Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Nakamichi CD-4 - 1990年代のリマスタリングを堪能する

年末年始の整理ではないが、もう何年もずっと使っていなかった ナカミチのCDプレーヤー 『CD−4』を物置きなってるロフトから下ろしてきた。もしまだ動作するなら廉価でも売却するし、動かないなら粗大ゴミで処分しようかと。それで、一度電源につないでONにすると、オレンジ色のディスプレイはキレイに点灯。CDのトレイの出し入れも正常に動作。それなら一度聴いてみるかと、Marantz #7につないでみた。

ちょっと試してみるつもりが、本格的に聴き込んでしまう

音が出ると、これがなんだか心地よい。中低域が太めのボディ感のあるサウンドが鳴り出す。何だか面白くなってきて、あれこれCDを持ってきて聴き始めてしまった。ひょっとして、と今のメインのCDトランスポートではキズや部分的な剥離などで音飛びがするディスクをかけてみると、これが見事に音飛びなく再生してくれる。やはり旧来のトレイ型のCDメカニズムは安定度が高いのか。

メインのCECのベルトドライブのトランポートとATOLL DAC200は確かに解像度が高く、美音で透明感があって好きなのだが、音楽のエネルギー感に今ひとつ欠けるようなところがあり、ソースによってはそれが不満だった。特に最近、また熱量の高いロックに向かっていて、もっと音が塊として聴きたいと思っていたので、このCD−4の再生音は心地よい。

試しにこのCD−4のデジタル出力をATOLL DAC200につないでみたが、音調はCD−4の個性が支配的で、少し解像度が上がる程度だったので、ここは潔くCD−4単体のラインアウトを使うことにした。そんなことで最初は処分しようかと思っていたのに、結局、ラックの中に収まることになってしまった。

デザインの良さも手元に残そうと思った理由

この Nakamichi CD-4、調べてみると1993年にプリメインアンプとカセットデッキの組み合わせで『セレクテッドコンポーネント』として限定300台販売されたものだった。CD-4単体の価格は55,000円で、まあ、エントリークラスの価格設定。仕様的にはデュアル18ビット・リニアグリッチフリーD/Aコンバーター搭載で、デジタルノイズを排除する設計。

デザイン的には、当時のフラグシップのカセットデッキのデザインを踏襲しており、スクエアなグリッドデザインに鋭角的なボタンがアクセントになっている。ディスプレイ表示が一般的なブルーでなくオレンジ色というのも個性的。今でも新鮮で古さを感じさせない。当時のナカミチが海外で評価が高かったのはこうしたデザインによるところも大きいだろう。

1990年代のリマスタリングCDに合っている

このCD-4が発売された1993年はCDの登場から10年が過ぎた頃、『リマスタリング』が始まった頃でもある。1982年のCD登場からしばらくは、アナログマスターをそのままCDに変換しただけで『AAD(アナログ録音/アナログマスタ/デジタル書き込み)』の表記がほとんど。既にあるマスターテープからCDに変換するだけで「音の良い新商品」として高く売れるわけで、レコード会社やアーティストにとってはおいしいビジネスだっただろう。

ただ、これがダメかというとそうではなく、後に「デジタルっぽく」音の輪郭を強調したり、アンサンブルの細部にフォーカスし過ぎるような変にリマスタリングされたものよりも強調感のない自然な音で好ましく聴けるものも多い。リマスタリング前のAADのCDは価格もすごく安いので、見かけたから買っておくようにしている。

1990年代に入るとスタジオにデジタルマスタリング機材も浸透して、本格的に「リマスタリング」が始まる。Led ZepplelinやThe Doors、King Crimsonといった往年のグループのアルバムが続々と「メンバー監修・リマスタリング」としてリリースされる『ADD』時代の到来。今聴くと、2010年以降の『リミックス+リマスタリング』に比べたらまだ良心的で、オリジナルアナログマスターの品位やダイナミズムを損なわないように、それでいてデジタルらしい音の明瞭度や分離の良さを感じさせるように巧みに変換されているものも少なくない。

僕もこの頃までは「リマスタリング」盤を買っていた。中でもLed Zepplelinの最初のリマスタリングは良かったと思う。変にいじり過ぎた感じはなく、ドラムのリズムはより明瞭に、また低く沈み、ギターやボーカルも音通りがよくなっている。ニューヨークのSteringスタジオという場所やエンジニアよかったのだろう。CD4枚組(または2枚組の短縮盤)に時代の異なる楽曲をサウンド的にも統一感を持たせながら、まとめてみせた手腕はみごと。

このNakamichi CD−4と時代的にもマッチするのだろう、太くマニッシュなサウンドで、ジョン・ボーナムのバスドラがズドンっと響いてくる。やっぱりこのドラムがバンドの要だった。Rolling Stonesの2000年の最初のリマスタリング盤もいい。これは初期作品群がSACDとのハイブリッド盤としてリリースされたもので、当時のスタジオの空気がそのままパックされているような印象。何度聴いても聴き飽きない。King Crimsonも1989年の「The Definitive Edition」としてのリマスタリング盤(AADだが)シリーズはバンドの演奏に一体感があって好きだった。

Nakamichi CD-4は、M44Gなのか

こうしてCDをあれこれ聴いてみて気が付いたのは、このNakamichi CD-4でロックを聴く楽しみは、SHURE M44Gカートリッジでロックのアナログ盤を聴く心地良さに通じていること。 オーディオ的にいい音と音楽としていい音、あるいはグルーブ感のある音は、やはり違うことがある。音楽の外側の表現なのか、内側の表現なのかとも言えそう。 なんだかラックの中をCDをもっと次々と聴きたくなってくる。


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