使い始めてから30年以上になるMicro製のアナログプレーヤー BL-77とトーンアームのAudio Craft AC-300MC。最初に購入したときからほとんど変わらず、アルミのターンテーブルの上に重量3kgの銅板ターンテーブルシートを敷いて、さらに純正の900gのスタビライザーでレコードを押さえつけている。そうしたリジッドな構成で盤面の振動を抑え込むアプローチで、解像度の高い再生音を得ようとしているわけだ。
振動を抑え込むだけでは解決できないこと
当時のオーディオ界には不要な振動を抑え込むことが良い音の基本という考え方があった。それでアンプの上に重い鉛のインゴットをのせてみたり、ケーブルをブチルゴムでグルグルに包んだりといろんな方法が編み出された。本体がソリッドな金属でできた40kg以上の重さのあるアナログプレーヤーが国内メーカーから発売されたりもした。
しかし、最近では振動を抑え過ぎると音楽的な振動までが阻害されてしまう懸念や金属固有の振動が「音にのってしまう」という指摘もある。僕もこの課題を認識させられたのは、アンダンテラルゴ のオーディオボードをプレーヤー用に導入したことで、軽量な積層木材のボードでありながら、振動を制御することで音楽的な表現は格段に向上した。
合わせて、コレクションしているSHUREのカートリッジのヘッドシェルも厚手のアルミシェルからカーボン、黒檀、ツゲ材など10g以下の軽量シェルに付け替えていくと、もともと軽針圧でハイコンプライアンスなカートリッジの特長が一層活かされて、いきいきとした再生音を聴かせてくれる。
47研究所の豚皮ターンテーブルシートを試す
話はターンテーブルに戻って、銅板シートと重量のあるスタビライザーの組み合わせは解像度も高くて良いのだが、何か音が硬いように感じられることもあって、何かも試せることはないかとオーディオ誌をパラパラ見ていて目に止まったのが、この47研究所の豚皮ターンテーブルシート。厚さ1ミリと薄いので既存の銅板シートと組み合わせてもそれほど高さに影響がなさそうな点もいい。47研究所には鹿皮と豚皮があるが、「豚皮のほうが音が肥えている」というレビューで価格も実売3,000円程度と手軽なので、豚皮を購入してみた。届いてみたらパッケージというものもなく、ただ黒く染められた丸い皮がビニールの袋に入って送られてきた。
まずはそのままポンと銅板シートの上に置いて、カーボンヘッドシェルのV15 typeIVのカートリッジで何枚かレコードを聴いてみる。一聴して音の背景が静かで余韻もいい。やはりアルミ+銅板の鳴りがあったのだろうか、余分な付帯音が取れてよりナチュラルになった気がする。これは効果が期待できそう。
上に置いたり、間にはさんでみたり
雑誌のレビューの通り音が痩せることはなく、かといって曖昧にふくらむこともなく、音楽のボディ感が増す。ただV15 typeIVやTypeVだと、ちょっとおとなしくなり過ぎている感じもするので、アルミのターンテーブルと銅板シートの間に豚皮シートを挟んでみると、これが非常にバランスがいい。
アルミのターンテーブルと銅板の両方の鳴りを適度に抑制するのか、クリアでありながら緻密で、エネルギー感はそのまま伝わってくる。このサンドイッチは相性が良さそうだ。
次にカートリッジ を黒檀ウッドケース変装のM44Gに変えてみる。このカートリッジ現在はツゲ材のヘッドシェルに付けている。これで聴いてみるともう少し鳴りを抑えたい気がするので、豚皮シートを元のように銅板シートの上に置いてみる。
これはいいい。M44Gらしい音の張り出しの良さはありながら、ボーカルやエレクトリックギターがグッとリアルになる。昔の国内盤のロックのレコードが気持ち良く聴けるのは重要。中低域の厚みが出てきて、ボリュームを上げてもうるさい感じがしない。
最近入手した初期型のV15 TypeIIIではどうか? これもM44Gと同様にシートは上置きが合うようだ。M44Gと比べるとゴリゴリと前に出る馬力感はやや後退するが、音楽の熱度は高く、実態感がありながら洗練されたサウンドで聴かせてくれる。このシート、ややボリュームを上げた方が本領を発揮するようだ。たった1ミリの厚さしかないのに魔法のように素晴らしい。次々とレコードを聴きたくなる。
アナログ再生はアクセサリも大切
アナログはカートリッジの針を変える、ヘッドシェルやリード線を変える、ターンテーブルシートを変えるなど、アクセサリでの調整ポイントが沢山ある。ひどく高価なものでなくても、自分が目指すサウンドに調整していけるのが醍醐味。今回、豚皮のシートが良かったので、次は鹿皮も試してみたい。音楽ジャンルで使いわけるのもアリかもしれない。