Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

アコースティックリバイブ、でんき堂スクェア / RCAケーブル - ケーブルの存在を感じさせないケーブルがベスト

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オーディオをやっていると各種機材を接続するケーブルの選択に悩むことになる。よく「ケーブル沼」と言われるほどに、このケーブル選択に時間を労力を費やすことになる。僕もケーブルは過去、海外製、国内製、より線、単線、ビンテージ線などなといろいろと試してみた。それで分かったのはケーブルは価格ではないということ。10万円のケーブルが2万円の5倍すごいとか、そういう論理は当てはまらない。もちろん10万円のケーブルは2万円のものよりも線材も厳選されているしプラグも凝っている。しかし……。

まず、自分の聴きたい音を決めることが大切

ケーブルを変えると音が変わる。問題は、その変わった音が自分にとってどうなのか? ということ。もう、独断でかまわないので自分の好き嫌い、自分が出したい音を決めることが大切。それは「このレコードをこんな音で聴きたい」とか「このギタリストのフェンダー・ツインリバーブのアンプの音をリアルに再生したい」といったようなこと。聴きたい音のゴールが決まると、ケーブル選びが「沼化」することを防止できる。

僕の場合は次のような再生音を求めている

  • 音の分離がよいがバラバラではなく、グルーブ感があること
  • ハイエンド、ローエンドに少しアクセントがあるのはいいが、強調感がないこと
  • レコードやCDごとの録音や音質の違いを正しく出せること、でも音質がいまいちなものも上手く聴かせてれること
  • 無理にレンジを広げて音が薄くなるよりも、一定のレンジ内で音に充実感があること
  • 高域の伸びで聴かせるよりも、膨らみすぎない中低域の厚みがある音
  • 大音量だけでなく、会話が可能な中小音量でも音が痩せないこと
  • 長時間のリスニングでも疲れないこと、でもリラックスしただけの音でなく緊張感も表現できること

といったことに加え、機材がビンテージなのでRCA端子が小さめで間隔も狭いため、高級ケーブルにありがちな立派な大型のRCAプラグだと重さで端子が歪んだり隣とぶつかってしまうので、シンプルなRCAグラグの方がいい。ケーブルの予算的には3万円以下でおさめたい。

今回導入の対象になるケーブルは、DACとプリアンプ間、MMカートリッジの負荷容量、負荷抵抗を調整するMM Expanderとプリアンプ間を接続るするケーブルになる。

アコースティックリバイブのRCAケーブル

最初は2箇所ともアコースティックリバイブのケーブルにすることを考えていた。アコースティックリバイブの「LINE-1.0R-TripleC-FM」はTripleCという素材の楕円単線を使用したケーブルで実売価格は2万円台。このケーブルは数年前にハイファイ堂で中古で購入したのが最初で、プラグも小さくケーブルも太くないので取り回しもよく、音質的には、いかにもケーブルで音を変えるぞ、という主張がないところが気に入っている。それでいて低域も高域も十分に伸びていて音楽の細部もきちんと表現してくれる。古典的で保守的というよりは、透明感があり音場も広いモダンな表現ではある。既にプリアンプ --パワーアンプ間はこのケーブルを使用している。

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こうしたケーブルのキャラクタはATOLL DAC200とプリアンプとの接続には最適で、CDらしい明晰で力感のある表現で音楽を聴かせてくれる。僕はCDをアナログっぽい音で聴くよりは、CDならではの分解能が高く、音に滲みのないストレートな表現を楽しみたいたい。そうした用途にアコースティックリバイブのRCAケーブルは応えてくれる。

でんき堂スクェアのショップオリジナル同軸RCAケーブル

問題になったのはMM Expanderとプリアンプ間のRCAケーブル。この部分はDACからの1Vよりももっと低い3mVとか大きくても10mV程度の低レベルのフォノ信号がそのまま流れるので条件が変わってくる。交換前は別のビンテージ線を使ったケーブルを使っていたが、どうも表現が古典的で躍動感に欠けるところが不満だった。ここにアコースティックリバイブのRCAケーブルを使うと確かにそうした不満は解消されるが、現状のシステムだと高域にやや強調感が出てしまい硬い音調になってしまう。

それで以前から気になっていた「でんき堂スクェア」のショップオリジナルのRCAケーブルを検討してみた。でんき堂スクェアのサイトの店主のコラム(?)は面白く、機器の販売だけでなく、各種ケーブルの製作、カートリッジの加工・取り付け、持ち込みケーブルの加工調整なども手がけている。このショップオリジナルのRCAケーブルは米軍調達規格のいわゆる『MILグレード』の線(ビンテージでなく新しいもの)を使用して、プラグには米国スイッチクラフト社のプラス側が中空で突起の先端までケーブルが入るタイプとなっている。

メールで問い合わせしたら電話がかかってきて少し話をしたら、用途的なこととMarantz#7のようなビンテージアンプだとケーブル込みで音作りが考えられているので、同軸型のケーブルの方が音質的に向いているし、制作に使うハンダは、オーディオ用のハンダの他にビンテージのハンダ、NASAが使用しているハンダが選択できるとのこと。おすすめに沿って、同軸型のRCAケーブル1mで興味が湧いたのでビンテージのハンダで制作を依頼した。価格は17,000円。発注・入金から4日程度で到着。

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さて、それで到着したRCAケーブルをMM Expanderとプリアンプに接続してみる。ケーブルは思ったよりも細くて急な曲げはできないものの取り回しは悪くない。スイッチクラフト社のプラグは軽くていいし、接触面が大きくしっかりしていてコネクタのホールド感がよく安心感がある。こうしたちょっとしたことが音に影響してくる。アース処理もされていて心配したノイズもない。

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音を聴いての第1印象は「とても自然で普通」な感じ。いかにも「どうだ、いいケーブルだぞ、すごいだろう」という主張は皆無。オーディオを長く趣味にしていると良質な「自然で普通」というケーブルが実は意外と得難い存在だったりする。このでんき堂スクェアのケーブルはそうした意味ではすごく優れたケーブルと言えそう。

1週間を経過して更にこなれて、品が良く、力ある音楽はその力を、緊張感のある音楽はその緊張感を、ワイドレンジは録音はそのレンジの広さを、陰りのある音楽はその陰りを伝えてくれる。音楽的な表現もいい。それにMM Expanderを経由したSHUREのカートリッジの個性の違いもよくわかる。レコードらしいソリッドでリアルな空気感のある再生音が堪能できる。

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スタジオと違って趣味性の高いホームオーディオにおけるケーブルは、電送材であると同時にチューニング材の役目を負っていて、素材、外観、音色、価格も千差万別で個性的。趣味の世界なのでそれでいいいのだけど、本当はケーブルはその存在を主張しないで黒子であるべきのようにも思う。その意味では、今回導入したアコースティックリバイブやでんき堂スクェアのRCAケーブルは、ケーブルの存在を感じさせないのがいい。結局、音楽に耳を傾けるわけだから。

オーディオ専門店 でんき堂スクェア湘南 » でんき堂オリジナル、同軸タイプMIL規格線使用RCAケーブル新製品のお知らせ

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