Thinking is The Form

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

実用オーディオ学 / 岡野邦彦 著 - オカルトオーディオからの脱脚(なるか?)

アマチュアの自費出版のような雰囲気の本だが、出版元は学術系の出版社で著者は工学博士で大学の教授を務めた人物。自身もかなりのオーディオマニア。本書の冒頭に載っている彼のシステム構成を見ればかなりのハイエンドマニアであることがわかる。

本書のサブタイトルは「その常識は本当か、これだけは知っておきたい」。著者は別段、オカルト的なオーディオを否定するものでない。ただ、無駄なお金の使い方をしないためにも、論理に沿った「科学の作法」でアプローチしましょう、というもの。

取り上げているテーマは

  • アースと電源配線
  • CDとハイレゾ
  • CDのリッピング
  • SACDの音質
  • 室内音響
  • 接続ケーブル

といった、オーディオファンの必須科目ばかり。いずれもテーマも当たり前に、論理的、具体的に説明されていて、非常に参考になるし、これまでの疑問も溶ける。

例えば「アース」は、もしマンションのようにアースのノイズの悪影響があるときはつなぐ必要なない、むしろ大事なのはアースループを作らないことにある。

僕のようにビンテージのオーディオ製品を使っているときは、コンセントのホットとコールドの識別は重要で、テスターを使っての確認方法も丁寧に説明されている。実際に測定してみてコンセントの向きで電圧が大きく変わるし、最適な方にすると音質も向上する。

ただ、2000年代以降に生産された新しいオーディオ機器だと、ホットとコールドでの差はほとんどない。そこにあんまり神経質になる必要はなさそう。実際に計測してもそうだった。

CDやデジタルの関する記述で興味を引いたのは、人は正確な波形よりもやや歪んだ波形の方が、好ましい高音質だと感じるということ。あるいは、20KHz以上の信号は人は聞こえないのだが、高い周波数の倍音を多く含む音を人はよい音と感じやすいらしい。

それにどれだけ高価なオーディオ製品に凝ってみても、やはり最後は部屋の制約を受けるので、部屋の特性をどう考えるかが重要であること。確かにスピーカーとの距離を変えながら聴いてみると、音のバランスが違って聴こえる。

地味な装丁の本だが、オーディオマニアなら一度読んでおきたい。こういう正しい客観的な知識や正しく理解する態度というのは、どの分野でも大切なことだから。