Thinking is The Form

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Harbie Mann / Stone Flute - アンビエント ジャズとしての先駆的作品

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ハービー・マンは米国出身のジャズフルート奏者で、1960年代から70年代にかけてフュージョンの先駆けというか、ブラジル音楽などのワールドミュージックをマシュアップしてジャズに取り込み、ジャズからポップミュージック、ダンスミュージックの領域で成功したミュージシャン。代表作はグルーヴ感で今でも人気の高い1968年にリリースされた「Memphis Undergroud」だろうか。

商業的に大成功したことで、シリアスなジャズファンからはムードジャズ的な扱いを受けることもあったが、色んな音楽領域を自分の音楽に旺盛に取り込むパワーは変わることなく、レゲエにも早い時期に取り組んだり、日本の雅楽チャレンジしてのアルバムも残している。

彼のもう一つの特徴は、新しいミュージシャンを積極的にグループやセッションに加えていて、「Memphis Undergroud」では、前衛ジャズギタリストとして後にビズ・ラルウェルのユニットに参加するソニー・シャーロックやWeather Reportの創設メンバーとなるチェコ出身の若手ベーシストのミロスラフ・ヴィトスも参加しているのが目を引く。

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この「Stone Fulute(石笛)」という1969年にリリースされたアルバムは、彼自身のレーベル「Embryo(胎児の意)」からの第1作でもある。レーベルの立ち上げともなると得意のグルーブ感たっぷりのヒットを狙ったアルバムをリリースしそうなものだが、Stone Fluteはそれとは全く逆方向のアルバムで、静かでパーソナルな作品になっている。ブライアン・イーノのオブスキュアレーベルのアルバムのようと言えば感じが伝わるだろうだろうか。

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ただ、それが単なるイージーリスニングになってしまわないのは、ソニー・シャーロックやミロスラフ・ヴィトスの演奏に負うところが大きい。音楽の背景で空間を作り出している弦楽四重奏団の存在も全体に一定の緊張感をもたらしている。

これをジャズアルバムとしてどう評価するかは別として、今、新たに1枚のアルバムとして聴いてみると、先駆的なアンビエント作品といった趣がある。深夜に聴いてもいいし、夜明け過ぎの静かな早朝にターンテーブルにのせるのもいい、そんなアルバムだ。