Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Manuel Göttsching & Michael Hoenig / Early Water - 水の永遠の記憶

このManuel Göttsching と Michael Hoenigの二人によるアルバムは1976年の録音で1995年にCDで発掘リリースされて以来ずっとCDで聴いていた。数年前からCDが不良で音飛びするようになってしまって残念に思ってたところ、今年になってアナログでの再リリースとなり珍しく予約して手に入れた。

初期ジャーマンロックの重要バンドAsh Ra Temle、そしてエレクトロミュージックの先駆者だった Ashra を率いていたManuel Göttsching(1952 - 2022)は昨年亡くなってしまったが、ギタリストであり、シンセサイザー、エレクトロニクスに卓越した才能を発揮した音楽家だった。『E2-E4 』はエレクトロミュージックの古典となっている。

もう一人のMichael Hoenigは、これもベルリンのグループ Agitation Free のキーボード奏者で、一時期 Tangerine Dreamにも加わっていた、彼は1976年に『Departure from the Northern Wasteland 』という、空間的でイマジナティブな、ある種、エレクトロミュージックの理想郷のようなアルバムをリリースしている。ロスアンゼルスに移住後に映画のサントラなどの商業音楽で成功するのも頷ける。

このアルバムのカバーでManuel Göttschingが本作の経緯について説明している。1976年に『New Age On Earth』のAshraとしてツアーの予定があり、そのサポートメンバーをMichael Hoenigに依頼して二人でリハーサルを重ねていたときにたまたま録音されていたものらしい。肝心のツアーが中止となり、その録音テープも忘れられていたが、Manuel Göttschingの要望で録音はリマスタリングされて、1995年にCDでリリースされることになる。

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音楽的には、Manuel GöttschingのTerry Riley, Steve Reichのミニマルミュージックへの傾倒とMichael Hoeningのアトモスフェリックなシーケンスサウンドが融合し、二人の個性がバランスよく発揮されている。かなり長いインプロビゼーションを含む演奏から50分程度を抜き出したとものと思われ、最初のチャイムのような金属音のアクセントが曲を導き、後半では、Göttschingのギターソロが空間を漂うという展開。聴き始めるとあっという間の時間のようにも感じる。年代のTangerine Dreamのようなアブストラクトなものと、より構成された『E2-E4 』の中間に位置するような作品。

英語には、品質が非常高いことを意味する「First Water」という表現があるが、本作のタイトルの「Early Water」は、「First」ほどではないが、いいものだという自信を示しているんだろうか? 


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