Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

学芸大学「サテライト」 - 小さなお店はいい - Ornett Coleman, NewYork Dolls, Janis Joplin, Television etc.

これも久しぶりに学芸大の「サテライト」に出かけてみた。気分が盛り上がらなかった関内のDisku Unionとは違い、個人でやっている小さなお店ならではよさを実感。店主と売っているものとの結びつきがあるというか、CDやレコードが売り物としてただ棚に放り出されているのとは違うところがあるように感じる。ただ、小さなお店が全てそうかというと、そうでもないところもあり、それは店主のビジネススタンスだったり、客とお店のとの相性のようなものかもしれない。

いろいろと9枚も買ってしまった。

Iron Butterfly / Live (1970)

ヘヴィサイケ、「In-A-Gadda-Da-Vida」 のヒットで有名なIron Butterflyのライブ盤。「In-A-Gadda-Da-Vida」 ももちろんB面いっぱいに入っている。実は、Iron Butterflyのアルバムを自分で買うのは初めて。なにか有名過ぎて手が遠のいていた。Apple Musicで別のライブを聴いた時に、このグループはライブがいい、ということに気が付いていたこともある。オンラインショップで敢えて選ばながい、目の前にあったから買ってしまう類のもの。

Big Brother & Holding Company featuring Janis Joplin (1967)

これは、Janisがソロになる前にメンバーだったBig Brother & Holding Companyのファーストアルバムが、Janisの死後、ジャケットを変えて日本盤でリリースされたもの。中身は米コロンビア盤と同じ。ソロになってからの情念的なブルースフィーリングはまだ希薄で、全体的に軽いアシッド感のあるサンフランシスコロックにまとまっているが、それがこのアルバムの魅力になっている。時代の空気が詰まった個人的には好きなアルバム。ジャケットのJanisのポートレイト写真が良くて購入。

 Janisにまだ幼い表情が残る当時のスタジオライブ。

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NewYork Dolls (1973)

アメリカングラムロック、プロトパンクのNewYork Dolls のファーストアルバム。プロデューサーはTodd Rundgren。当時の危険で退廃的なNewYorkをそのまま具現化したようなグループでRolling Stoneの猥雑なロックンロールにStooges的なワイルドさが加味されている。レコーディング中もメンバーはステージと同じメイクと煌びやかな衣装だったのは有名な話で、それが荒削りなライブっぽいサウンドの仕上がりにつながっている。改めて聴くと、数年後のNewYorkパンクに与えた影響の大きさを感じる。これは近年の再発でレコード盤が赤色だったので購入。黒だったら買っていない。キッチュな赤色のNewYork Dollsのレコードは持っていないといけない気がしたから。

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Ornett Colman / Town Hall 1962 (1965)

1961年に「Free Jazz」をリリースした彼の翌年のコンサート音源。どうも紆余曲折があったようで、録音から数年を経た1965年にESPレーベルからリリースされたもの。アルバムの存在は知っていたが、聴くのは初めて。バリバリのフリージャズではなく、前衛ながら抑制の効いた、作曲された部分の多い演奏。自身のトリオでの2曲の演奏の後は弦楽四重奏団による作品が演奏される。新ウィーン楽派風の作品。B面は再び自身のユニットによる20分に及ぶ演奏。録音も良いし、内容も充実しているアルバム。もっと早く聴けばよかった。

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Luke Sanger / Languid Gongue (2021)

英国のモジュラーシンセイストであるLuke Sangerの 2021年の作品。空間的、点描的な音空間で耳障りなところは一切ないナチュラリストの音楽。少し前に紹介したDavid Edrenに近いような気もする。短い小品が多いところも共通しているし。モジュラーシンセはブームになっているのかもしれない。以前のようにいかにもシンセというサウンドでなく、アーティストによって表現が多様になってきていて、より広く聴かれるようになってきているのも、よい傾向と思うが、どうだろう。

ここからはCDになる。

Daniel Lanois / Bellandona (2005)

このCDのことは全く知らなてく、B.J. Thomas風のスライドギターの音楽がお店で再生されていたのが気になって購入したもの。Daniel Lanoisは、Brian EnoとともにU2などメジャーアーティストのアルバムのプロデューサーでもあったらしい。本作は彼のスライドギターの演奏を中心にしたアンビエントな作品を集めたもの。Enoのアンビエントシリーズにも参加していたようだが、Enoと比べるともっと生っぽい温度感がある。

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James McVinnie / Cycles (2013)

このCDも初めて聴くもの。James McVinnie(1983-)は、英国のパイプオルガン奏者で作曲家。 本作は彼の自作だけを収めたもので、バリトンや弦楽アンサンブルも入るミニマル、エクスペリメンタルなネオクラシカルミュージック。厳しいものではないが、テンションのある演奏で意外な発見だった。彼は他に、バッハとフィリップグラスの作品を集めたアルバムもリリースしており、Apple Musicで聴いたがこれもよかった。フィリップグラスの初期のオルガン曲は、少し前のめりような高いテンションがないとつまらないものになってしまうが、彼はそうした音楽の本質を掴んだ演奏で、フィリップグラス本人以外では、最高の演奏のように思う。

Television / Marquee Moon(1977 / 2003)

説明不要のTelevisonのファースト。もう一度レコードを買うにはプレミア価格になり過ぎ。これも何度もCD化されているが、2003年のリマスタリング盤があったので購入。CDになってから、「Marquee Moon」はフェードアウトでなく、最後まで収録されるようになった。改めて聴くと、あまりにも文学的なアルバム。ボーナストラックのアウトテイクが良かったが、本編に含めるには演奏が荒削りすぎたのだろう。ファーストアルバムにして、終わりの始まりのよう。

Brian Eno / LUX (2012)

Enoが各地の美術館やアートギャラリーでのインスタレーションに使用した4曲を数録したアルバム。傾向としては1985年の「Thursday Afternoon」に近い内容で、昔からのファンには馴染みの深い音調のEnoらしい「アンビエント」で、懐かしい作品ですらある。CDジャケットサイズながら、4枚のイラストが付属していた。

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何枚も買ってお腹いっぱいなのは、お店での買い物ならでは。普段はあまり考えていないが、目の前に出てくると買ってしまうのは、インターネット以前の買い方はそうだった。Disk Unionだって、インターネットの前は、もっとお店にいろんなものが雑多にあった。セグメント化やシステム化が進んだことが、僕にはつまらなくなった原因かもしれない。


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