Thinking is The Form

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Art Ensemble of Chicago / People in Sorrow - 静かな怒りを秘めた音楽

シカゴを拠点とする Art Ensemble of Chicago(アート アンサンブル オブ シカゴ) は、1960年代にロスコー・ミッチェル、レスター・ボウイなどを中心に結成されたフリージャズグループ。ただ、このアート アンサンブル オブ シカゴを他のフリージャズユニットから際立たせているのは、そのその音楽的な柔軟性と高度な音楽性にある。

僕が初めて彼らの音楽に接したのは、フランス人アーティスト、シンガーのブリジット・フォンテーヌの「ラジオのように(Comme a la radio)」というアルバムでだった。何か懐かしいサーカスの伴奏音楽のようでもあり、ジャズのようでもあり、民族音楽のようでもあり、前衛的でありながらヒューマニティーに溢れるその演奏に魅了された。後で、その演奏が当時欧州に滞在していたアート アンサンブル オブ シカゴによるものだと知ることになる。

彼等は数名で、サックス、トランペット、ピアノ、ゴングやベルを含む多数のパーカッションなどあらゆる楽器を演奏する。ツアーではステージに500種類以上の楽器が並べられることもあるとか。そして顔にはアフリカ式のフェースペインティングが施し、アフロの衣装装束を着て演奏が進めれていく。

People in Sorrow - 静かなるフリージャズ

この「People in Sorrow(嘆きの人々)」は、前記のように欧州に滞在中の1969年に録音されてリリースされたアルバム。AB面で1曲。フリージャズというと、楽器の雄叫びのような喧騒で混沌した音世界という一般的なイメージがあるかもしれないが、この「People in Sorrow」での演奏はその対極にあるもの。最初は祈りのようでもあり、静かに見つめる眼差しのように非常に静かな演奏で始まる。見たことにないアフリカの原風景なのか、悲しみを背負った人々の嘆きの歌なのか、それともそられが全て一緒になったものなのか、静かな怒りを秘めたような深い音楽が演奏されていく。

その音楽は、川を流れていく旅のようでもあり、音楽の風景は少しずつ姿を変えながら進んでいき、最後は警報のブザーのような音が背景で鳴り続けている中、演奏はクライマックスを迎えいてく。

このアルバムの美しさは、アート アンサンブル オブ シカゴの数多いアルバムの中でも特別のもののように聴く度に感じる。また、彼等のアルバムが後にECMレーベルからリリースされることがよくわかる気がする。