Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Solid Space / Space Museum - 無垢で素朴な情熱が勝るとき

新年明けに所用があって横浜方面に出向いたときに横浜のDisk Unionに立ち寄って何枚かレコードを購入した。横浜のDisk Unionは数年ぶりで2回目だが、前回も今回も店内では日本のハードコアパンクがけっこうな音量で流れていて、店内も少し荒んだ雰囲気があるのは土地柄なんだろうか。店内はコンパクトながら全ジャンルを網羅していて、限られた時間で散策するにはいいサイズだった。

そこで見つけたのが前からストリーミングで聴いていたSolid Spaceの『Space Museum』。このアルバムの元は、当時18歳のMatthew Vosburgh と Dan Goldsteinの二人組のテクノ、ニューウェーブグループで1982年にカセットとしてリリースされたもの。バリバリのテクノというよりも、初期のKraftwerkやClusterに通じる、素朴なエレクトロニクスミュージック。1982年の時点ですでにレトロだった。

このアルバムカバーはカセットのパッケージを引き延ばしたのだと思うが、引用されているのは、1960年代のモノクロ放送だった時代の英SFテレビドラマ『Dr. Who』の映像。付録の歌詞カードにもインスパイアされた『Dr. Who』のエピソード名やSF小説のタイトルが列記されている。

使用されている楽器は、Casio MT-30, Korg MS-10, Arp Soslina, Roland CR-78, Boss DR-55という当時の比較的廉価だったシンセやドラムマシン。録音も4Trk程度のレコーダーなのだろう。その素朴なサウンドに親近感を覚える。

こういう音楽の魅力は、その無垢な素朴さと作り手の情熱が伝わってくることにある。今では、PCを中心にテクノロジーは発展し、プロと同等のクオリティのサウンドで自宅でレコーディングが可能なっただけでなく、Bandcampのようによるアップロードして共有や販売もすぐに行える環境も整ってきて、自分の音楽を外の世界へ届けることは格段に容易になってきた。

それでも、こうした無垢で素朴な情熱を失ってもらいたくないと思う。


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