Sound & Silence

音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

レコードを濡れた状態で再生するウェットプレイバック - レコード再生のタブーを破る

レコードを濡らした状態で再生するとノイズが少なくて音がよい、というのは昔から一部で言われていて、実際にそうしたアクセサリーが販売されていたこともあった。今回はそんな話。でも、危険な方法なので、以下の注意事項を一読を。

注意・免責:本記事で紹介する方法は、レコードやカートリッジを損傷して回復不能となる高い危険性があります。その危険性を理解した上で自己責任で行ってください。著者は、この再生方法を推奨するものではなく、その結果については一切責任を負えません。

ウェットプレイバックは今でも行われていた

実は1980年頃に、このウエット再生をやっていたことがある。当時、「レンコ」というプレーヤーのアクセサリーがあって、筒状の棒の中に専用液を入れて、先端のフェルトから徐々に盤面に液体が浸透して盤面が濡れた状態で再生するもの。効果はあって、針音が抑えられ、音がガサついた感じがしなくなる。でも、人気がなかったのか、輸入されなくなり専用液も入手できなくなったので、止めてしまった。

でも、水で濡らした状態で再生する方法は、海外では健在で、YouTubeにはいくつか映像が上がっている。

ポータブルプレーヤーでも盤面を濡らして再生すると明らかに音が違う。日本のレコード会社でも古いSP盤の音源をCD化するときに、SP盤の表面にオイルを塗っていたという話がある。

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中にはレンコような水を補給するアームを自作している人もいる。

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水を吹きつけることでどう変わるかを詳細に説明するビデオもある。

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映像を見ていると、プレーヤーの上でスプレーで水をかけるのはプレーヤーが壊れるのでダメです。真似しないように。海外の人は盤面がプールになるほど水をかけているのが大胆。でも違いはよく分かる。

再度、ウエットプレイバックに挑戦

それで、今のビンテージ中心のシステムでウエットプレイバックをやってみるとどうなのかと興味がわいてきたので再挑戦してみることに。カルキを含んだ水道水をバシャバシャかけるのは、さすがに気が進まないで、精製水とスプレーボトルを購入。精製水は2リットルで350円なので。そんなにコストがかかることではない。この2ヶ月ほど、吹きつける水の量を増やしたり減らしたり、いろいろ実験を続けてきた。

水量を増やしすぎると、カートリッジの針先から水が浸透してボディの下まで水の膜ができてしまいカートリッジに悪影響がありそうなので、そうならない程度に水を量を抑えるのがポイント。

レコードを片手に持って、250mlのスプレーボトルでレコード全体に場所を変えながら外周から内周に向けて5、6回プッシュするのがちょうど良い感じになった。吹きつけ後の盤面はこんな風になる。

これを黒檀ケースに入れたSHURE M44Gで再生する。針はNAGAOKAの互換針で針圧は 2.2g。この互換針は、サ行やシンバルが強調されて歪むことなく、腰の座った音で互換針の中でも好み。再生中のアップ画像。音溝の水分の中を進んでいく。

片面の再生が終わった状態はレコードによって違うが、だいたい、外周から内周にカートリッジが水を集めながら進むので、盤面には線状に水の跡が残る。

残った水滴は、以前の記事で紹介したガーゼで拭き上げると、盤面の水分は残らない。もしわずかに残っても直ぐに乾くが、ジャケットに戻す前に盤面に水分を残さないことが大切。

その再生音とウエットプレイバックの功罪

ウエットプレイバックの再生音で顕著なのは、ゴミ、傷や針音によるレコードの固有のノイズが大きく低減されること。それに盤面が濡れた状態が維持されるので静電気などの電気的な影響を受けにくい。そうした点が、濡れた状態特有の透明感があり、歪みが少ないリアルな再生音になるのではないかと想像している。低域も曖昧なところがなくなり、音楽の基礎がしっかりしてくる方向。

ノイズレベルが下がるので、1960〜70年代の古いレコードには特に有効だが、最近プレスされた新しいレコードでも音楽的に効果があり、歌や演奏の実態感が高まってくる。昔から持っていたあまりパッとしない音の印象のあったレコードも濡らして再生すると、そんなに悪い印象ではなくなる。

つまり、それだけウエットプレイバックの再生音への影響が大きいとも言えそうで、ドライで再生しているときと比べて、レコード毎の音の差は小さくなる。

マイナス面としては、針先が常時濡れた音溝を通過するので、摩擦は減るが研いでいる状態に近くなり針先の寿命は短くなるかもしれない。アルミのカンチレバーも湿気が多い中にあることになるのでその影響はありそう。その意味でもコイルが針先にあるMCカートリッジでのウエットプレイバックは危険なので止めるべき。

僕の場合は、レコードを全てバキュームクリーニングした上でウエットプレイバをしているが、十分にクリーニングされていない盤だと、音溝のゴミを水で浮かせて針先でかき出すことになるので、汚れが盤面に浮いてくることに注意が必要。針先の掃除をまめにした方が良いだろう。

ウエットプレイバックが日常化

結局、ウェットプレイバックは日常化して、そのノイズが少なく、音楽の実態感た高まるところが気に入っている。濡らして再生するとレコード毎の差異は少なくなると書いたが、カートリッジの違いはむしろはっきりと出すところが面白い。M44Gをウッドケース化したV15 TYpe3に変えると、高域まで凛と伸びたメリハリの強い再生音になる。

なので今もこの原稿を書きながら、スプレーで濡らしたレコードをかけている。

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