Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

トリビュートバンドが単なるコピーを超えるとき

たまにYouTubeを見ていて、アーティストの過去のライブや今のツアーの映像を見たりするのもいいが、個人的にはトリビュートバンド(少し前まではコピーバンドと言われていたが)を見るのが好きだったりする。スクールオブロックのようなアマチュアのものであれ、トリビュートバンドとしてツアーするプロのトリビュートバンドであれ、その演奏に惹かれるものがある。

誰かの楽曲をコピーして演奏するというのは(演ったことのある人ならわかると思うが)、その音楽、楽曲に近づく一番いい方法で、演奏したり歌ったりすると歌詞への理解がより深まったり、その曲が自分の中の感情と結びついていくのを感じる。それは別にバンドではなく、下手なりにギター1本でやっても感じられる。なのでトリビュートバンドを見ることは、彼等がどんな風にその音楽を聴いて何を感じたのかが伝わってくるのを体験することにつながっている。

Joy Division Undercover - 物語の続きを聴かせる

『Joy Division Undercover』は、名前の通りJoy Divisionのトリビュートバンド。Joy Divisionのようにボーカルの自殺という悲劇で終わりを遂げたグループのカバーバンドは難しい。あまりにもオリジナルのグループの印象が強烈で、なにをやっても偽物に見えてしまう。実際、他のJoy Divisionのトリビュートバンドからはそうした難しさを感じてしまう。

それは、自殺で止まってしまった時間の音楽の再現なのか、それとも、もしイアン・カーティスの物語が続いていたらを伝えるものの違い。Joy Division Undercoverの演奏を見ていると、Joy Divisionのメンバーがそのままで40歳を超えて続いていたらこんな風なんだろうか、と感じさせ、今につながっている時間の中にいることがわかる。

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Ash Ra Tempel - Amboss - 40年以上の時間を超えて

もうひとつは、この2015年1月のTokyo Psych FestでのAsh Ra Tempelのカバーの演奏。1971年にリリースされたファーストアルムのA面を占める『Amboss』を再演している。ベルリンのアンダーグラウンドグループだったAsh Ra Tempelの最初の3枚のアルバムは、ギターのManuel Göttsching曰く「ンプロビゼーションが大半を占めるドキュメンタリーのようなアルバム」で、振幅の大きい混沌した音楽にはその時代の空気が凝縮されている。

演奏しているのは、Acid Mothers Templeのギターを含む4人。

Guitar - Bungo Yokoyama from Deigen 泥幻
Guitar - Tabata Mitsuru from Acid Mothers Temple
Bass - Ryo Kiriakehata from THE 天国畑 JAPON
Drum - Shoko Yoshida from Tolchock

ここでの演奏の目的は、寸分違わず再演するのではなく、その音楽の空気感を今の時間に解き放ってみることにある。オリジナル超える演奏時間でそれは見事に達成されているように感じる。単にメンバーのこうした音楽への憧憬だけでなく、40年以上の時間を経ても、まだ聴き手をゆさぶるエネルギーに溢れている。

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