最近リリースされる作品はCDとレコードが同時にリリースされる、あるいはカセットまでリリースされて、多様なフィジカルメディアが選択できるのはいいのだけど、インフレと為替レートの影響もあって価格が高騰している。
いつまでも昔ながらのLP1枚 2,500円〜3,000円という時代でもないだろう、ということはわかるが、1枚で6,000円以上となるとちょっと躊躇してしまう。輸入盤CDも3,000円以上が増えてきているし。値下げ処分や中古が出てくるのを待っても、以前のような価格ではなくなっている。
それなら、音源をダウンロードして自分でCD-Rに焼いてしまってもいいのでは? bandcamp.comなら非圧縮でCD品質の44.1KHzAIFF、WAVファイル形式で入手できるし、CDよりも価格も安い。
ものは試しと、次のタイトルを購入してCD-Rにしてみた。
Electric Guitar One / Emma Ruth Rundle
これは、 Emma Ruth Rundleが2010年のヨーロッパツアー中に移動中のバンのバックシートでギターとエフェクターで録音していたものを編集した、タイトル通りの「ギター1本」のアンビエントワーク。リバーブの雰囲気がよく、聴き飽きない。
All Life Long / Kali Malone
このアルバムについては、何度も触れている Kali Maloneの今年の2月にリリースされたアルバム。本作はドローンというよりも、アルヴォ・ペルト的な宗教色も感じさせる比較的短い作品集。
いずれもbandcamp.comのサイトのPaypal決済で非圧縮のWAV,AIFFデータをダウンロード。
オープンソースのソフトとPioneer製のドライブでCD-Rに書き込む
MacbookPro での書き込みに使用するのは、オープンソースのCD・DVDライターソフトの「Burn」という非常にシンプルなソフトウェアを使用。
CD-Rのメディアは、レコード盤風のレーベルデザインが面白いでのバーベイタイム製のメディアを採用。
CD-Rへの書き込みには、以前CDをリッピングする目的で購入したPioneer製のブルーレイドライブを使用する。
ジャケットは写真用紙に印刷
CDはプラケースではなく、ビニールジャケットに入れているので、ダウンロードデータに含まれているアルバムカバーのイメージを使って、Illustratorで曲目リストを加えたものを写真用紙に印刷して自作。
後は切り抜いてビニールジャケットにCDと一緒に入れておく。
ストリーミングとCD-Rの音の違いは
違いを分かりやすくするために、iPad ProとCDプレーヤーを同じATOLLの DAC経由で再生してみる。
まず、Apple Musicのロスレスのストリーミングを聴いてみると音の細部まで正確で、充分に高音質。Kali Maloneは96KHzのハイレゾのストリーミングなので一段とも見通しがよい。正直、かなりクオリティでストリーミングだがらという不満をあまり感じさせないハイファイ調。最近の米国のハイエンドオーディオユーザーは、アナログやSACDではなく、ハイレゾストリーミングをメインソースにしているというもの頷ける。
サウンドステージも広く、音量を上げても破綻しない。旧作はともかく、最近リリースされるものは最初からストリーミングを前提に最終的なミックスダウンが行われるので、ストリーミングとの親和性も高いのだろう。
さて、CD-Rを再生するとずいぶん雰囲気が変わる。サウンドステージは狭くなるが凝縮されて奥行きが出る方向であるが音域のレンジも制限された印象。それに今回気がついて不思議だったのは、CD-Rを焼いた直後よりも数時間おいた後の方が再生音が安定して良かった。
ハイファイ調のストリーミングと比べると情報量は減少するが、音楽的なまとまりはCD-Rの方が好みの方向。MMカートリッジっぽいというか、SHURE のカートリッジでレコードを聴くように音楽に実態感があり、人間が作って演奏している音楽であることのリアルさが伝わってくる。その辺りにストリーミングとフィジカルなメディアに音楽を詰め込んで聴くことの違いがあるのかもしれない。
ただ、そうした違いを感じるのは、10代〜20代をアナログレコードやカセットで過ごしてした世代特有の感覚かもしれない。最近のヘッドフォンが音楽の中心の世代だとまた違った感想かも。上手く表現できないが、音楽(を含むその他の文化)を情報として消費するのか、人の営みとして自分の中に蓄積していくのかの違いなんだろうか。
個人的には、Apple Musicのロスレス、ハイレゾがそれなりに高音質であることも確認できたし、CD-Rには別の楽しみがあることが再発見できて良かった。