最近よく聴いているKali Maloneの新しいアルバムの話。
あるアーティストの作品を聴き続けていて、ある時、それとは離れた存在と思って聴いていたアーティストとコラボレーションで結びつくことがある。同じ人間が聴いているわけだから、何らのベクトルが似ていることは確かだが、現代音楽とドローンメタルといったジャンル分けがもはや形式的なものにしか過ぎない。
Kali Maloneは、2019年にリリースされたパイプオルガンの作品「The Sacrificial Code」で、僕の中では、ある特別な存在のアーティスト。同じようにドローンメタルのSunn O)))のStephen O'Malleyも、そうした存在だが、2022年にリリースされたCDだと3枚組の大作「Does Spring Hide Its Joy」では、Kali Maloneのサインウェーブオシレータ、Stephen O'Malleyのエレクトックギター、そしてチェロ奏者の3人で壮大なドローン作品を生み出した。その作品のライブの模様はYouTubeで見ることができる。
そして、今年(2024年)リリースされたのが、この「A Life Long (一生涯)」。前作とは違い、3分から10分程度の作品が12曲収められている。今回はカウンターテノールや女声の合唱曲、ブラスアンサンブルの演奏曲、そしてパイプオルガンのソロなど表現も多彩、今回も数曲でStephen O'Malleyが参加している。
短い曲が多いせいか聴きやすいアルバムになっているが、個々の作品の質は非常に高く、一音一音が精緻に構成されていている。響きは自然でありながら、感情や成り行きで作られたとことが一切なく、耳には優しい響きのようでありながら厳しい音楽。アルバムをリリースする度に、音楽的な成長を感じさせる。
美的な音楽でありつつ、単に美しいだけではすまされない、根源的な人の存在や感情を暴き出すようなところを感じる。