Sound & Silence

音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Ear Has No Lid /1 - bandcamp.comで自主制作CDをリリースするまで

ここのところブログの更新が滞っていたのは、仕事をしつつ、自分のCDのリリースの準備作業に時間を取られていため。ようやくCDプレスも上がり、 bandcamp.comでの登録作業も完了した。2回に分けてその話を書こうと思う。

Ear Has No Lidとは?

Ear Has No Lid(耳に蓋はない)というのは、フランスの小説家パスカル キニャールのエッセイ「音楽への憎しみ」という本に出てくる印象的なフレーズで、目には目蓋があって見ることを拒否できるが耳には蓋がないので音を拒むことができない、というもの。

自分が作るのが、実験的なもので、ミニマルやドローン的な変化の少ない浸透するような音楽であることも、Ear Has No Lidという名称をプロジェクト名にしている理由でもある。

続きはbandcamp.comのプレーヤーで実際に音楽を流しながら、読んでください。

なぜbandcamp.comがプラットフォームなのか?

これはもう、これまでbandcamp.com上で多くのユニークな音楽やアーティストを知ることができ、自分もその一部になって試してみたいということに尽きる。インターネットという搾取が横行するようになってしまった空間で、bandcampは有名、無名を問わないグローバルなアーティストとオーディエンスの健全なコミュニティとして、また新しい音楽への入り口としての機能を果たしている。おかしな広告やポップアップが表示されることもない。

どうしてフィジカルなメディアなのか?

ストリーミングの時代に、CDというフィジカルメディアを予算をかけてまで作ったのは、僕が歳をとっているから。これは冗談ではなくて、やはりジャケットが手に取れるフィジカルなメディアに収めたいという気持ちは強い。自分の音楽が、ただのビットとしてネットワークの中を漂っていくだけでは心細い。あと、以前にそういったメディアの制作に関わっていて、ある程度作り方を理解していることも助けになっている。

アーティストとしてbandcamp.comへの登録

bandcamp.comへの登録そのものはそんなに難しくない。別に登録に費用が発生することもなく、アーティスト用として別のアカウントを開設して、プロフィールや作品のアルバムカバーの画像や、マスタリングした音源ファイルを一曲単位でアップロードして、価格設定や、詳細情報のテキストを入れていく。

CDやレコードなどの物販があれば、その情報と送料や取り扱いポリシーなどを入れていく。この辺りは一般のビジネス経験があれば問題ないレベル。その過程で分かったのは、UPCという海外共通の商品管理コードが必要になること。このUPCコードはストリーミング配信の窓口としたCDbabyで取得した。もし日本国内の一般的なショップで販売したいならJANコードを取得する必要があるが、僕の場合は国内で流通にのせる予定はない( 内容的に売れる可能性がない)ので、JANコードは取得していない。

bandcamp側は、はダウンロード販売やCD等の物販からの仲介料が利益になる。そのマージンを引いた金額が、PayPalのアカウントに入金される仕組みになっている。

CDの自主制作 - ジャケットデザインやマスタリング

今回のCD制作は大阪の「クラウドナイン」という会社に依頼した。決め手になったのは、アナログレコードみたいな見開きの紙ジャケットのCDが制作できることと、ジャケットや盤面デザイン用のillustratorのテンプレートデータの品質が良かったこと。下の画像は、テンプレートに実際にレイアウトした状態。ちなみにアルバムカバーの蓮の花や水面は、自分でiPhoneで撮影したもの。

数社を比較する中ではコスト的にもっと安いところもあったが、illustratorのテンプレートデータの品質や全体の説明が今ひとつだった。印刷や制作に立ち会えるわけではないので、ミスや齟齬が生じないように配慮して設計されているテンプレートデータを提供しているところは、製造プロセス全体への信頼感が高い。

紙ジャケットにしたもう一つの理由は保管スペース。CDの制作というのはプレス枚数が100枚増えても価格はあまり変わらないので、プレス枚数が少ないと割高になってしまう。なので300枚プレスしたが、紙ジャケットだと大きめのダンボール1箱に収まってくれる。

CDプレスの音源マスターは、CD-Rで送付する。今回は、音源のマスタリングはiPadPro上のアプリGrandFinale2で行なった。

その音源をMacのApple Musicに入れて、アルバムタイトルのプレイリスト作成してCD-Rに書き込んで送付する。制作会社でジャケットデータ、CD-Rマスターの確認が完了すると制作開始となり、3週間程度で完成したCDが送られてくる。

ストリーミング配信のためにCD Babyに登録

CDは制作したが、やはり誰にでも聴いてもらうにはストリーミング配信が必須。これも内外の仲介会社を調べてみて、僕のように収益がほとんど見込めないケースでは、年間サブスクリプションが必要なサービスは無理で、アルバム単位で一度の支払いで完結するCD Babyを選択した。費用も$10(約1600円前後)で手頃。UPCコードもここで取得した。

CD Babyでの手続きは全て英語だが、そんなに難しいものではない。少し手間取ったのは米国外の居住者としての税金フォームの扱い。税金の個人コードみたいなものが必要なるが、日本の税務署のサイトで調べたらマイナンバーカードの番号がそれに該当するものだった。

世界各国、全部で30箇所以上のストリーミング配信先から選択でき、中にはインドや東南アジア独自のサービスまで含まれている。ここでは、メジャーな Apple MusicやSpotify、Amazon Musicなどを選択した。後は実際の音源とジャケット画像をアップロードして必要事項を入力したら、配信先の審査を待つことになる。

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「Ear Has No Lid /1」として収録する3曲を決めたのが6月中旬だったから、制作や販売に関する諸々の事務的な作業に1ヶ月以上かかったことになる。この経験からすると、次作のときは、マスターのアップから8週間位はみた方が余裕をもって対応できるのではないだろうか。

次回は、「Ear Has No Lid /1」に収録した楽曲の制作過程について書こうと思う。

shigeohonda.hatenablog.com

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