年末までに書こうと思っていたが間に合わず。2022年は新譜、旧譜ともにレコードの購入ペースが落ちている。前年の半分以下かもしれない。自分の中での限界のようなものもあって、その話は以前書いた。もちろん買ったレコードはどれもこれも好きだし、何度も繰り返し聴いている。2022年にその中でも強く感じるものがあったのはこんなレコード達。
LOU REED / Rock N Roll Animal & Lou Reed Live
1973年12月のLou Reedのライブ。別々にリリースされたが同じコンサートなのでセットで。商業的には今ひとつだった『 Berlin』のアルバムリリース時のツアー音源。ベルベット時代から、ソロ、新作の『 Berlin』からの楽曲までを含むベストアルバム的な側面もある。 Lou Reedはライブアルバムが多いが、その中でもヘヴィでハード。 Steve Hunterのギターも聴きどころ。退廃的でハードなドラッグ感覚、暴力的で無気力な1973年ならではも空気感が凝縮されている。当時の日本ビクター盤は音がいいと思う。
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SRSQ/UNREALITY
これはブログでも紹介したが、苦境から抜け出すための美しいアルバム。最近も元気で活動していてようだ。
Whole Lotta Love / CCS
ここ数年、自分の中では未知のジャンルだった1960〜1970年代のブリティッシュブルースをときたま聴いている。当時の英国ではジャズとブルースは黒人音楽として同じような扱いで、そうした黒人のカルチャーを自分たちの白人文化の日常や音楽へどう取り入れていくかが課題だった。それが初期のRolling StonesやYardbirds、Ten Years Afterなどにつながっていく。
これはブリティッシュブルースの重鎮、Alexis KornerがCCSというホーン中心のビッグバンドでブルースロックを演奏するプロジェクトのアルバム。1970年のリリース。サイケデリックなジャケットとは違い、中身はストレートで豪快なビッグバンドサウンド。SatisfactionやWhole Lotta Love、Jethro Tullのインストカバーも含まれる。米国オリジナル盤。
Thank Christ For The Bomb / GROUNDHOGS
GROUNDHOGSは、ギター&ボーカルのTony McPheeを中心にしたトリオで1960年台中頃から活動している。基本はブルースロックなのだが、Creamよりもヘヴィで骨太のオーバードライブがかかった演奏はユニークで、メロトロンやシンセを導入していた時期もある。この『神様、爆弾をありがとう』というアルバムは1970年にリリースされた反戦をテーマにした3枚目で、彼らの個性が凝縮されている好きなアルバム。英国オリジナル版。
QUANTUM GATE / Tangerine Dream
創設メンバーのEdgar Froseが亡くなった後にリリースされた日本人バイオリニストを含む新生Tangerine Dreamの1枚目で2017年のリリース。アナログ2枚組をバーゲンで見つけたので購入。Edgar Froseがそれまでのフォーマットを解消して、原点回帰というかダンス・アンビエントから元のエクスペリメンタルな要素があるエレクトロミュージックへ方向転換を進めようとしていたのがわかる。残ったメンバーもそれをよく理解している。
All Alone / Mal Waldron
Mal Waldron(1925 -)は、チャーリー・ミンガス、ジョン・コルトレーン、エリック・ドルフィー、スティーブ・レイシー等のグループで活躍した黒人ジャズピアニスト。一度聴いたら耳の残る、力強いが陰りのあるブルースフィーリングが彼の個性。この『All Alone』は1966年にイタリアで録音されたソロピアノのアルバムで、ソロの緊張感と抑えがたい感情のほとばしりが共存している。最初の5秒で、このアルバムの重みが伝わってくる。当時のリリースと思われる古い日本盤の音も良い。
Solitude & Impressions / Wes Mongomery
Wes Mongomery(1923-1968)は、ピックは使わない指引きのジャズギタリストで、ビートルズなどのポップソングをバックバンドやオーケストラとのジャズアレンジで演奏して、クロスオーバー、イージーリスニングジャズの先駆者として商業的に大きな成功を収めた。ただ、そうしたポピュラー路線に進む前の1950年代後半から60年代前半のジャズギタリストとしての功績はもっと評価されてもいいかもしれない。
彼のプレイの持ち味は抜群のリズム感と早いテンポで展開するパッセージの組み合わせにある。ジャズがダンスフロアで主役だった時代の活力が残っている。彼がYesのSteve HowやTen Years AfterのAlvin Leeなどに与えた影響も少なくないのでは。この2枚に分かれてリリースされた1965年のパリでのライブは、そんな彼のベストな演奏が聴ける。70年代の英国盤リイシューと思われるが音質はよい。
MUSIK / William Eggleston
このアルバムは前回の記事を紹介したもの。米国の著名な写真家William Egglestonが自宅でKORGのキーボードで演奏した即興をまとめたもの。アバンギャルドなアンビエントとしても秀作。なぜか和んでゆったりと聴いてしまう。
Arkhon/ Zola Jesus
2022年にリリースされたZola Jesusの6枚目のアルバム。タイトルの『Arkohn』は「権力、支配者」の意味。彼女曰く、「今は巨大な権力に支配された時代で、私達皆んながそのネガティブな影響を受けている」と。音楽的にはこれまでのスタイルを継承しつつ、Sunn O)))のメンバーの協力を得てより強固なものに。彼女も歌声もより確信に満ちた強いものになっている。『Desire』での歌声は圧巻。
Amaryllis & Belladonna / Mary Halvorson
そして、Mary Halvorsonの『Amaryllis & Belladonna』。これもブログに書いたが、何かを成し遂げることができるのが、アーティストたるものだとすると、彼女はそれをやってのけた。それはどのアーティストにもできることではなく、ひたむきな努力と自己研鑽を通してのみ得らるものだろう。