以前、山本音響工芸のアフリカ黒檀のヘッドシェルは紹介したが、今度はSHURE V15 Type3用に同社のカーボン製のヘッドシェルを導入してみた。
きっかけは、黒檀のヘッドシェルにつけたV15 Type4は、美音でバランス良く鳴っているのに比べると、アームの標準アルミシェルにつけたV15 Type3の音は明瞭さに欠けるのが気になってしまったこと。V15 Type3ならもっと鳴りが良くてもいいはず。
ヘッドシェルとしてのカーボン素材は、加工が可能になった比較的最近の製品で、軽くて硬い素材で音響特性としては色付けが少ない特徴がある。山本音響工芸はカーボンで5mmと厚みもある。今回も前回と同じように太い6Nの高品質リード線が付属しているモデルを発注した。
製品が届いて、早速、V15 Type3への取り付けを開始。リード線もリードペンチで取り付けると確実で簡単。ピンセットだと、力が入りずらく線の取り回しも難しいので、リードペンチ(数千円で購入できる)を使用することをオススメしたい。リードペンチがあるだけで、カートリッジの取り付け取り外しが簡単になる。
リード線もつなぎ、いざヘッドシェルに固定しようとしたところで問題が発覚。V15 Type3はボディが高い上に、ネジを一番底から固定するようになっているので、付属のボルトでは長さが足りない。20mm以上の長さのボルトが必要。これも同社から長短数種類のボルトがセットなったパッケージが出ていたので追加で購入。まあ、今後もカートリッジを付け替えることもあるだろうから。
それでようやくカートリッジの取り付けも完了。ヘッドシェルの水平調整はシェルの横に小さなレンチを入れて調整する。ヘッドシェルの上に小さな水準器を置いて、テスト用のレコードに針を下ろして微調整する。この調整作業が意外と音質に影響するので丁寧にやりたい。
では、実際にレコードをかけて聴いてみよう。 一聴してこれまでのV15 Type3とは全く違う表現になっている。気になっていた音のこもった感じは一掃されて、1970年代製とは思えないフレッシュなサウンド。確かにこれまでこのカートリッジでは聴こえてこなかった細かい音が出てくる。レンジも広く、バスドラのキックやシンバルがリアル。スネアはハイハットの細かいプレイもよく再生される。ベースは地を這うような低音だし、ギターのディストーションの感じやエフェクターの具合もこんな音だったことが伝わってくる。
ただ、出てくる音は非常にドライ。レコードに刻まれた音が全部出てくるようなサウンドだが、すごくドライに情け容赦なく、ただひたすら「あるがままに全部を出す」という印象。なのでレコードの音質がそのまま反映される。同社のアフリカ黒檀のシェルのように「素材の響で収束させていく」ことは一切ないので、しっとりした表現や雰囲気はゼロ。
なので、ジャニスのようなパワフルなボーカルはいいのだが、メロウな女性ボーカルや室内楽を雰囲気良く聴きたいといった用途には全く向かない。とにかくドライでダイレクトな音なので、好みは別れるところだろう。僕には、V15 Type3とカーボンヘッドシェルの組み合わせで聴くロックは格別。ロックがロックらしくダイナミックに鳴り響く。自分がこんなにドライなサウンドが好きだったことは新たな発見だった。
山本音響工芸 カーボンヘッドシェル極太6N銅線リード線直付 HS-4S HS-4S
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