(タイトル画像はTake Magazineのサイトから引用)
これは hiroshi-gongさんのブログで紹介されていたグループの新しいアルバム。
このMV&EEのアルバムは度々紹介されていたけれど、今回のアルバムはhiroshi-gongさんの言う通り傑作。僕的には、「コレハイッタイナンナンダ」とう異形の傑作。
束縛されない自由な音楽
まず聴いて驚くのは、とても自由であること。何年も音楽を作り続けていくと、ある時点でからどうしても特定のスタイルやジャンルに囚われしまう。それはアーティスト自身が自分たちの境界線を決めることで作品に統一感が出るしファンの期待も裏切らないことにつながるが、予定調和的、保守的な 世界に埋没する危険がある。
しかし彼はもう20年以上活動してるのに、あらゆる束縛から自由であることに徹している。それは、米国東海岸のカナダとの国境にあるニューイングランド州バーモントを拠点とし、都会から離れた環境もこの2人に影響を与えているのかもしれない。
基本は男女二人のフリーフォークユニットで、過去のライブ映像を見ると、男性がギターを弾き、女性はスティールギターでアトモスフェアをつりだし、そこにちょっとけだるいボーカルがのっていく。その二人にバンドが加わると、異形化のベクトルがさらに拡大されていく。
これを聴いていると、時代は全く違うが1970年代のフランスのブリジット・フォンテーヌとアレスキーを思い出す。この男女二人のユニットは、アートアンサンブルオブシカゴがバックをした「ラジオのように」ばかりが注目されたせいでジャズの文脈で語られることが多いが、それ以降のアルバムは、二人を中心にしたフリーフォーク、アバンギャルドの先駆者だった。MV&EEはその系譜にあるようにも感じる。
緑の方舟は楽園に向かうのか
さて、この『GREEN ARK(緑の方舟 - ノアの方舟が由来か?)』とタイトルされたアルバムは、完全なヒッピー&ラブジェネレーション サウンドに包まれている。
オープニングの『FREE RANGE』の冒頭はまるでギリ・スミス&ゴングのスペースウィスパーサウンド、そこからリズムとバンドが加わるとアモンデュール的な呪術的な世界。『DANCIN’』は、スペースディスコ ミュージック、『LOVE FROM OUTER SPACE』は、タイトル通り楽園的なラブサイケデリックに昇華されている。
正直、2023年になって新譜としてこうした音楽が存在するとは思わなかった。それは「墓場から蘇生されたサイケデック」ではなく、新しい今の音楽としてある。MV&EEの中に過去の音楽の変遷が圧縮されてあって、それを自在に取り出しているかのよう。またそれが、自然に湧き出すようなスポンティニアスなので、さらに音楽としての魅力を高めている。