SHUREのカートリッジというと、70年代のMMカートリッジのリファレンス的な存在で、ベストセラーだった V15 Type IIIの人気は今でも高い。当時約3万円の定価で実売は2万円円前後だったが、近年のアナログブームや往年のオーディオファンにも高い人気を反映しているのだろう、今では状態の良い中古だと当時の定価を超える価格にまで高騰している。ただそこまで高くなってしまうと、過剰なような気がする。
手頃なSHURE M75ED Type2という選択
個人的には、高騰したV15 Type III でなく1979年頃に販売されていたM75ED/B/G Type2シリーズというカートリッジでも充分楽しめるのではないかと思っている。ランク的にはM44Gの上位でV15 Type IIIの下位という位置付け。70年代末ごろにヤマハ製のターンテーブルにOEM供給されてこともあり、中古市場で1万円前後のリーズナブルな価格で入手できる。基本的にボディは共通で針の形状で次のモデルに分かれている。
M75ED Type2 楕円針 針圧 0.75g - 1.5g
M75B Type2 丸針 針圧 0.75g - 1.5g
M75G Type2 丸針 針圧 1.5g - 3.0g
僕が中古サイトのハイファイ堂でで入手したのは M75ED Type2。の第一印象は、M44GやV15 Type IIIと比較すると、ややこじんまりするが、双方のいいとこ取りというか、そこまでクセが強かったりすることなく、バランスも良く、パワー感もあり、ジャンルを問わずレコードを聴ける手頃でいいカートリッジ。JICOで各種交換針も販売されており、楕円針、丸針を差し替えることで一つのカートリッジで音色を変えて楽しめる。
楕円針、丸針、SHURE純正で聴き比べ
針圧については基本的にSHUREのカートリッジに共通で、これもハイコンプライアンス型なので、あまり針圧を大きくしないほうがサウンドは良い。SHUREの設計上の推奨針圧は1g。よく適正針圧の重いほうギリギリまで針圧上げて使っている方がいるが、アームが適切にセッティングされているのであれば1g - 1.1g程度が本来のSHUREサウンドが堪能できる。
JICO 楕円針(N-75ED/II)4,000円(税別)
日本製のJICOの交換針は作りがいろんな意味で「マジメ」。このM75ED Type2用の楕円針でも、SHUREらしさはありながら押しはそれほど強くなく、解像度が上がり、整理されて見通しがよく演奏の細部まで伝ってくる。 ガツンというSHUREサウンドを期待するリスナーによっては、もの足りないと感じることもあるかもしれないが、きめの細かいワイドレンジで、弦楽四重奏やオーケストラなどクラシック全般、フュージョン、女性ボーカル、プログレッシブロックなどをきれいに聴かせてくれて、オールマイティに使える。
JICO 丸針(N-75EB/II)3,000円(税別)
JICOでも丸針になると個性が出てくる。楕円針と比べるとグッと凝縮されたナローレンジになるが、鳴りっぷりがよく、押しが強い。60年代のサイケデリックロックやJimi Hendrix, Creamなんかもいいし、CCRやGrand Funk Railroadのようなアメリカンロックのパワー感にも合っている。1950年代の古い録音のクラッシックもいける。あと70年代のライブブートレグのレコードをブートレグらしく聴かせてくれる。実は結構Pink Floyd, Doors, Jimi Hendrixのアナログブート盤を持っているので、この丸針のサウンドは重宝している。
SHURE純正針(カートリッジ付属・楕円針)
カートリッジ付属の純正針は、当然SHUREならではのサウンド。音楽の細部へのこだわりよりも、音楽のエネルギーやダイナミズムを前面に出してくる。ただそれでもM44Gと比べると、ある範囲のなかで整理されているので、どのジャンルでも破綻しない。チカラ強い中にもジェントルな表情があるところが、M75x Type2シリーズの魅力なんだろう。ロックやジャズ、フュージョンを爽快に聴けるので、中古でも程度の良い純正針が付属しているなら、大事に針先クリーニングして楽しみたいところ。
この他、JICOにはSAS針というハイエンドの高音質針があるが、これは入手したことがないので未聴。まあ、そのうち使ってみたいとは思っているが、交換針に1万円以上払うなら、もっと買いたいレコードがあるので今はそっちが優先かな。
最近は、このM75ED Type2でレコードを聴くことが一番多いかもしれない。レコードによってカートリッジを交換しなくても針先だけ交換して音質を変えることができるのは便利だ。