人は歳を取れば順番に去っていくのは避けることはできない。
ジンジャー・ベイカーがいなければ、Creamのあの微妙なバランスはなかっただろう。彼のドラムがなければ『White Room』の出だしがあれだけ印象深いものになっただろうか? 『Sunshine of your love』が単調にならずに印象深い曲になっただろうか? それはジンジャー・ベーカーのドラムがあったからこそ、魅力的な作品になったのだと思う。
ジンジャー・ベーカーは、先日書いたトニー・ウィリアムスと並んで僕にとっては重要なドラマー。ジンジャー・ベーカーのドラムプレイの魅力は、なんといっても白人とは思えないプリミティブなそのサウンド。ヘッド(頭)ではなく、ボディ(身体)に響く高揚感があり、黒っぽいというよりも、もっとアフリカンな雰囲気を持っている。すごく「ポジティブ」なプレイとも言えそう。
例えば、ビリー・コブハムは非常に手数の多い極めてテクニカルなプレイで、彼なしではジョン・マフラフリンのMahavishunu Orchestraは成り立たなかっただろう。彼のグルーブ感はジンジャー・ベイカーと比べると非常に洗練されていることは、後の彼のリーダーアルバムからもわかる。 一方、ジンジャー・ベーカーのグルーヴは、もっと土着でヒッピーっぽい。Creamでもそうだったが、「Sea of Joy」をはじめとするBlind Faithのアルバムの楽曲を彼のドラムがより躍動感があるものにしている。その自由なヒッピーぽさの賜物だろうか、80年代にはイギリスのサイケデリックスペースロックバンドのHawkwindのアルバムに参加してツアーもしている(このアルバムも良かった)。
そんなジンジャー・ベイカーが自分の名前を冠した初のリーダーグループとなったのが、このGinger Baker’s Air Force。デビューアルバムはライブ2枚組の豪華セット。バンドメイトだったスティービー・ウインウッドもキーボードとボーカルで参加。アフリカ出身のミュージシャンや男女混成ボーカルなど、彼が目指したリズムックでポジティブ、ダイナミックがサウンドが堪能できる。ライブの会場はロイヤルアルバートホールではないかと思うが、オーディエンスのリアクションもよく、本当に素晴らしい演奏が聴ける。もちろんドラムソロもたっぷり入っているが、これがいいアクセントになっていて、彼のドラムソロは聴き飽きることがない。そこにはもう、元Creamというレッテルは要らない。
Blind Faithのアルバムにも収められていた「Do What You Like」がここでは何倍もパワフルに演奏される。このアルバムを象徴する1曲。タイトルそのままに「好きな事をやるんだ」と。それは彼の生き方そのものだっただろうし、彼が残した大事なメッセージのように思える。