Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

DJー44G - ナガオカの新しいM44G互換針 - 全ては音楽とその聴き手のために。

レコード関連用品の老舗であるナガオカから新しいM44G互換針が発売になった。価格は4,480円と手頃。以前からナガオカはSHURE M44G、M75EBなどの互換交換針を提供していたので、今回は再登場となる。JICOのM44Gの互換針は16,000円以上するダイヤモンド無垢針しか入手できないので、このナガオカの互換針は、DJやクラブ、バーなど針を消耗する人たちには朗報だろう。僕も試しに購入してみたので今回はその話を。 

レコードを模したパッケージ

パッケージはレコードのミニチュアを模したもので、針がパッケージから見えている。今回の製品は針カバーにNAGAOKAの文字が入っていることからも、チカラを入れているのだろう。ケースは3本まで針が入るようになっているので、今後、複数本数セットが登場するのかもしれない。カジュアルで面白いパッケージだと思う。

この写真は、左から今回のナガオカの互換針、SHURE純正針、JICOの接合ダイヤの互換針の順。形状を比較すると、ナガオカ製は針先のチップは小さく、カンチレバーは太めになっており、純正の音に近づけるよりもDJ用途にシフトした音調にチューニングされているのか。

DJ向けらしい、アグレッシブな鳴りっぷり

早速、M44Gに取り付けて聴いてみる。僕の持っているM44Gはシルバーハートの黒檀ケースに組み込んだものなので、オリジナルのM44Gとは違う状態での聴き比べになる。

一聴して、SHUREオリジナル針と比べてアグレッシブな表現で音が大きい。確かにダンスフロア向けのチューニングがされている。高音に艶がのって音抜けがいい。メリハリの低域と抜けの良い高域が特徴的。かと言って耳障りなところはなく、オリジナルや他の互換針で気になるボーカルのサ行やドラムのハイハットがジャっという歪は気にならない程度に低減されている。この辺りはNAGAOKAの作り込みの上手さなのか。

ちょっとクセがあり本当の低音は出ていない気がするが、レンジが狭い感じはないし、ステレオの広がりもよく音楽的なまとまりも悪くない。演奏のグルーヴ感もよく出ている。ただし、ハイファイ的な交換針ではないので、そうした解像度の高さや表現を期待してはいけない。

この交換針の使いこなしは、このアグレッシブさをどうやって楽しむかにかかっていそうだ。

適正針圧が重めで、針圧で音調がかなり変わる

M44Gの純正針の適正針圧0.75g〜1.5gと比べると、このナガオカの互換針の適正針圧は 2.0g〜3.5gと重め。なのでM44−7でも使用できるとなっている。それで針圧を変えながら聴いてみると、音調が変わることがわかった。

2.0g〜2.5gだと音抜けの良い快活な音調で、音楽の内容にもよるが、1970年代後半以降の録音のものに向いている。2.7g〜3.5gと針圧を上げていくと、腰が座った音で、70年代以前の古い録音や、古いプレスのレコードを上手く聴かせてくれる。カートリッジや針を変えなくても、針圧を調整するだけで、聴くレコードや好みに合わせてチューニングできるのは便利な気がする。

針圧を変えてレコードを聴いてみる

The Music Machine / Talk Talk (米国オリジナル、モノラル盤)

The Music Machineの1967年リリースのファーストアルバム。Sean Bonniwellの太い声のボーカルとオルガンサウンドが特徴的なハードな初期サイケロックバンド。このアルバムは傷が多いので廉価で入手したものだが、針圧3gで再生するとノイズ感は低減し、マッシブなサウンドを聴かせてくれる。アクの強さも出てきて、こうした音で聴くと臨場感が一層増してくる。古いレコードを聴くなら3gがいいようだ。

The Yardbirds / Roger the Engineer (米国盤・再発)

最近追悼公演もあったJeff Beck時代のYardbirdsの曲を集めたアルバム。ブルースからかなりハードな演奏に移行する1966年頃の作品で、「Happenings 10 Years time ago」は当時としては最も先進的なロックナンバーだった。音抜けの良さをとるなら 2.5gで聴くと爽快。2.75gだと重心が下がってくる。

Steve Reich / Four Organs(仏オリジナル盤)

今でこそSteve Reichはミニマルミュージックの大巨匠だが、このアルバムが録音された1970年ごろは、まともなコンサートホールでは相手にされなかった。A面の「Four Organs」が、ニューヨークのグッケンハイム美術館で、B面の「Phase Patters」はサンフランシスコの南に位置するバークレー大学の美術館での録音。オンガン奏者には作曲家自身と盟友Philip Glassも参加している。 狭い空間でのドライな録音で、自分達の音楽の可能性に賭けている若き作曲家の思いが伝わってくる。2gでその場の空気感を感じるがもいい。

カサドシュ夫妻/ ドビュッシー、フォーレの2台のピアノの音楽(日本盤・オリジナル)

フランスのカサドシュ夫妻による1959年と1963年の録音。CBSソニーができる前に、日本コロンビアからリリースされたCBS盤。高価な盤ではないが、こうした古い録音、古いレコードのクラシックが好きで、軽針圧で聴くと物足りないところがあったが、この針で3gまで重くして聴くと音楽的にも充実した音になってくる。古いソビエト製のメロディア盤も3gで聴いてみたが、これも3gで正解のようだ。この他にもクラシックを何枚も聴いたが、この組み合わせは演奏に艶があって良かった。こうして聴き比べると、最近のデジタル録音のクラシックは、高解像度でスケール感があるが、音楽的な起伏を欠いているように感じるのは僕だけなのだろうか。

互換針は純正針の代わりにはならない

これでまでもこのブログで互換針を取り上げているが、やはり、互換針は純正針の代わりにはならない。「互換」とは取り付けサイズが同じという意味で、出てくる音はそれぞれ違う。なので互換針のそうした特徴をポジティブに受け止めて楽しむことが大切になってくる。全ては音楽とその聴き手のために。

shigeohonda.hatenablog.com

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