Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Arushi Jain, Six Organs of Admittance, William Parker, Laraaji Alan Vega - 最近、AppleMusicで聴いているもの

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Apple Musicがロスレス配信になってから仕事中によく鳴らしている。仕事をしながらなのでそんなに真剣に聴いているわけではないが、それでもその音にはっとするような瞬間がある。最近リリースされたものばかりではないが、そんな中からいくつかを。

Arushi Jain / Under the Lilac Sky

Arushi Jainはインド系で米国在住のモジュラー・シンセサイザー奏者。自らのインド音楽のルーツを再解釈しているということだが、そんなに極端にラーガっぽいわけではない。テリー・ライリーと比較する記事もあるがそれほど複雑で深いものではく、むしろその音楽の単純さや明るさが魅力となっている。Suzanne Cianiをはじめモジュラー・シンセサイザーの音楽は音のレイヤーが多重的なものが多いが、それとは違う独自の方向性。非常に穏やかで彼女のボーカルが入っているトラックは、以前紹介したJulianna Barwickに近いものがある。

Six Organs of Admittance / The Veiled Sea

「ディスカホリックによる音楽夜話 」で紹介されたアルバム。僕は初めて耳にしたけど 「Six Organs of Admittance」は1998年から続いている米国人ギタリスト Ben Chasnyのプロジェクト名。アンビエントドローンな曲もあるが、エレクトリックギターはアグレッシブでアバンギャルド、Sonny Sharlockを彷彿とさせるところもある。9分を超える『Last Starion, Vieled Sea(最後の駅、ベールで覆われた見えない海)』の大声で嗚咽するような痙攣的なギターから最後の独Faustのカバー『J'ai Mal Aux Dents(歯が痛い)』の流れがこのアルバムのハイライト。このアルバムを知ったのは大きな収穫。

hiroshi-gong.hatenablog.com

William Parker / Mayan Space Station

久々のジャズロックの快作。William Parkerは1952年生まれのフリージャズベーシスト。この『Mayan Space Station(マヤ宇宙ステーション)』は、彼のウッドベースがぶんぶんうなり、Gerald CleaverのTonny Williamsばりのドラム、女性エクスペリメンタル、フリージャズギタリストのAva Mendozaの豪快なプレイを堪能できる。アナログ盤もあるのだが、残念ながら長尺の2曲がカットされている。LP2枚組にしても全曲入れて欲しかった。

同一メンバーでのライブ映像もいい。


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Laraaji / Flow Goes The Universe

Laraajiは1943年生まれ米国人でチターやマリンバ、キーボードにエフェクト処理をして演奏する。彼が公園で民族楽器をエフェクターを通して演奏しているのを通りがかった Brian Eno
がスカウトしてEnoのアンビエントシリーズでデビューするという経歴を持つ。多作家で正直アルバムによってかなり雰囲気が変わるのだが、この1992年のアルバム「Flow Goes The Universe」はSylvian&FrippのメンバーでもあったMichael Brookがプロデュースしており、Laraajiの民族音楽的な要素とアンビエント的な要素がうまく洗練されてブレンドされている。瞑想的なところもあるがヨガのBGMにされそうなニューエイジでなくシリアスなところがある。最近アナログでの再発売もあったようだ。

Alan Vega / After Dark

深夜にこれを聴くことが最近多い。Alan Vega(1938-2016)は、ニューヨークのエレクトロパンクユニット、Suicideのボーカリストとして現れた。ボーカリストにはその人の生き様がそのまま声になって、「あ〜っ」とか「うっ」と声を発しただけで空間を変容する人がいるが、Alan Vegaはまさしくそのタイプ。一度彼の声を聴いたら忘れることがない。昔、Iggy Pop & the Stoogiesのアルバムの邦題に『淫力魔神』というのがあったが、Alan Vegaこそその名称に相応しいかもしれない。
Alan Vegaは、ある意味、ロックンロール、ロカビリースタイルの正当な継承者でありながら、同時に絶えずそれから逸脱しようと試み続けることで異化作用を生み出す触媒であり続けた。この『After Dark』は、亡くなる前年の2015年に録音されたもので、一晩のセッションで収録されたと言われている。ギター、ベース、ドラムにキーボードの標準的なバンドセット。ここでも「あの声」は健在。演奏も楽曲もミッドテンポからスローで、全体にリバーブが効いていて凄みがあり、キーボードやシンセサイザーの扱いはアブスラクトなドアーズ的で緊張感を与えている。冥府のロックンロール。これはぜひアナログ盤で聴きたい。

Under the Lilac Sky [ARTPL-157]

Under the Lilac Sky [ARTPL-157]

  • アーティスト:Arushi Jain
  • PLANCHA / Leaving Records
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After Dark

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