Sound & Silence

音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Marantz Model 3250  - ビンテージアンプの魅力に触れる

もう5年以上使っているプリメインアンプのATOLL IN100seは端正なサウンドでに大きな不満があるわけではないが、古いSHUREのカートリッジでレコードを聴く楽しみを覚えてしまうと、60年代、70年代のロックを聴くには当時のアンプで聴くとどうなるのか、興味が募るばかり。当時は中学・高校生で自分では高価なアンプを買うことはできなかったのでその憧憬も残っている。

それでビンテージオーディオや中古を扱っているサイトをチェックすると、60年代、70年代のMarantzやMcIntoshなどのセパレートアンプのビンテージは数十万円以上で、その価格だと手を出しづらい。そうしていたらハイファイ堂というショップで 1977年製造のMarantz Model 3250というトランジスタのプリアンプを見つけた。1977年当時の定価は85,000円、不良トランジスタコンデンサなどを交換してのリストア済みで55,000円。これなら価格的にも悪くない。当面はこのプリアンプの出力を既存のATOLL IN100seのバイパス入力へ接続してパワーアンプのみとして組み合わせて使えばいい。それで購入することに。

古さを感じさせない70年代デザイン

サイトで購入手続きをすると翌日には到着。丁寧に梱包されていた。箱から出してその実機を見ると、まずそのデザインに感嘆する。当時のオーディオアンプにはトーンコントロールやテープ入力、フィルターなど多くの機能があり、そのダイヤルやスイッチがある。このアンプのデザイナーはそれらの機能を見事にシンメトリーなデザインにまとめている。それは当時のMarantzのデザインランゲージとでも言えるもので、機能とデザイン、そして回路設計が見事に統合されている。現代のセレクターとボリュームしかない、ミニマリズムなアンプのデザインとはまったく違う世界を作り上げている。

同時期のデザインでは、もう一方のアメリカンオーディオの雄であるMcIntoshが、威圧的な黒い筐体にブルーのメーターでそのパワフルなサウンドを象徴していたし、ヨーロッパではB&OやBraunが未来的で洗練された独自のデザインで発展していく。60年代後半から70年代は、そうしたコンシューマ製品におけるインダストリアルデザインの重要性が認識されれはじめた時代でもある。

魅力的な艶やかなサウンド

このアンプを実際につないでみての第一印象は、AppleMusicのような平坦な印象がある音源でも音楽に艶っぽさがのって、いきなり魅力的な響きになることに驚く。有機的というか人間が演奏している生っぽさがダイレクトに伝わってくる。純粋なハイファイ指向というより、いかに音楽を魅力的に聴かせるかにアンプで音創りがされているようだ。「カリフォルニアサウンド」というか、基本的に明るく抜けの良いサウンドキャラクターで力感もあるが、重い方向のサウンドではない。古いアンプだから音が甘いということは決してなく、解像度も充分に高い。楽器やアンサンブルの細部も丁寧に描き出す。

このアンプの大きな特長は右側にある「contour(輪郭の意)」というダイアル。低音と高音を付加する一種のラウドネスなのだが、ボリュームとは独立して10段階で付加量を調整できる。再生音にさらにアクセントを加える音の調味料的な存在で、再生ソースや好みで値を調整すると小音量でも量感のあるサウンドが得られるし、古いやや貧弱な録音ソースであっても再生音を改善でき、この「contour(輪郭の意)」だけでも、このアンプを購入した価値があると思えてくる。

フォノも2系統搭載で、一つはMM/MC対応のFETヘッドアンプも内蔵しており、このフォノイコライザーも当時のSHUREのカートリッジなどには最適で悪くない。音のニュアンスを変えたいときは別途外部フォノイコライザーを用意してもいいだろう。 デザイン的なアクセントにもなっているスライダー式のハイ、ミッド、ロウもトーンコントロールも使いやすい。意外に便利なのが、ステレオ、モノの切り替えスイッチ。古い擬似スレテオのレコードの不自然さが気になるときはL+Rのモノにして聴いている。レコードや曲によって、いろんなつまみを操作して音を変えるのも面白い。

「原音原理主義」から離れて

80年代からだと思うが、オーディオにおける「原音原理主義」の台頭とでもいうのか、音に影響を与える余分なものを一切廃して、信号の純粋性に固執するようになってしまった。どれだけ信号を正確に伝えるかに重きが置かれ、聴き手がトーンコントロールで音質を変えたり、小音量の時にラウドネスで心地良く聴いたりすることは、そうした純粋主義に反する行為となってしまった。そこで、様々なアクセサリやケーブルが「チューニングツール」として市場に登場して大きなビジネスを形成してきた。別にそれを否定するのではないが、アクセサリだけでスピーカーや部屋の状況を調整するのは難しい。それに自分の好みの音は一つではなく、アルバムやアーティストによって変えて聴きたくなることもある。

僕にとってこうした古いビンテージアンプを購入したのは単にノスタルジアではなく、音楽再生に主体的にコミットしようという意味もある。ここのところ「アナログの復権」と言われているが、聴き手がもっと自由にインタラクティブに再生音に関わっていくという、そうしたルネッサンスなのではないだろうか。

参考リンク https://audio-heritage.jp/MARANTZ/amp/model3250.html


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