Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

レコードばかり聴いていて、コンサートに行くことに興味を無くしつつあること

ここ数年、あまりコンサートに出かけていない。最後に出かけたのは、2015年9月の恵比寿リキッドルームでのSólstafir / Anathemaのライブだった。きっかけはその前年にアイスランドのベテラングループであるSólstafirの米国でのスタジライブをインターネットで見たことだった。メンバー全員が革ジャン姿のヘルスエンジェルスのような風貌でスワンプというか米国南部ロック風の熱度の高い古典的なハードロックだが、アイスランド語で哀愁漂うメロディで歌われる音楽には妙な説得力ある。 もう一方のAnathemaは英国ゴシックメタルバンドとしてスタートしたが、今ではネオプログレッシブロックグループとして確固たるポジションにいる。もちろん初めての来日でショーケース的な意味合いもあったが、これも全力の演奏で聴きごたえがあった。

クラブやライブハウスなのに椅子ばかりが並びはじめる

このときの恵比寿リキッドルームもそうだったが、せっかくオープンなクラブやライブハウスの空間なのにステージ前にパイプ椅子席が並べられることが増えている。ファンやオーディエンスの高齢化が主な原因なのだろうが、せっかくの雰囲気がだいなし。2時間ぐらいのライブでどうして、スタンディング優先にできないのだろうか? 座って見たいなら、ステージ後方の既存の椅子席を利用すればいいのであって、ステージ前に椅子を並べることはないだろう。 さらに最近では、2回ステージ入れ替えで食事付きという、まるでラグジュアリーディナーショーのようなライブクラブもあり、そんなところでロックアーティストのライブを見るのは僕には理解できない。

2013年だったか、初台の「ドアーズ」というライブハウスであったAnekodotenのライブのときはステージ前のフロアはオールスタンディングで2時間半を超えるライブで最高だった。僕はステージ右手の前から少しの場所にいたが、メンバーの演奏を間近に見ることができ、プログレバンドであっても、スタンディングでガンガンにのれて、ロックはスタンディングで見るべきだと再認識させられた。

持ち込みPAができないホールの音の残念な音響

ライブにおいて音響は重要。サウンドシステムの良し悪しがコンサート体験全体に大きな影響を与える。なので70年代代のトップ ロックバンドは数十トンもの機材をツアーで持ち運んでいた。とにかくPA・音響は重要なのに、例えば、有楽町の国際フォーラム ホールAでは持ち込みPAができない。ロックコンサートだと備え付けのステージ脇のスピーカーの音が常時歪み気味で、あまりの音響の悪さにコンサートが楽しめない。なので、国際フォーラム ホールAだと行かない。

もういずれも取り壊しになってしまったが、新宿厚生年金会館や渋谷公会堂、日本青年館などは、持ち込みPAができたし、ボリュームも大きかったので、そのバンドのサウンドを思い切り楽しめた。最近プログレ系がよく利用する渋谷のオーチャードホールは、PAは持ち込みだが、会場の制限があるのか音が小さいのが残念。

アルバム完全再現ライブというレトロスペクティブ

往年のロックグループのコンサートの最近のトレンドは過去のヒットアルバムの「完全再現ライブ」。それが The Whoの「トミー」や Pink Floydの「狂気」のようにアルバムを通して演奏されることが前提の作品ならともかく、ただ過去の人気のピーク時のアルバムを「そのまんま演奏」することに、どんな意味があるのだろうか? 年老いて保守的になったファンへのサービスなのだろうか? それなら僕は家で大きな音でレコードを聴いていたほうがいい。

それに、無理に若い時と同じように演奏することに意味があるとは思えない。当時のメンバーも一人か二人になってしまい、劣化したトリビュートバンドのようになっていないか。いっそのこと今の時代に合うように大胆にアレンジをしてもいいと思うのだが、それは老いたファンが許さないのか、昔のままに演ろうとするその姿は時には悲劇を通り越して喜劇的ですらある。

ライブで体験したいのはアーティストの「今」

僕がライブで体験したいのは、同窓会的な「懐かしの歌謡ショー」ではなくて、そのアーティストの「今」。昔ほどギターやキーボードが弾けくなっていても気にしない。それよりもロックがその時代の生き方に共感したり社会を告発し続けるものであれば、それを今の彼等の音楽で聴きたい。

新曲があるならどんどん聴きたいし、古いレパートリーも今できる演奏に合わせてアレンジを自由に変えて演奏すればいい。若いサポートメンバーがいるなら、彼等にもっとインボルブさせて、楽曲をダイナミズムに変化させればいい。音楽は形式やスタイルではない、もっとスポンティニアスなものであるはずだし、僕がライブで聴きたいのは、まさにそうした「ライブ」なものだ。


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