Apple Music ロスレスストリーミングが始まってからいろいろ聴いてみて想像以上に品質が良く、これだけ高品質の音源が月額980円で提供されるのは、ハイファイグレード音源の民主化ともいえそうだ。
Apple Musicのロスレスとは? ハイレゾである意味は?
ロスレス(Lossless)とは、MP3やAACのように元の音源データを圧縮してしまい元の音源データには戻せない(不可逆性)状態とは違い、FlacやAppleLosslessといったアルゴリズムでは、圧縮は行うが完全に元の音源データにも戻せる(可逆性)状態にあるので元データに対して「失われたものがない=ロスレス」となる。ただし、ファイル容量としてはMP3やAACが元データの1/5以上小さくなるの対して、ロスレスでは半分も小さくできないし、ハイレゾになるとさらに巨大なファイル容量になる。ファイ容量が大きいということは、それだけデータ転送量(モバイルならパケット使用量)も増えるし、ネットワーク帯域も圧迫する。
ハイレゾと呼ばれるのはハイレゾリューション(High-Resolution/高解像度)のことで、通常のCD音源の44.1KHz/16bitの何倍もの解像度で元の音源からサンプリングを行うので、理論的にはよりオリジナルに近い音質を得られることになる。ちなみに最近のプロフェッショナルなスタジオレコーディングや昔の音源のリマスリングなどは384kHz/32bitで作業されている。
なお、このロスレスやハイレゾ配信は、一般的な「PCM方式(Pulse Code Modulation)」であり、SACDで採用されている「DSD方式(Direct Stream Digital)ではないので、市場に広く出回ってるDAコンバータで対応できる。
提供されるフォーマット
実際にいろいろ聴いてみると、Apple Musicで提供されるロスレス、ハイレゾ品質は以下のものがあるようだ。ただし、アルバムによって提供品質は異なるし、従来のAACのままの音源もある。感覚的には8割はロスレス以上になっている印象。
- 44.1KHz/16bit - CD品質 or 24bit
- 48KHz/16bit or 24bit
Mac本体やiPadのヘッドホン出力、iPhoneに付属するライトニング変換のヘッドホン端子で再生できる品質は48KHzまで、これ以上は外部のDAコンバータが必要になる。Bluetooth接続のヘッドフォンではBluetoothのコーデックで圧縮されてしまうのでロスレスの効果は得られないが、それでも従来のAACと比べての音質改善は実感できると思う。
ハイレゾ品質としては次があるが、対応しているアルバムは一部に限られる。
- 88.2KHz/16bit or 24bit
- 96KHz/16bit or 24bit
- 192KHz/24bit
ちなみにデータ量はAAC(約6MB)と48KHz/24bit(約36MB)で約6倍、192KHz/24bit(約145MB)では約20倍以上となる。AppleMusicのロスレスを堪能するために新たにDAコンバータを購入するのであればUSB入力が192KHz/24bitまで対応しているものを選んでおきたい。
ロスレス ストリーミングを利用するための設定
Apple Musicのロスレスを聴くには、iOS/iPadOSともに14.6以上、macOSは11.4以上がインストールされていること。前記したようにロスレス、ハイレゾはデータ転送量が増大してモバイルでのパケット通信量やネットワーク帯域を消費するのでiOS/iPadOSではデフォルトでOFFに設定されている。なのでこれをONにする設定変更を行う必要がある。
「設定」から「Music」を選び、「オーディオの品質」を選ぶ。
「ロスレスオーディオ」をONにする。
次に接続条件での品質を選択する。
「モバイル通信ストリーミング」は、例えばモバイル時はデータ通信を節約したいなら「高効率」「高音質」を選択して、ロスレスは使わないでおく。あるいは5Gでデータ通信契約も大容量ならロスレスやハイレゾでもいいかもしれない。
「WiFiストリーミング」の時は「ハイレゾロスレス」まで許可する。
「ダウンロード」は、例えば自宅のWiFiで事前にダウンロードして外出時はヘッドフォンで聴くのあれば、「ロスレス」を選択してもいいかもしれない。あるいは、自宅でDACに接続するなら「ハイレゾロスレス」でもいいだろう。自宅がマンションなどの共有回線で速度が遅い時も、このダウンロード設定で「ハイレゾロスレス」ファイルとしてダウンロードしておくと音切れなく再生できる。
これで、Musicアプリがロスレス再生対応になる。
Musicアプリのライブラリがロスレス再生にならないとき
これでMusicアプリを起動してアルバムや楽曲を選択すれば、ロスレス再生になるはずだが、既にライブラリにブックマークしていたアルバムがロスレス表示にならないことがある。その場合は、アーティスト名のリンクから再度アルバムの画面を表示させると「Lossless」「Hi-Res Lossless」のマークが表示されて、聴くことができる。
ただ、数百枚のアルバムがライブラリにブックマークされているのを都度行うのは面倒なので、その場合はMusicアプリを一旦削除して、再インストールすることでライブラリを再構築する(以下の手順は「ライブラリを同期」を選択しているときに有効)。
- Musicアプリのアイコンを長押しして削除
- 削除するときにAppleMusicのサブスクリプションもキャンセルするのか問われるのでサブスクリプションは残すこと。
- AppStoreからMusicアプリをダウンロード
- 設定で前記したロスレスの再生やダウンロードを有効にする
- 「ライブラリ同期」をONにする
- これでMusicアプリを起動すると同期が開始される。アルバム数が多いと10分程度かかることもある。
同期が完了してアルバムカバー一覧が表示されたら、タップしてみるとロスレスマークなどが表示されればロスレスで聴くことができる。
USBアダプタと外部DAコンバータは必須
以前の記事にも書いたが、AppleMusicを利用するにはiPadが一番向いている気がする。USBアダプタをつけたiPadを専用にしてしまうのが、操作性からもおすすめできる。
次回の記事では、実際にいろいろと聴き比べをしてみたい。