Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Marantz Model 7 コントロールアンプ (1)- その音はカルフォルニアの青い空

Marantz Model 7とは

Marantz Model 7は、米国Marantzが1958年の暮れにリリースしたコントロールアンプで、当時の技術的、音楽的、デザイン的なブレークスルーとなった製品。設計はマランツ創設者のSaul Marantz氏の手によるもの。チャンネルあたり3本の真空管12AX7が合計6本使われている。

丁度ステレオレコードが普及を始めた時期でもあり、高音質で画期的なコントールアンプとして人気を集め12年間に渡り13万台が生産されたとも言われている。当時の価格は$385(約40,000円)で、今の価値だと$5,000 (約510,000円)ほどでではないかと思う。また、1966年には同じ回路設計ながら真空管からトランジスタに変更した廉価版のModel 7Tというモデルもリリースされてる。

Model 7は、ハイファイオーディオの新しいステージを開拓したコントールアンプとして、その音質への評価は現在も高く、1958年という発売時期でありながら販売台数が多かったことから現存している台数も少ないない。それに早くから回路図が公開されていたので、メンテナンスがしやすいこともあったのだろう。とはいえ、そのサウンドは一部で神話化している感もある。

それもあってか、マランツは1995年に米国の工場で限りなく当時の製品に近づけたレプリカモデルを限定製造している。写真で見た感じではそっくりで、入手できないコンデンサなどのパーツはオリジナルの特性に近いもの新たに製造するという年の入れよう。安全規格の変化なので若干の変更はあるものの気合の入ったレプリカだったようだ。その製品の価格は360,000円。

なぜModel 7を購入しようと思ったのか

このMarantz Model 7に興味を持つきっかけになったのは、以前記事を書いたが、やはりこれもビンテージの1977年製のModel 3250というトランジスタのプリアンプを手に入れたこと。これがいかにも西海岸らしい明るく抜けがよく、音楽性も豊かなアンプで音楽を聴く楽しみを広げてくれた。セパレートアンプのエントリーモデルだったModel 3250でこれだけ素晴らしいなら、Model 7ならどんな音が聴けるのかと気になっていた。

それに、たまに見るオーディオ雑誌の読者訪問記事やコラムでもこのMode 7を保有している人がいて、王道のクラシックやジャズファンだけでなく、60年代、70年代ロックやフリージャズのリスナーが好んで使っていることも気になった。特にその内蔵フォノイコライザの音質の良さから他のプリアンプに変えないという声があるもの、アナログを多く聴く身としては惹かれる。

そして、なんのかのと理由とつけても、このシンメトリックなデザインで落ち着いたたたずまいの古いアンプにある種のロマンチックな憧憬があるということ。

購入時の検討ポイント

それで、実際に購入してみようか考えると、どこから買うかが問題になる。なにしろ製造から約60年を経ているので、100%オリジナルのままというのはほぼ不可能で、何らかのメンテナンスがされていることは避けられない。

それは60年代のビンテージのクルマを探すのに似ているかもしれない。高級スーツに身を包んだ営業マンが説明してくれるピカピカにフルレストアされたまるで新車のような状態ものがいいのか、作業服のつなぎを来たエンジニアが説明してくる当時のパーツを活かしつつ性能を維持できるようにメンテナンスされているものがいいか、という選択。僕の好みは手を入れたエンジニア自らいろいろ説明してくれる方だな。

サイトを探してみると、完全にフルレストアされ、まるで当時の新品がタイムマシンで現代に運ばれてきたかのようなModel 7を販売している専門店がある。中でもシリアル番号が若いものが良いとされ300万円を超えるような価格で販売されている。パーツも当時の高価なデッドストックものに交換されおり、後期のシリアルでも120万円以上の価格というラグジュアリーな一品。

オークションサイトでの動作品の落札価格は40万から60万円代が中心。ただコンディションの詳細が不明なのは難点。ハードオフでもあるようで、「専門業者で調整」とはあるものの保証があるわけでなく、なんとなく不安。結局、以前 Model 3250を購入し、その後の修理の対応も良かった「ハイファイ堂」での購入を検討。そして数ヶ月が過ぎて、ハイファイ堂のサイトに2種類のオリジナルModel 7の中古が掲載された。

1台は昨年に前オーナーが業者でフルメンテナンス済みの美品。掲載されている内部写真を見ると内部配線も整然と整理されている。それに何と言ってもオリジナルと同じテレフンケンの真空管が付いている(この真空管は今では1本2万円の価値があるようで6本だと12万円 にもなる!)。

もう1台は、オリジナルの木製ケースに納められたいかにもビンテージ感溢れる雰囲気のもので、内部写真を見ると、ハンダもゴツい迫力のある手配線の当時の姿を残しており、コンデンサ類も当時のパーツが多く残っていそう。交換が必要なパーツについてはハイファイ堂で交換済みとのこと。真空管は印刷のない(消えてしまったのか?)ノンブランドものに見える。ビンテージ品ながら2年保証が付いているのは安心。購入してすぐに壊れてしまって、また修理に散財するのは避けたい。結局、このオリジナルの木製ケースが付属し、内部は当時のごつごつした手配線のビンテージ感溢れる一台を選択。価格は448,000円。自分がこれまで購入したオーディオ製品の中でも最高価格。ちょっとした冒険。

そして、Marantz Model 7がやってきた

そして、「衝撃厳禁」と書かれた梱包でMarantz Model 7はやってきた。

エアクッションで何重にも包まれ、木製ケースと本体の間にも緩衝剤で段ボールが入っているので外すようにとのメモがある。

取り出して、クッション材を外すとその姿を表す。60年という年数の割に木製ケースも、本体正面のパネルも思ったよりきれいでコンディションがいい。レタリングに欠けはないしパネルにキズもなく、とても大切に使われていたことが伝わってくる。

セレクターやスイッチは今の製品のように軽くカチカチと切り替わるのでなく、つまみを動かすと「ガチャッ」と重たい音がするのが時代を感じさせる。

背面のRCAジャックは当時のままのようで、一部黒くなってきるが実用上は問題なさそう。なにしろ古い製品なので無理にコネクタを洗浄するのは止めて、セーム革で表面の汚れだけを拭うようにした。

この製品のレイアウトでユニークなのは、6本の真空管が横向で外に向けてにセットされていること、コントロールアンプなのでそれほど発熱することはないが、1本1本カバーが付属している。 電源ケーブルは直出し。猫が電源ケーブルを噛んでします恐れがあるので、スパイラルチューブを巻いて保護しておく。

次はテスターを持ち出して、アンプだけをコンセントに繋いで電源を入れたら、テスターの1本を手で持ち、もう一本をアンプのアースに当ててコンセントの向きで電圧の低い方を選択する。こうしたビンテージアンプでは、結構な電圧差がある。

オーディオラックにしているチェストの上に置いたたたずまいは。その姿だけで音が聴こえてきそうだ。 テストでCDを再生してみて出てきたサウンドは想像以上のもので、いわゆるビンテージ感のある音ではなく、切れ込みのいい澄んだ中高域と厚みがあるが重くはない低域の絶妙なバランス。暗いトーンではなく、「カルフォルニアの青い空」といった趣き。

そのサウンドについては、この続きで…。

参考情報

shigeohonda.hatenablog.com


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