Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

学芸大学「サテライト」へ久しぶり出かけて中古レコードをいろいろ買う - David Cross, Michael Hoenig, Codes In The Clouds, Steve Marcus, Michael Mantler, Olivier Messiaen

これまで何度か書いたことのある学芸大学にある街の中古レコード屋さんの「サテライト」。去年は2か月に1度くらいは行っていたが、仕事が忙しかったりいろいろあって今年になってから初めての訪問となったが、お店はいつも通りの雰囲気。あまり変わっていないことに安心する。

サテライト以外では、もうオンラインでしかレコードを購入していないので、フィジカルにレコードをあれやこれや触ってみることができるのは久しぶりの感覚。今回購入したのはこんなレコードやCD。

Codes In The Clouds / Paper Canyon(英国盤)

  幾何学模様のジャケットが気になって購入したのは、2009年から活動している英国のポストロックグループ「Codes In The Clouds」のデビューアルバム。Explosions In The Skyに近いというか、どちらかいうと穏やかな展開のポストロックの好アルバム。

David Cross / Memos From Purgatory(英国盤)

1972-1974年のKing CrimsonのメンバーだったバイオリンのDavid Crossの1989年リリースのソロ1作目。彼はKing Crimsonでは不遇がところがあって、オフィシャルライブのリリースではバイオリンパートをEddie Jobsonの演奏に差し替えられたり、バンドのコアなファンからもあまり高い評価を受けてなかったように思う。Curved AirのDaryl Wayのように華麗なテクニックでバリバリ弾くようなタイプではなかったからだろうか? 個人的には当時のライブのFracutureやStarlessの終盤で聴かせる崩壊していく建築物を見るような重厚なバイオリンの演奏は好きだった。

このアルバムはSF作家、ハーラン・エリスンの同名の小説をベースにした架空のサウンドトラックのようなもので、いかにも80年代後半の録音のエフェクト処理がされている。King Crimson的なものではなく、エレクトリックバイオリンをフィーチャーしたジャズロックアルバムとして聴くとなかなかの力作。Codes In The Clouds もそうだが、僕はロックのインストアルバムが好きなんだな。

Michael Hoenig / Departure From Northern Wasteland(英国盤)

ドイツの作曲家、シンセサイザー奏者 Michael Hoenig の1978年リリースの1作目。彼は一時期 Tangerine Dreamにも参加し、Ash Ra TempleのManuel Göttschingとのコラボレーションで『Early Water』などの作品も残している。彼自身は後に米国ロスアンジェルスにスタジオを設立し、映画やTV等の音楽制作で成功する。

このレコードは日本盤を持っていたが、英国盤オリジナルはどんな感じか興味があったので購入。内容はTangerine Dreamの初期やKlaus Schulzeのように思い詰めたような暗いところはなく、空間的で広がりがあり映像的な作品。朝でも昼でも夜中でも、いつ聴いてもその音世界に入っていける。洗練されたところがあって、あまりクラウトロックっぽくない。シーケンサーの主体のA面のタイトル曲もいいがB面の声を変調したミュージックコンクレート的な作品もいい。

Steve Marcus / Tomorrow Never Knows (米国盤)

これはApple Musicで聴いて気に入って探していたレコード。1969年のリリースでサイケ・ジャズロックの名盤とも言われているようだ。Steve Marcus(1939-2005)は、ブロンクス、NY出身のサックス奏者。1960年代から70年代にかけて、ポップなジャズを目指したフルート奏者のHerbie Mannやジャズロック方向が強かったギターのLarry Coryell などのグループに参加していた。

この「Tomorrow Never Knows」は彼のソロデビューアルバムで、タイトルからもわかるように、 The Beatlesの『Tomorrow Never Knows』、Byrdsの『Eight Miles High』、Donovanの『Mellow Yellow』といったボップ、ロックチューンをカバーしている。ただ彼の手にかかると、そうした曲は素材でしかなく、かなりフリーキーな演奏となる。

『Eight Miles High』では最初はテーマを平凡になぞっているが、展開部になると一転してグループ全体がスリリングでアグレッシブな演奏に変わる。リズムは奔放だし、かなりキテる感じのギターだと思ったら、どうやらLarry Coryellらしい。 10分におよぶ『Tomorrow Never Knows』はさらに突き進んでいく。

Michael Mantler / More Movies(日本盤)

Michael Mantler(1943 -)は、オーストリア出身のジャズトランペッター。一時期ピアニストのCarla Bleyのパートナーでもあり、自分達のレーベルJOCA/WATTから多くの作品をリリースしている。Michael Mantlerは、フリージャズというよりは作品指向で、作曲されたパートとソロやインプロビゼーションのパートがはっきりと分かれているように思う。それにロック系のミュージシャンの参加も多く、アルバムによっては、 Marianne Faithfull、Robert Wyatt、Kevin Coin、Jack Bruce、Crhis Spedding、Pink Floydのドラムの Nick Masonなども演奏している。

この「More Movies」(1980)は、1978年にリリースされた架空の映画のサウンドトラックをコンセプトにした「Movies」というアルバムの続編。前作「Movies」は、これもギターのLarry Coryell、ドラムにはLifeTimeのTony Willams、ベースにSteve Swallowというパワーメンバーでダイナミックなジャズロックを聴かせてくれた。

本作はギターがFocusにも参加した英国人のPhilip Catherineに代わり、サックスにGary Windoが加わる。前作が問答無用のハードボイルド映画のサントラだったとしたら、本作はもっとソフトな印象。1976年のアルバム「The Hapless Child」のメロディの引用が多いからかもしれない。演奏の破壊力は前作に及ばないが、内容の充実度では互角かも。何度も聴きたくなるのは、曲と演奏が巧みに構成されているからだろう。

Olivier Messiaen / Complete Edition (CD)

クラシックのCD箱物は全集ばかりになってしまったと少し前に書いたが、まさしくその「オリビエ・メシアン作品全集」のCD32枚組。CDは紙袋に入っているだけで、英仏2ヶ国語の370ページの解説書が付属している。購入価格はCD1枚換算だと200円という格安。作品が関連なくCDに詰め込まれているのを危惧したが、幸いそんなことはなく作品単位で分割されているのでよかった。

メシアン(Olivier Messiaen 1908 - 1992)のことはずっと以前から知っていて、「幼子イエスキリストにそそぐ20のまなざし」といったピアノ曲や室内楽を中心に聴いていたが、なぜか去年から急に自分の中でブームになってきた。シェーンベルク派の12音技法とは全く異なる独自の作風を確立していて、インドやガムランのリズムを作品に導入したり、金属打楽器やチェレスタ、初期の電子オルガンであるオンド・マルトノといった煌びやかで色彩的な響きを多用している。それは、メシアン自身が非常に強い信仰心を持ったカトリック教徒で、そうした宗教心からの影響が大きいが、その独自の表現については初演当時から賛否両論あったようだ。

僕が好んでいた12音技法/無調音楽はどちらかと言えばモノクローム、グレートーンの音世界で、それと比べるとメシアンの音楽は響きが華やか過ぎて以前はそこに抵抗感があったのだが、今やその音の色彩感が説得力を持って聴けるとは、人は変われば変わるものだ。

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レコード屋さんで思うのは、いつ行っても欲しいレコードがある不思議。その店の趣味や雰囲気が自分に合わない場合(例えば、Waltzやギンザレコードなど)を除けば、必ず何かをその店で買って帰る。かなりの量のレコードを買っているはずなのに、まだ欲しいものが次々と出てくる。きっと死ぬまでレコードを買っているんだろうな…。

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