Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

ビンテージスピーカーのエッジの硬化対策 - 低音が出ない原因はエッジの硬化

今メインで使っているのは、1970年代後半にトリオ(現KENWOOD)から発売されたJL-3700という20センチウーファーと5センチツイーターの組み合わせのフロアスタンド付きのスピーカー。実はこれは僕のものではなく、妻が学生時代に中古で購入したもの。僕はと言えば、Celesion や DALIのスピーカーを持っていたが、ある時、聴き比べてみると、価格的には 1/4以下のこのトリオのスピーカーの方が圧倒的に鳴りっぷりがよく、特に70年代ロックを聴けばその違いは明確で、それ以来メインスピーカーの座を占めてきた。やはりポリプロピレンなどの化学素材より、紙(コーン)のスピーカーがいいのか。特性と音楽性はまた別の話なのか。ある人に言わせると、古いコーンスピーカーはいろんな音楽を再生してきているのでコーンが音に馴染んでいるからいい音がする、ということらしい。

エッジの経年劣化でウーファーが動いていない

それで15年ほど前にこのスピーカーをスピーカーメンテ専門業者にオーバホールに出し、合わせて内部の配線材をモンスターケーブルに変えたり、ケーブル端子を太いケーブルがはいるタイプに交換した。その後も製造から40年以上経過したこのトリオ JL-3700をずっと使っていたのだが、最近音が痩せたような印象を持っていた。さすがに経年変化でダメになってきているのかと思い、残念だけど次のスピーカーも検討しないとと思い始めたころに、片側だけ音が小さくなったりする障害がで始めた。

どんな状態になっているのかとネットを外してユニットを確認してみると…。ウーファーのエッジは一見すると亀裂もなく問題ないように見えるが、指で軽く押してみるとほとんどコーンが動かないことが判明。エッジが硬化してしまっていて、コーンが前後に自由に動けない状態になってしまっている。これでは低音が出るはずがない。この時代のエッジは薬品が塗布された布がエッジとして使われているので、それが硬化してしまったようだ。

ブレーキフルードが軟化材になる

このままでは使えないのでスピーカーユニットを修理に出すか、何らかの対策はないかとGoogleで「スピーカーエッジ 硬化」検索すると、同じように症状の人は多いらしく、特にYAMAHAのNS-1000シリーズや同時期のダイヤトーンのスピーカーのユーザーがエッジが硬化して固まってしまったときの軟化剤として、クルマやバイクのブレーキフルードを塗布しているブログ記事が多くあり、またYouTubeのビデオではウーファーのエッジの凹みにドボドボとブレーキ液を入れているものもある。

それなら試してみようかとAmazonブレーキフルードを探すと、コメント欄にやはりスピーカーエッジの柔軟剤として使用したとある。500円程度だし、塗布に使う水彩画の筆と合わせて購入。さて、届いてから、ケーブルを外してスピーカーを水平にし、筆でエッジの凹みにそっと重ね塗りをしてみる。1時間ほど放置して、余分な液体を軽くティッシュで拭いてからスピーカーを立てて再度接続する。

低音の響きが甦る

それで再生を始めると低音の響きが甦っている。ベースラインやバスドラの力強いキックが心地よい。確かに昔はこんなサウンドだった。20cmウーファーといってもフルレンジのような特性なので、回復したのは低音だけでなく中域から高域も大幅に改善されている。やはりコーンが動いていなかった(どんどんアンプからパワーができても動けない)状態だったようだ。もっと早くに軟化剤で対応すればよかったと後悔。まあ、長くオーディオをやっていると、いろんなことがあるものだ。今回の対策でまたしばらくはこのスピーカーと付き合って行けそうで、最初不安だったがハッピーエンドとなってよかった。


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