アナログレコードをたくさん聴くということは、レコードのクリーニングだけでなくカートリッジの針先のクリーニングにも気を配りたい。昔、レコードに溝は何本あるか? という問いが流行ったことがあったが(正解はA面とB面で2本)、片面約25分の溝の総延長は約1kmとも言われている。その距離をあの小さな針先で凸凹の音溝を擦っていくわけで、大変なストレスが針先にかかることになる。まあ、文字通り「身を削って」再生している。
となると、ホコリやゴミは大敵で音質への影響も大きい。レコードについては、バキューム式や超音波式のクリーニングマシンがある。僕もバキューム式を使っているが、これで洗浄した後はノイズが圧倒的に少なくなり、音の実態感が増す。
カートリッジの針先のクリーニングには、以前も紹介したクリーニング液や振動式のブラシを使っているが、クリーニング液を多用するのもちょっと不安だし、振動式のブラシをレコードを変えるたびに毎回セットするのもちょっと面倒。
そんなときに重宝していたのが、ONZOWラボの粘着式ゲル状の針先クリーナーで、ゲルの上に針先をツンツンとのせて針先の汚れをゲル側に移してキレイにするという仕組みのもの。全体が汚れると水洗いして10年近く使ってきたが、さすがに全体がくたびれてきて、洗うと中に水分が残るようになってしまったので代替え品を探すことした。
粘着ゲルが進化したCHUDEN スタイラスクリーナー
今回導入したのは、このCHUDEN スタイラスクリーナー。CHUDEN(中電)はカートリッジのOEM製造の企業で、現在ではOEMだけでなく個性のある自社製カートリッジもリリースしているし、こうしたレコード関連製品も提供している。
この新しいスタイラスクリーナーは、針先クリーニング用に特化した新しいゲル素材を開発し、アルミ削り出しのケースを採用。針先がケースのふちにひっかかる事故防止のためにゲルの厚みをアルミケースよりも数ミリかさ上げしている。新しいゲル素材がよさそうなこととアルミケースが気に入って購入してみることにした。
予想以上に針先の汚れがとれる
使い方は簡単で、ターンテーブルなどの上にこのスタイクリーナーを置いて、カートリッジの針先を少しだけゲルに沈めるように置く。力を入れて抑える必要はなく軽い感じで十分。ヘッドシェルを持っている指先にゲルの感触が伝わってくるはず。以前使っていたものと比べると、針先がしっかりゲルに刺さっている感じがする。
ルーペで針先を見て確認してみると、針先の汚れは取れて針先のチップがクリアになっているのがわかる。液体クリーナーを使った時とほぼ同じようなクリーニング能力がある。処理後はレコードのリードインの箇所の針音もずっと小さい。これまで何枚か続けて聴いていると、音が歪みっぽくなってくるのが不満がだったが、これで1枚AB面を聴く度に針先をクリーニングすると、歪みなく解像度の高い再生音を手軽にキープすることができる。
針先を大切にすると寿命ものびる
ちなみに2週間程度使用した後はこんな状態。
右側の黒い筋状のものが針先からゲルに移った汚れになる。バキュームクリーニングしたレコードでも、再生後はこれくらい針先に汚れがついていることがわかる。クリーニングされていないレコードが針先に与えているダメージはもっと大きいのだろう。
針先をキレイに保つことは、高音質を維持できるだけでなく、針先の寿命をのばすことにも効果がありそうだし、キレイな針先はレコードに与えるダメージも少ない。このCHUDEN スタイラスクリーナーは類似製品の中では価格は中位だが、そのだけの価値はありそうだ。