Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Godspeed You! Black Emperor / Yanqui U.X.O. - 困難な時代に光を灯す音楽

最近、このGodspeed You! Black Emperor の「Yanqui U.X.O.」のアナログ盤2枚組を入手したのでその話。僕が2000年過ぎに最初にポストロックというジャンルを意識するきっかけは、このGodspeed You! Black Emperorという名前のカナダのグループだった。

日本の暴走族グループのドキュメンタリーから取られた変わったバンド名に興味を持って、何の予備知識もなく聴いたのは、「Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven(お前の痩せた握り拳を天国へのアンテナへのようにつき上げろ)」という、これも変わったタイトルのアルバム。音楽は、意味ありげな音声と静かな音から始まり、ノスタルジックなメロディラインが執拗に反復されて破滅的なクライマックスに向かって突進していく。それは、Velvet Underground の「Sister Ray」やFaustのファーストと似ているようで、もっとラジカルなところがある音楽で、強く揺さぶられるものがあった。

この「Yanqui U.X.O.」は2002年にリリースされた彼らの3枚目で、本作リリース後に10年近く活動停止状態となる。タイトルのU.X.Oは不発弾のことで、つまり「ヤンキーの不発弾」を意味する。彼らは思想的には、反帝国主義、反資本主義、反戦主義、無政府主義者(アナーキスト)で、ジャケットの裏面には、主要な音楽産業がいかに米国の兵器産業に繋がっているか示すチャートが描かれている。

先日記事に書いたInternational Harvesterもそうだが、政治的な主張があるグループの音楽は、単純な繰り返しが大きな音楽の大きなうねりとなっていく共通点があるのかもしれない。時代が後になるほど先鋭化する傾向があるとしても。

Godspeed You! Black Emperor自身も、10年の休止期間を経て、2012年に「'Allelujah! Don't Bend! Ascend! 」で再始動したときは、このアルバムにあるようなメランコリックな部分は後退し、全体がもっとソリッドな演奏に変化している。

僕は彼らの政治的な心情に100%共感するのものではないが、それでも彼らが困難な時代に光を灯して、世界の片隅を照らそうしていることは確かだ。


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