Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Art

ものがたり西洋音楽史 / 近藤 穣 - モダニズムの終焉と芸術音楽の終わり

著者の近藤 穣(1947-)は、武満徹の1世代下にあたる作曲家で、音楽的な傾向は武満徹に似ているように思う。それは線形的な音楽でミニマリズムではないが、響きは洗練された美があり、聴き手が作品との距離を自由にできる余白がある。 また、近藤 穣は著作も…

芸術の意味(The meaning of art)/ハーバード・リード - 「感情」を表現し「理解」を伝えること

古い書籍なのだが、ヘンリー・ムーアの彫刻が表紙の「芸術の意味」というちょっと大袈裟なタイトルのついたこの本が気になったので手に入れて読んでみた。 著者のハーバード・リードは英国人で、本国では1931年の出版。BBCの雑誌に連載していた造形芸術論の…

映画『悪の寓話(Favolacce)』- 絶望への反逆は静かに始まる

毎年この時期はイタリア映画祭があり新作、旧作が上映される。昨年と今年はパンデミックの影響でオンラインの有料上映があり何本か見てみた。僕の中でのイタリア映画は、フェリーニ、ヴィスコンティ、アントニオーニ、パゾリーニといった監督のものは熱心に…

エレクトリックギターを奏でる鳥たち - 少しだけ違った日常を垣間見せる

よく前衛音楽や即興演奏に対する批判に、猫がピアノの上を歩くのと人がピアノを弾くのと何が違うのか?というのがある。もし予備知識なしで両方を録音されたものを聴かされたら、違いはわからないだろう。人の耳だけではその違いを判別できない。 つまり、僕…

アートパワー / ボリス・グロイス - なにが芸術を蝕んでいくのか?

本書は美術手帖のサイトの推薦図書にあったので興味が湧いて読んでみた。読み始めて直ぐは著者のスタンスが非常に分かりにくかったが、著者が1947年東ドイツ生まれで81年に西ドイツに亡命したという、共産主義圏で育ったバックグランドがわかると俄然面白く…

密やかな結晶 / 小川洋子 - 小部屋から見える世界

僕はこの小川洋子という作家のことをほとんど知らない。以前、芥川賞を受賞した作品があるらしい。それでもこの1994年に出版された「密やかな結晶」に興味をもったきっかけは、今年海外で出版された本書の英訳版が好評で、ヨーロッパで映画化の話が出ている…

90度のまなざし / 合田佐和子 - もう帰る途もつもりもなかった

この合田佐和子という人を知ったのは、昔あった『Rock Magazine』という雑誌の表紙が彼女の絵だったことがきっかけとなる。ルー・リードやイギー・ポップや映画俳優のポートレートを模写して、そこに独自の世界観を加えて合田流の作品とする、後のマッシュア…

美術は魂に語りかける / アラン・ド・ボトン、ジョン・アームストロング著 - アートは我々になにを映し出しているのか?

本書は各国で翻訳されてベストセラーになった美術関連書ということで興味があって読んでみた。「美術は魂に語りかける」という大仰な邦題がついているが、内容は原題の「Art as Therapy(治療・癒しとしての芸術)」の通りで、芸術が語りかけてくるというよ…

時のかたち - 事物の歴史をめぐって / ジョージ・クブラー著 - アート、デザインへの新たな視点

2000年以降のAppleの大成功もあって、今日ほどビジネスから日常まで「デザイン」や「アート」の重要性について語られることは、この数十年なかった現象。誰もが日常的に操作するスマートフォンはもちろん、スプーン1本までそのデザインが重要視される。店舗…

中古レコードにいくらまで払えるか? - その価格は音楽の価値なのか?

僕にとって中古レコードを買うことは日常の一部。今でも毎月何枚か実際のお店やインターネットで買っている。よくいつまでも欲しいレコードがあるものだと自分でも不思議に思うほど。 僕が中古レコードを買うようになったは70年代の終わりに東京に来てから。…

見た目のわかりやすさに囚われず、具象と抽象の間で心で感じること

「わかりやすい」ことが重要視される具象化の時代 21世紀になってからこの20年近くは、ビジネスやデザインをはじめ、日常生活のいろんな分野において、「直感的であること」「わかりやすいこと」が非常に重要視されてきた。ソーシャルメディアを筆頭にあらゆ…


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