これも最近YouTubeでよく見ているものの話。ひとつのことをずっと追求し続ける、やり続けるというのは、簡単なようでいて難しい。好きなことであってもそれを続けるていくには、ある種の胆力のようなものが求められる。普通は、どこかでそれを諦めたり、やめてしまったりするが、中には脇目もふらずに自分が信じる世界に向かい続けることができる人がいる。このSoaringtortoise(飛翔する亀の意か?)としてビデオのアップロード続けるDIY音楽家はそうした幸福な人のひとり。
ビデオを見てもらうとわかるが、古いアンプやミキサー、自作や改造楽器が散乱する部屋でドローンというかアンビエント、アバンギャルドというか、独自の音楽を作り続けている。
最新作はこのテリーライリー風の音楽。古いカシオトーンと思われるチープなキーボードのキーを9V乾電池を重しにして通奏低音のドローンを生み出し、電子ピアノとピアニカのメロディが重なっていく。
彼の特徴的な自作機材の一つが、モーターで回転する卓上レスリースピーカー。回転スピードを変えることで独特のトレモロ効果を得ていて、それを聴いているとすごくサイケデリックな体験のように思えてくる。
Pink Floyd の「Wish You Were Here」をチープなターンテーブルにのせてリアルタイムでサンプリングしながらの演奏。ここではポータルブルカセットを改造したテープループが活躍している。
CANやAsha Templeを想起させるジャーマンロック風の演奏。この人の演奏を見ていると自分のDIYの機材を知り尽くしていることがよく分かる。ここでもエレクトーンのようなキーボードで9V乾電池のドローンが聴ける。
民族音楽のオムニバス盤をサンプリングしながらの演奏。ここでもキーボードの奥にあるカセットループに注目。電圧で回転を調整してのスピードが調整できるようになっているようだ。音楽が変容していく様は、説得力がある。
カセットプレーヤーを改造したテープループを全面的に使った演奏。恐ろしくローファイでシンプルなのだが、くらくらするような音楽。サイケデリックな夢の風景。
この人の手にかかると、おもちゃのピアノやウクレレという楽天的な楽器も別の意味を持たされる。スライドギターを聴いていると、それはタルコフスキー的なノスタルジアかもしれない。
このビデオを見ていると、僕も世界の片隅で自分の世界に籠って作品を作り続ける、こんな風になりたいという憧れを抱く。