレイリストの再生、目覚ましアラームの設定、天気、スケジュールなどたいていのことはできてしまう。この機能が意外と使いやすくて便利だった。Apple Musicも他のデバイスなしで単体で再生できる。僕は就寝用に「夜の音楽」というプレイリストを作ったので、「Hey Siri! 夜の音楽のプレイリストを再生」と言うだけ。

音質はこのサイズとしては低域の量感があるピラミッド型で高域も神経質なとことがなく、ゆったりとしたサウンド。小さい音でも音やせしない。あまり高解像度で高域にアクセントがあると今回の用途には合わない。部屋で普通に使う時も音量を上げてもバランスは破綻しないので、サブスピーカー的な用途にも十分使えそう。2本揃えるとステレオ再生も可能になる。

今回ベット横に置くのに場所が狭いので細いスツールを買って乗せた。偶然、高さもちょうどだった。

「夜の音楽」のプレイリストの選曲をどうするか

それで就寝時の音楽をどう選ぶかだけど……。20年ほど前にも別の理由で寝る時に音楽をかけていて、その時は、Brian Enoの「Thursday Afternoon」や「Nerori」だった。今回も最初試しに聴いてみたが、古臭いものに感じて全然ダメ。昔は感じなかったが、意図的にある雰囲気 に上塗りされているメロディを甘ったるく感じてしまって今の自分に合わない。

それで、選んだのは、またしてもKali Maloneの『The Sacrificial Code』。結局、今の自分に一番フィットするのはこうしたオルガンドローン。

最新作からもオンガン曲を加える。

もう1人は、オーストラリアのLisa Lerkenfeldtのピアノ曲。執拗に同じピアノの和音が繰り返される背景に電子音のゆっくりとレイヤーが作られていく。

それで、耳鳴り対策の効果はどうかというと、よく寝付けるようになった。眠りが浅くなることがあっても、聴こえてくるものがあると安心できる。

もし、目が覚めない朝があっても、スピーカーから音楽は流れ続けているんだろうな。 - Music is the only friend until the end.

Bad Amputee / Convenience Kills - 無垢な精神の音楽

bandcamp.comやYouTubeは新しい音楽を発見する場所として自分の中で定着しつつある。今回紹介するのは、英国ニューキャッスルを拠点するとトリオのBad Amputee(「酷い四肢切断」の意)。バンド名からはノイズかハードコアバンドを思わせるが、これが、まるでLOWのようなスローコアを演奏するバンド。

いや、もっと素朴でハードなところもあり、 CloserのJoy Divisionを思い起こさせる雰囲気もある。メンバーは、Phil - guitar, vocals、Claire - bass, vocals、Rob - drumsの3人。これまでもいくつもバンドを経験したのだろう、もう若くはないが、自分たちの音楽を知りつくしている揺らぎない自信を感じさせる。

最初に偶然見たのはこの2022年のライブ映像だった。場所は地元ニューキャスルの実験的な音楽フェスの小さな部屋。最初の音が出た瞬間から、その実直でひたむきな演奏に釘付けになった。飾りの一切ない、素人っぽい、丸裸にされたかのような嘘のない音楽。

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コードを鳴らすだけでソロが全くないギター、一音が絞り出されるようなベースと叫びのようなコーラス。手数が極端に少ないドラム。それらが一体となって聴くものに訴えてくる。

別に商業的な音楽を否定するわけではないが、彼らのような商業主義とは無縁な音楽だけが備えている「無垢な精神」はそれだけで、人の心に強く共振するものがあるように感じる。

Marantz Model 250 - 音楽がスピーカーから吹き上がってくるパワーアンプ

最近オーディオの記事を書いていないが、夜はMarantz 7で相変わらずレコードやCDをかけて聴いている。パワーアンプは70年代後期の中堅パワーアンプのModel 3250。これは抜け良いサウンドで気に入っているのだけど、左チャンネルのボリュームにガリが出始めていることと、もっと馬力のあるパワーアンプもいいなぁ、と去年から漠然と思い始めていたところ、これまでも利用している中古オーディオのハイファイ堂のサイトでMarantzの1970年頃のパワーアンプ 、Model250が売られているのを発見。当時の定価は30万円、それが整備確認済みで118,000円、1年間の保証付き。 悩んでいると買い損ねて後悔しそうなので思い切って購入した。今回はその話。

アメリカ生まれのパワーアンプには電源スイッチがない

購入の決め手になったのは、ビンテージのMarantzのアンプということはあるが、パワーアンプとしては小型で奥行きが30センチ以下でラックに収まりがよく、重量が20Kg以下なので1人で設置や移動ができること。ハンドリングしやすいことは腰を痛めないためにも大切だったりする。それに塗装補修されたウッドケースに収まっていてルックスも良い。

これまで使っていたパワーアンプのModel 3250は、設計が米国マランツで製造は日本マランツのMade In Japanだが、このModel 250は設計・製造ともに米国。カリフォルニア、サンバレーの銘板が貼ってある。使用されているパワートランジスタはモトローラ製。モトローラは、僕の中で80年代のCPUや半導体メーカーの一つという認識だったので、パワートランジスタがあったのは意外だった。

このModel 250のパワーアンプが、いかにも米国製であるとことを感じさせる点は電源スイッチがないこと。日本人の常識からすると家庭で使う電気製品に「電源スイッチがない」のは考えられないが、米国ではそうでもないらしい。そこには電源スイッチは「入れる」ためにあるのか、「切る」ためにあるのかという思想の違いがありそう。電源を入れたままにしておけばいいものに「電源を切るスイッチは不要」ということなんだろう。実際、70年代の米国製オーディオ製品には電源スイッチがないものが少なくない。省エネの概念がない、幸福な時代の製品。なので、電源オン・オフは、ごそごそとラックの裏側に入って直接コンセントを抜き差しすることになる。

ビンテージのオリジナル度をどこまで残すか

これは、オーディオだけでなく、楽器でもクルマでも同じだが、「オリジナルの状態をどこまで残すか?」という課題もある。積極的にパーツを入れ替えて「今風に改善」するのか、安全上の問題や著しく劣化している場合を除きオリジナルの状態を保つのか、僕は後者の方。外装や劣化パーツや錆びたりした端子を同等品に交換するのはいいが、直出しの電源ケーブル止めてイントレットを取り付けてしまうような改造は好まない。

昔のアンプは直出しの電源ケーブル込みで音決めされているだろうし、インレットにされてしまうと、電源ケーブルで音がコロコロ変わってしまうので、元の状態がわからなくなってしまう。今回のModel 250は、RCA入力は金メッキの新しいものに変わっていたが、プッシュ式のスピーカー端子や直出しの電源コードはオリジナルのままのようだ。

乾いた、力強いアメリカンサウンド

設置して数日しか経っていないが、音はある程度想像していた通りの乾いた力強いアメリカンサウンド。とはいっても野暮ったいわけではなく、繊細な表現ももちろんできる。ただ緻密に音楽を組み上げていくよりも、音楽の流れとか勢いを重視する方向。僕自身の音楽の聴き方がそういった方向に変わってきてるのでちょうどいい。人の声やサックスがリアルで(本物に近いという意味でなく、聴こえ方として)、存在感のあるエモーショナルな表現に長けている。

高音質化的な意味合いでのハイファイではなく、むしろローファイ。上手く言えないが、音楽を情報として再構築するのでなく、音楽を感情の産物として響かせている。なので、こういう音楽表現を「うっとおしい」と受け取る人もいるだろう。好みが分かれるところ。

音質的には低音の存在感が強い大胆なピラミッド型。音量を下げても音が痩せない。ただドライなサウンドなので、暗かったり、重かったりすることはない。サウンドステージはスピーカーの奥ではなく手前に広がる。出力は片chあたり120Wなのでそれほど大きいわけではないが、ドライブ力はありそう。普通にリビングで聴いている分には気持ち良く鳴っている。

古い録音も新しい録音も同じように良い

ビンテージのオーディオ機器で危惧するのは、製品発売当時の古い音源の再生には向いているが、最新の新しい音源には不向き結果にならないかという点。ざっといろいろ聴き進めると、新旧どの音源でも魅力的きな再生音になった。

Systemic / Divide and Dissolve(2023/CD)

メルボルンのドローンメタルデュオ。ソプラノサックスのリリカルは響きとファズギター、ドラムの音圧の高い演奏のコントラストを見事に描ききる。演奏がリアル。

Ruth is stranger than Richard / Robert Wyatt (1975/ LP)

Robert Wyattの3作目のソロアルバム。このパワーアンプは声の再生が良い。Robert Wyattの歌声を聴いていると本当にそう思う。ジャズっぽいアンサンブルの音が交差する表現も上手い。もっと細かい音を出してくるアンプは多くあると思うが、演奏の一体感が伝わってアンプはそう多くない。

The Giuseppi Logan Quartet(1965/LP)

ESPレーベルの中でも異端のジャズサックス奏者Giuseppi Loganのアルバム。以前からアミニズム的なユニークなフリージャズという印象があったが、このアンプで聴くとジャズであるとかないとかはどうでもよく、音楽としてギリギリの場所に踏みとどまっている稀有な演奏。Giuseppi Loganは鬼才だが、バックのDon Pulenのピアノ、Milford Gravesのドラムのセンスと才能が、このアルバムを支えている。ジャズにはこのパワーアンプの大きなアドバンテージがあるのは確か。生々しくて1965年の録音とは思えない。

Future Days / CAN (1973/LP)

ダモ鈴木在籍時の最後のアルバム。このアルバムはCANのひとつの頂点を成すアルバムで、実験精神と脱西洋音楽へのアプローチが高い次元で融合している。ダモ鈴木というと、やたらと『TAGO MAGO』のアルバムばかり語られるが、本当にみんなあの2枚組のアルバムをちゃんと聴いているのだろうか? 1曲目のPaperhouseと「虹の上から小便」のA面だけしか聴かれてないのかな? あの混沌があり、通過点の『Ege Bamyagi』を経て辿りついたのが精神浄土的な『Future Days』ではないだろうか。このパワーアンプの乾いた音で聴くと、これまでとはまた違った、このアルバムのリズムの凄さを感じる。

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いろいろと聴いて強く感じるのは、どれも音楽の体温が高く聴き手を引っぱるエモーショナルな表現に長けている。「音楽はあっち、自分はこっち」という態度を許さない、音楽への密着度が高い時代のアンプらしい音がする。

参考情報

audio-heritage.jp

All Life Long / Kali Malone - 単に美しいだけではすまされない音楽

最近よく聴いているKali Maloneの新しいアルバムの話。

あるアーティストの作品を聴き続けていて、ある時、それとは離れた存在と思って聴いていたアーティストとコラボレーションで結びつくことがある。同じ人間が聴いているわけだから、何らのベクトルが似ていることは確かだが、現代音楽とドローンメタルといったジャンル分けがもはや形式的なものにしか過ぎない。

Kali Maloneは、2019年にリリースされたパイプオルガンの作品「The Sacrificial Code」で、僕の中では、ある特別な存在のアーティスト。同じようにドローンメタルのSunn O)))のStephen O'Malleyも、そうした存在だが、2022年にリリースされたCDだと3枚組の大作「Does Spring Hide Its Joy」では、Kali Maloneのサインウェーブオシレータ、Stephen O'Malleyのエレクトックギター、そしてチェロ奏者の3人で壮大なドローン作品を生み出した。その作品のライブの模様はYouTubeで見ることができる。

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そして、今年(2024年)リリースされたのが、この「A Life Long (一生涯)」。前作とは違い、3分から10分程度の作品が12曲収められている。今回はカウンターテノールや女声の合唱曲、ブラスアンサンブルの演奏曲、そしてパイプオルガンのソロなど表現も多彩、今回も数曲でStephen O'Malleyが参加している。

短い曲が多いせいか聴きやすいアルバムになっているが、個々の作品の質は非常に高く、一音一音が精緻に構成されていている。響きは自然でありながら、感情や成り行きで作られたとことが一切なく、耳には優しい響きのようでありながら厳しい音楽。アルバムをリリースする度に、音楽的な成長を感じさせる。

美的な音楽でありつつ、単に美しいだけではすまされない、根源的な人の存在や感情を暴き出すようなところを感じる。

When you leave home, don’t forget about behind you/ Ear has No Lid - 踊れない強いリズムは何に共振すればいいのか?

自分で作る音楽の3作目を公開。僕にはひどいリズム音痴なところがあって、踊るようなビートの音楽は昔から作れない。聴くのも苦手な方で、ミドルテンポならともかく、最近の130 bpmを超えるEDMようなテンポになると苦痛になってくる。

でも、いろいろなパーカッションの音は好きで、特に民族音楽の打楽器の音やリズムは、それぞれの地域や文化に結びついていて、それが木片を叩くだけでのものであったとしてもイマジナティブなサウンドスケープを感じされてくれる。

この作品はDecent Samplerにあった中近東の大きなタンバリンのようなハンドドラムのサンプリング音がきっかけとなっている。その砂漠の風に運ばれていく乾いた音が耳に残る。

これも前作と同じようにLoopyProのアプリに各種音源を手弾きしたものをループにして、それを重ねたり、外したり操作しながらオルガンはライブで演奏して録音している。なのでビートがずれたりするのは単に僕の演奏能力の問題による。もっと練習しないと。

イントロや冒頭で聞こえる音は、昔の日本製のトイピアノがサンプリングされた音源を弾いたものをエフェクト処理したり、逆回転処理したもの。もとのトイピアノの素朴な音が、釣鐘のような音に変容している。

中盤から後半のオルガンの音は昔のイタリアの Farfisaのコンボオルガンをシミュレートしたアプリの音源を使っている。初期のPink FolydやCan、Sun Raもこのオルガンを使っていた。このオルガンの音で弾いていると時間が経つのを忘れてしまいそうになる。

今の個人的な課題は、AUMを使用してMIDIでのアンサンブルの統合やミックス。次の作品では取り組んでみたい。

2024年2月・最近ストリーミングで聴いたもの、見たもの - Six Organs Of Admittance, Vidna Obmana, 衛星テレビ, Groupers etc.

FOTEXのデスクトップスピーカーを買ってから、MacBookProやiPadProで仕事や雑務をしながら、ストリーミングを聴いたり見たりしている。そんな中で印象に残ったものについて。

Six Organs Of Admittance / Sleep Tone (2020)

新しいものはhiroshi-gongさんのブログをチェックして聴くものが、多いがこれもサイトで紹介されていたもの。いわゆる眠気を誘うアンビエントもので、それもそのはず、Ben Chasny本人が不眠症に悩まされていたときに制作されたもの。ニューエージ風に陥らず、聞き応えのある作品になっているのはさすが。4曲で2時間近い大作。

hiroshi-gong.hatenablog.com

Dire Wolves / Easy Portals (2023)

これもhiroshi-gongさんのブログから。今はメンバーがバラバラのようだが、元はサンフランシスコを拠点にしていたグループのアルバム。メンバーの風貌からしてヒッピー感いっぱいで、サウンドもサンフランシスコらしいもの。特に何かとんがったところがあるわけでないが、全てを包み込むようなおおらかさが嬉しい。こういう素朴なグルーブ感は貴重な存在。ちょっとAmmon Dullの1971年の最終作「paradieswarts duul(楽園に向かうデュール)」を彷彿とさせる。

衛星テレビ/ 衰えるテレビ信号 (2024)

これはBandcampで偶然見つけたもので詳細は全く不明。1980年代〜1990年代のTV CMを素材に、映像と音をカットアップしたりスクラッチしたりして作られた作品。音楽というよりも映像作品的なところがあるが、その素材の非常にドライな扱い方がノイズ的でもある。TV CMという本来は安全で大衆的な存在が、異化されて別の存在に変容している。

映像はYouTubeでも見ることができる。

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Sam Rosenthal & Vidna Obmana / Terrace Of Memories (1991 Remaster 2013)

Vidna Obmana(1986-)は、ベルギーのアンビエント、ミニマリズムの作曲家、演奏家。これは1991年のコラボレーション作品のリマスタリング版。「記憶のテラス」というタイトルから想像できるように、タルコフスキーの映画を見ているかのような90分近いサウンドスケープ大作。ヘヴィなところもあるが、それが魅力にもなっている。

Demen / Nektyr (2017)

これも詳細は不明だが、スウェーデンの女性アーティスト Demenによる2017年の作品。こういう女性ボーカルのソフトなダークアンビエントものにはすぐに魅かれてしまう自分がいる。暗いがそれほど重くはなく、洗練されている。

Grouper / Live 2022 Paris (2022)

これは最近知ったアーティストだが、2005年からの長い活動歴がある。 Grouper というのは米国人のLiz Harris(1980-)のプロジェクト名で、音楽的には自由で、フォーク的なところがある歌ものであったり、ピアノソロだったり、エレクトリックなアンビエントでもあったりする。最近はこの映像のようにビジュアル映像を伴ったパフォーマンスを行なっている。共通しているには、何とも言えない、想像の中のノスタルジアというか、不安な穏やかさに浸される感触がある。このライブ映像はよくそれをとらえている。

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演奏者不明 / Waltz Time(2024)

以前紹介した中国本土のノイズ、フリージャズ、エレクトロニカのアンダーグラウンド アバンギャルドシリーズは、その後も継続的に新しいパフォーマンスがアップロードされている。その中で、一番強い印象を残したのが、このサックスとピアノ+αの演奏。

この女性サックス奏者の絶望や喜びや悲しみが一緒くたになったような切ない演奏は胸に迫るものがある。人懐っこいワルツのメロディが破壊され、それでも元にカタチに戻ろうともがく姿は、彼らの置かれた状況、あるいは今の時代そのものの写し鏡なのだろうか?

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shigeohonda.hatenablog.com

学芸大学「サテライト」 - 小さなお店はいい - Ornett Coleman, NewYork Dolls, Janis Joplin, Television etc.

これも久しぶりに学芸大の「サテライト」に出かけてみた。気分が盛り上がらなかった関内のDisku Unionとは違い、個人でやっている小さなお店ならではよさを実感。店主と売っているものとの結びつきがあるというか、CDやレコードが売り物としてただ棚に放り出されているのとは違うところがあるように感じる。ただ、小さなお店が全てそうかというと、そうでもないところもあり、それは店主のビジネススタンスだったり、客とお店のとの相性のようなものかもしれない。

いろいろと9枚も買ってしまった。

Iron Butterfly / Live (1970)

ヘヴィサイケ、「In-A-Gadda-Da-Vida」 のヒットで有名なIron Butterflyのライブ盤。「In-A-Gadda-Da-Vida」 ももちろんB面いっぱいに入っている。実は、Iron Butterflyのアルバムを自分で買うのは初めて。なにか有名過ぎて手が遠のいていた。Apple Musicで別のライブを聴いた時に、このグループはライブがいい、ということに気が付いていたこともある。オンラインショップで敢えて選ばながい、目の前にあったから買ってしまう類のもの。

Big Brother & Holding Company featuring Janis Joplin (1967)

これは、Janisがソロになる前にメンバーだったBig Brother & Holding Companyのファーストアルバムが、Janisの死後、ジャケットを変えて日本盤でリリースされたもの。中身は米コロンビア盤と同じ。ソロになってからの情念的なブルースフィーリングはまだ希薄で、全体的に軽いアシッド感のあるサンフランシスコロックにまとまっているが、それがこのアルバムの魅力になっている。時代の空気が詰まった個人的には好きなアルバム。ジャケットのJanisのポートレイト写真が良くて購入。

 Janisにまだ幼い表情が残る当時のスタジオライブ。

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NewYork Dolls (1973)

アメリカングラムロック、プロトパンクのNewYork Dolls のファーストアルバム。プロデューサーはTodd Rundgren。当時の危険で退廃的なNewYorkをそのまま具現化したようなグループでRolling Stoneの猥雑なロックンロールにStooges的なワイルドさが加味されている。レコーディング中もメンバーはステージと同じメイクと煌びやかな衣装だったのは有名な話で、それが荒削りなライブっぽいサウンドの仕上がりにつながっている。改めて聴くと、数年後のNewYorkパンクに与えた影響の大きさを感じる。これは近年の再発でレコード盤が赤色だったので購入。黒だったら買っていない。キッチュな赤色のNewYork Dollsのレコードは持っていないといけない気がしたから。

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Ornett Colman / Town Hall 1962 (1965)

1961年に「Free Jazz」をリリースした彼の翌年のコンサート音源。どうも紆余曲折があったようで、録音から数年を経た1965年にESPレーベルからリリースされたもの。アルバムの存在は知っていたが、聴くのは初めて。バリバリのフリージャズではなく、前衛ながら抑制の効いた、作曲された部分の多い演奏。自身のトリオでの2曲の演奏の後は弦楽四重奏団による作品が演奏される。新ウィーン楽派風の作品。B面は再び自身のユニットによる20分に及ぶ演奏。録音も良いし、内容も充実しているアルバム。もっと早く聴けばよかった。

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Luke Sanger / Languid Gongue (2021)

英国のモジュラーシンセイストであるLuke Sangerの 2021年の作品。空間的、点描的な音空間で耳障りなところは一切ないナチュラリストの音楽。少し前に紹介したDavid Edrenに近いような気もする。短い小品が多いところも共通しているし。モジュラーシンセはブームになっているのかもしれない。以前のようにいかにもシンセというサウンドでなく、アーティストによって表現が多様になってきていて、より広く聴かれるようになってきているのも、よい傾向と思うが、どうだろう。

ここからはCDになる。

Daniel Lanois / Bellandona (2005)

このCDのことは全く知らなてく、B.J. Thomas風のスライドギターの音楽がお店で再生されていたのが気になって購入したもの。Daniel Lanoisは、Brian EnoとともにU2などメジャーアーティストのアルバムのプロデューサーでもあったらしい。本作は彼のスライドギターの演奏を中心にしたアンビエントな作品を集めたもの。Enoのアンビエントシリーズにも参加していたようだが、Enoと比べるともっと生っぽい温度感がある。

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James McVinnie / Cycles (2013)

このCDも初めて聴くもの。James McVinnie(1983-)は、英国のパイプオルガン奏者で作曲家。 本作は彼の自作だけを収めたもので、バリトンや弦楽アンサンブルも入るミニマル、エクスペリメンタルなネオクラシカルミュージック。厳しいものではないが、テンションのある演奏で意外な発見だった。彼は他に、バッハとフィリップグラスの作品を集めたアルバムもリリースしており、Apple Musicで聴いたがこれもよかった。フィリップグラスの初期のオルガン曲は、少し前のめりような高いテンションがないとつまらないものになってしまうが、彼はそうした音楽の本質を掴んだ演奏で、フィリップグラス本人以外では、最高の演奏のように思う。

Television / Marquee Moon(1977 / 2003)

説明不要のTelevisonのファースト。もう一度レコードを買うにはプレミア価格になり過ぎ。これも何度もCD化されているが、2003年のリマスタリング盤があったので購入。CDになってから、「Marquee Moon」はフェードアウトでなく、最後まで収録されるようになった。改めて聴くと、あまりにも文学的なアルバム。ボーナストラックのアウトテイクが良かったが、本編に含めるには演奏が荒削りすぎたのだろう。ファーストアルバムにして、終わりの始まりのよう。

Brian Eno / LUX (2012)

Enoが各地の美術館やアートギャラリーでのインスタレーションに使用した4曲を数録したアルバム。傾向としては1985年の「Thursday Afternoon」に近い内容で、昔からのファンには馴染みの深い音調のEnoらしい「アンビエント」で、懐かしい作品ですらある。CDジャケットサイズながら、4枚のイラストが付属していた。

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何枚も買ってお腹いっぱいなのは、お店での買い物ならでは。普段はあまり考えていないが、目の前に出てくると買ってしまうのは、インターネット以前の買い方はそうだった。Disk Unionだって、インターネットの前は、もっとお店にいろんなものが雑多にあった。セグメント化やシステム化が進んだことが、僕にはつまらなくなった原因かもしれない。


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