最近、CDプレーヤーのトレイによくのるCDが、この「Places」。Büșra kayikçi は1990年生まれのトルコ出身のアーティストで建築家、空間デザイナー。自身のライナーノーツには、
目に見える建築と耳で聴く音楽は統合された不可分な存在であり、音楽を書くときにも、建築と同じプロセスを経ている。
と書かれている。
音楽的には、ミニマル、アンビエント系。ただ、性急な緊迫感があるものではなく、その響きはドビュッシーや晩年のシューベルトのピアノ曲に似ているかもしれない。この種の音楽は、耳障りが良くなりすぎるとウインダムヒルのようなニューエージになってしまうが、ギリギリのところでそうならないのは、彼女自身が述べているように、建築的というか構造的なところがあることと、ピアノ以外のわずかなノイズを加えるエレクトロニクスの扱いの巧みさにある。
このライブの映像からもそうしたことが伝わってくる。
彼女自身は、こうも書いている。
この「Places(場所)」は、心の中にある、私が求める場所を構築しようとする試みであったが、でもそれは、ある種の感情(emotion)の表出でもあった。人生の束の間のあいだ、そうした場所(Places)は避難場所となり、私たちの感情の中にも安全なシェルターを見つけ出す。そうした感情は私達の内面世界を保護するために頭上に広がるシールドとなる。
「自分の内面世界を保護する」というのは、最近感じていることでもあった。他者の自分に対する評価ばかりを気にして、画面をスクロールし続ける先にあるのは「空っぽの自分」ではないかと。