Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

LOW / HEY WHAT - 黙示録的な讃美歌 - 2021年ベストアルバム

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『Low』は、1993年に米国ミネソタ州で、ギターとボーカルのAlan Sparhawkとドラムとボーカルの Mimi Parkerの二人で結成されたグループ。二人にベースが加わり3人のミニマル編成で音楽は非常にゆったりとした素朴なもので、所謂ローファイの代表的なグループだった。

僕の印象ではSub Popレーベルに変わった7枚目の『The Great Destroyer』から少し方向が変わって、通常のギター、ベース、ドラムという一般的なアプローチからよりラジカルでアブストラクトな要素を含むようになり、BJ Burtonがプロデューサーとなった最近は、さらにその方向性が深化している。

HEY WHAT - ねぇ、なんなの?

Lowのファンなのに、実は本作『HEY WHAT』がリリースされていることに全然気がついていなくて、またしてもhiroshi-gongさんのブログで知ることとなった。

hiroshi-gong.hatenablog.com

本作は2018年リリースの『Double Negative』に続く13枚目のアルバム。数年に1枚はアルバムをリリースする高いクリエティビティを維持しづけている。

全10曲。サウンド的には『Double Negative』の実験性をさらに推し進めていて、二人のハーモニー、特にMimi Parkerの澄んだ歌声は宗教的ですらある。そこにカットアップのように歪んだ音がパズルのように埋め込まれ、見えない音のステンドグラスが現れる。

去ることの結末は
分かっているとは言えないけど
止まることより残酷なもの
それでも
白い馬が連れて行ってくれるはず

と歌う『White Horses』で始まる。『Hey』の出だしはこんな歌詞。

ねえ、
私たちがヘビィな感じでいるのに気がつく前 ミシガンと湖は通り過ぎなかった
ねえ、
私は絶対抱え込むことはできないし
戻って日陰の止めた車の中で泣くだけ
ねえ、
それをあげるのにどれくらいかかるの
他のやり方はしないのに
ねえ、
もっと話をして、もっとお祈りするように頼んで
多分、それがあなたの最後の言葉になるから

レコードだと、この曲の最後のMimi Parkerのコーラスがエンドレスカッティングされている。

アルバムは最後は『The Price You Pay (It Must Be Wearing Off)』。

痛みを忘れるために何が欲しいか知ってるわ
でもどのみち、あなたにふさわしいものじゃない
自分の言葉で行こうとしているけど
それはばかげたことなの
ばかげたことなのはわかってる
それは擦り切れて
もう終わってしまったこと
もうないの

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LOWのアルバムは出るたびに、自分にとってのベストアルバムだけど、『HEY WHAT』もそう。2021年のベストはこのアルバム。

46分間の黙示録的な讃美歌。

HEY WHAT

HEY WHAT

  • アーティスト:LOW
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