Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

アコースティックリバイブ SIP-8Q - たかがショートピン、されどショートピン

長くオーディオをやっているが、これまであまりショートピンについて考えたことは無かった。アンプの空きジャックがホコリで汚れたり、錆びたりを防止するためのプラチック製のカバーを付けていただけだった。

アンプの空きRCAジャックをそのままにしていると、外部からのノイズの干渉を受け易くなって音質に影響する云々、という話を読んだり聞いたりしたことはあったけど、正直、そこまで細いことにこだわってどんな意味があるんだろうかも感じていた。

ショートピンの有無が音質に影響を与える

それが、重要なことかもと思うきっかけになったは、LuxmanのフォノイコライザのE-250。このモデルは2系統のフォノ入力があるのだが、その1方にはショートピンが挿さった状態で出荷されている。まあ、フォノ入力のように感度の高いの入力箇所のノイズを防止しているのだろうと。

そして次がMarantz #7。中古購入した本体背面のテープヘッドの入力(テープレコーダーのヘッド信号をダイレクトに入れるものだったようだ)とマイク入力に古いショートピンが挿さっていた。 このショートピンのプラスチック部分が大きくて、フォノケーブルの入力プラグと干渉するので、何気にショートピンを外してしまった。

それでレコードを聴いてみると、なんだか音が良くない。#7特有の空間的なサウンドスケープがホコリっぽくてガサついたように感じる。カートリッジの針先をチェッしても問題なし。なんでだろう? と疑問に思ってセレクタを動かしてみるとテープヘッドのところでノイズが出る。『ひょっとしてショートピンを外してしまったから?』、電源を切ってショートピンを元の位置に差し戻して再度電源をON。なるほど、ノイズは止まり、音質も元にもどった。

音が良くなるショートピンがある?

なるほど。ショートピンの有無で音が変わるなら、いったいどんなショートピンがオーディオ向けとして存在するのか調べてみた。一番手頃なのは、オヤイデ電気のシンプルなショートピンで1個あたり66円。自分のシステムでショートピンの効果の有無を確認するにはいいかもしれない。

次にあったのが、各種アクセサリを作っているアコースティックリバイブのショートピン。8個セットで販売されていて、1個あたり1,600円ほど。アルミ合金に真鍮などの素材を組み合わせていて、有害な電波信号を遮断するだけでなく、振動を熱エネルギーに変換して放出してくれるとか。

ハイエンドになると、CHORDが開発した GrandARAYという製品があり、機器内の高周波ノイズを吸収して熱エネルギーに変換して放出するというもの。内部構造はかなり凝った仕組みで価格は1つ80,000円。これは機器に一つあればいいようだ。

アコースティックリバイブのSIP-8Qを導入

この中から、ヨドバシ.comでも扱いがあったので、アコースティックリバイブのSIP-8Qを購入。''

実際のものを手に取ってみると、しっかりした作りで安心感がある。古いプラスチックのカバーのショートピンと比べると質感を含め、存在感が違う。

Marantz #7の電源を落として、ショートピンを付け替えてみる。

注意:ショートピンの取り付け、取り外しは必ず電源を切って行うこと。ショートピンを差すことができるのは「入力」端子だけであることに注意。間違ってプリアウトやテープアウトなどの出力端子にショートピンを付けると回路がショートして故障したり、発火する危険があるので絶対に挿さないように。分からない時は専門家か販売店に相談ください。

まず4本、ショートピンだけ挿した状態で聴いてみる。5分、10分と聴いていると、音の輪郭の滲みのようなものが取れて、一つ一つの音が非常に鮮明になっていることがわかる。これは音の輪郭が強調されたのではなく、自然な感じに鮮明になっており、例えば、ギータの弦にピックが当たるタイミングでの音とか、歌っている声の息継ぎの瞬間の声の変化がわかり、リアリティが増してくる。聴き慣れたレコードでも、聴き込んでしまう。

このSIP-8Qには、シートに貼り付けれた薄手の制振シートと天然水晶の2種類の制振素材が付属している。まず、薄い制振シートをショートピンの上に貼ってみる。音が整理された感じになり重心が下がってくる。聴きやすくはあるのだが、音の勢いというかグルーブ感がやや後退するような印象があり、僕の好みは違う方向のようだ。

次に天然水晶を貼ってみる。こちらの方は、ハイエンドがすっと伸びていき響きが美しい、音に遅延がないというか、音がきれいに揃っていて、マスクされて消えてしまう音がない。なので、ドラムやパーカッションといった鳴り物に顕著だが、細かい音のニュアンスが聴こえてくる。ボーカルの歌詞も聞き取りやすくなり、伸びやかな音でこちらの方が僕の聴き方にあっている。

いろいろ組み合わせを試してみて、Marantz #7は6本このショートピンを挿して、4箇所に天然水晶を加えることにした。効果は大きく、もともと Marantz #7はSN比は高いが、更に背景が静かになり、音楽に没入できる。音のスピード感が上がったせいと思うが、古いレコードのスクラッチノイズも気にならなくなった。

DAコンバーターでも有効

プリアンプでこれだけ変わるなら、DAコンバーターだとどうなるか興味が湧いて、ATOLL DAC200の空いているRCAデジタル入力にも1本ショートピンを挿してみた。結果は同じ傾向で、音の鮮度が上がり、高い方も低い方も伸びやかになった。MacminiのUSB経由でApple Musicのストリーミングを再生しても、詰まったところのない、レンジ感も自然な音質。CDはダイナミックで、アナログっぽい表現も加わってきた。何を聴いてもいい雰囲気で、ソースやジャンルを選ばない。

正直、ショートピンを加えただけとは思えないほど、全体の再生音の品位が良くなったことには驚く。スマートフォン、WiFiやBluetoothなどのデバイスの電波が飛び交う時代に、ただがショートピン、と侮ってはいけなかったと反省。オーディオはちょっとしたアクセサリが重要だったりすることを再認識した。

注意:DAコンバーターのデジタル入力をショートすると音が出なくなる機種もあるので、注意ください。必ずメーカーや販売店に確認ください。ショートピンの使用の結果に著者は責任は負いません。

参考サイト:

RCA端子ショートピンプラグ - オーディオ / 映像 :オヤイデ電気オンラインショップ

ショートピン ショートプラグ 防振プラグ | Acoustic Revive

グラウンドアレイ | アンダンテラルゴ


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