今年2月に購入した中古のSHURE V15 TypeV - MR。少し歪っぽいというか、ちょっと音質が埃っぽいところがあって、今ひとつな感じがするので、思い切ってJICO社のSAS針を新たに購入してみることにした。
今回選択したのはSAS針としてはオーソドックスなボロンカンチレバータイプ VN5MR (High Grade) SAS/B。他の選択としては価格は上がるがサファイアのカンチレバーや音質がソフトな方向のルビーをカンチレバーがある。SAS針は職人による受注生産なので発注から約2週間後に到着。
ハイグレードな針だけあってプラケースだけなく、外側は白い箱に納められている。さて、SAS針を取り出して外観を見てみると、中古で購入した時に付属していたSAS針とは少し違う。
針先に付属するブラシが大きくなり、SHURE純正とほぼ同じサイズになっている。以前のものはブラシが小さく頼りなかったが、これなら針先を保護する意味でもブラシを使いたい。それに、針先の場所を示す白いラインも印刷されていて、レコードに針を落とすときの場所を正確に決めることができて便利。この新しいSAS針からSHURE推奨の「ブラシを使用した状態で針圧1.5g」に設定して使っている。
SAS針を拡大ルーペで見ると、V15 TypeIIIなどの楕円針や丸針と比べて先端のチップは非常に小さい。楕円針や丸針がアルミのカンチレバーを貫通するようにダイア針が取り付けられているのに対して、ボロンカンチレバーは穴あけ加工はできないので、カンチレバーの先端に小さなダイア針が接着剤で貼り付けた状態になっている。
SAS針の先端は、カッティングマシンのカッターヘッド針と同じ形状であることが特徴で、レコードの音溝への密着度が高まっているのだろう、これまでプツプツ音が出ていた盤でもサーフェイスノイズがずいぶん少なくなる。
最初、SAS針はコンデイションの良い最近のアナログ盤向きだろうと勝手に想像したが、実際には前記したように古い盤でもノイズが少なく再生できるのは嬉しい誤算だった。なのでこのV15 TypeV - MRでジャンルや盤のコンディションを問わず、かなりオールマイティに再生が可能になる。
音質的には、レコードに記録された情報をもれなく聴かせてくれる高解像度で低音の伸びもよいが、過剰な重い低音ではなく、ナチュラルで深い低音。レコードごとの音質差も的確に表現してくれる。ただ、音楽の細部まで描き出すためか、「ノリで聴く」ようなリスニングよりも、再生される音楽の細部に入っていくような探究的な聴き方に向いていると言える。
「音楽との対話」に導かれていく。