ココが不思議そうに見ているこの発泡スチロールの中に入っているのは、オーディオユニオンの中古サイトで購入したビンテージのSHUREのカートリッジ、V15 TYPE IIIが入っている。このカートリッジはオリジナルのケースがなかったので、こんな形で送られてきた。
実は今年の春にそれまで使っていたDL-103RやMC20 mk2といったMCカートリッジの「MCのきれいな音」に飽きてしまったというか、聴きたい音楽がロックに回帰したことなどもなり、「もっとガンッと音楽として楽しめるものが聴きたい」という思いが強くなり、試しに20年以上しまっていたSHUREのME97HEという往年のMMカートリッジを出して取り付けてみたら、これが実に良かった。ワイドレンジではないが、MMカートリッジならではのギュッとつまったサウンドが心地いい。
僕にとってSHUREのカートリッジは同年代でありながら、そのラインアップでもニュートラルと言われるME97HE以外は使ったことがなく、それならとまず買ってみたのがM44G。押しの強いサウンドが心地良い。そして次の購入したのが、70年代のハイエンドカートリッジだった今回のV15 TYPE IIIになる。このV15 TYPE IIIは、1973年の発売で1978年頃まで販売されていた。当時の定価は4万円近い高級カートリッジで、秋葉原では3割引位で販売されていたものの当時の僕には手が出ない高いカートリッジで、使ってみるチャンスはなかった。
それで今回、初めてV15 TYPE III手にすることになったわけが、このカートリッジに付いていたのはオリジナルの針ではなく、日本のJICO(日本精機宝石工業)が提供している互換針がセットされていた。針は消耗品なのでコンディションの悪いオリジナルよりも状態のよい互換針の方が合理的だし、僕はそこに純潔を求めないので気にしない。
このV15 TYPE IIIの再生サウンドは70年代そのもの。といってもレトロということではない。当時はM44Gの高級版として設計されたとの話もあるように、レンジは伸びていながら、躍動感のある表現を備えていて、当時も今もJazzファンの支持が多いのも頷ける。70年代ロックはもちろんいい。瞬発力があり躍動感があるサウンドで音楽のうねりを感じることができる。クラシックも悪くないというか、クールになり過ぎない演奏になるところが面白い。本当はこうした演奏ではなかったのかと思うほど。
使い方のコツとしては針圧を上げ過ぎないこと、最大1.25gの針圧だが、当時の海外でのレビューを読むと1g以上に上げてもトラッカビリティは変わらないので1gで使用するのがベストとのこと。実際に針圧計で測ってセットするとそのレビューの通りだと感じた。あと、このカートリッジに限らず SHUREのカートリッジを電気的に正しい状態で聴くには負荷容量を合わせる必要がある。SHUREのカートリッジは負荷容量が大きいので、これを普通の負荷容量100pF程度のフォノイコライザーでつないでいると、設計よりもハイ上がりの音を聴いていることになってしまう。これについてはまた別の解決策を考える必要がありそうだ。