僕もソフトウエアシンセサイザーやサンプラーで音楽を制作しているが、テクノロジーが音楽に与える影響は大きく、特にクリエイティブな可能性を広げたことで、一人でも多彩な表現が可能となったことは大きいように思う。加えて、可搬性の高いタブレットやラップトップPCとルーパーの組み合わせは、ライブパフォーマンスのありようも変えていて、ソロパフォーマンスでも、独自の音楽的な表現につながっている。
そうしたテクノロジーは、女性アーティストにとってメリットが大きいようで、個性的な音楽を聴かせてくれる。
Miët
フランス人アーティストでベースを弾きながら歌い、ルーバーでサウンドを重ねていく。結構ハードなところもあり、緩急に富んでいる。これは2023年のライブ映像。このRock In Bourlonというフェスは他も一風変わったアーティストが多かった。
Lili Refrain
ローマ在住のイタリア人アーティスト。野生味溢れるメイクからも推測できる通り、ダークで土着っぽいドラムのリズムに地唄のようなメロディが重なっていく。ライブの演奏はかなり緻密で、ドラマがあり、曲の構成がこうしたルーパー中心の演奏に最適化されている。
実は歌と並んでギターの演奏が説得力があって、聴かせるものがある。ステージ脇のバスタムを叩くときのポーズは日本の和太鼓の動きそのもの。
Silvia Cignoli
この人もイタリア人。元は現代音楽を得意とするクラシックギタリストで、それをベースにしながら、エレクトリック、エクスペリメンタルの領域へと活動を広げている。このビデオをみると昔のCASIOの廉価なサンプリングキーボードがあったりして、ロウファイなところもありつつ、実験的でスペーシーなサウンドスケープを作り出している。
これは、イタリア文化会館の招聘で京都で行ったライブ映像。何曲かが続けて演奏されている。やはりギターによる空間の表現が巧み。会議室ような場所なので、照明も演出も何もないのが残念だが、素晴らしいパフォーマンスで聴きごたえがある。
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近年、パフォーマーだけでなく、現代音楽の作曲家でも女性の活躍が増えている。まだ完全にではないかもしれないが、ジェンダーの壁が取り払われれ、より豊かな文化がもたらされることが、より大切になってきているように感じている。