サンフランシスコ ロックを象徴するJefferson Airplane のセカンドアルバム 「Surrealistic Pillow(シュールな枕)」は、カリフォルニアのヒッピームーブメントのピークとなる 「Summer Of Love」の年、1967年2月にリリースされた。また1967年は、Beatles の「Sgt. Pepper’s」を始め、Jimi HendrixやDoors、Janisのデビューアルバムなど、ロックの主要アルバムがリリースされた年でもある。
1967年リリースの主なアルバム
- The Beatles / Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band - Magical Mystery Tour
- Jimi Hendrix / Are you Experienced - Aixs : Bold as Love
- The Doors / The Doors - Strange Days
- Janis Joplin / Big Bother and the Holding Company
- The Grateful Dead / Grateful Dead
- The Cream / Disraeli Gears
- Pink Floyd / Pipers at the Gates of Dawn
- The Yardbirds / Little Games
- The Velvet Underground / The Velvet Underground & Nico
こうしてリストにしてみると西海岸ではラブ&ピースのヒッピームーブメント、フラワーパワー大全開の時に、対岸のニューヨークのThe Velvet Undergroundはそれらを否定するかのように「ヘロイン」「黒い天使の死の歌」「毛皮のビーナス」を演っていたわけで、なんともすごい時代。
Surrealistic Pillow - Grace Slickの加入によりエンジン全開となった
このセカンドアルバムからから女性リードボーカルにGrace Slickが加入。加入前、彼女は夫だったドラマー、その弟のギターを含む Great Scietyというグループをやっていて(このグループもなかなかいい)、Jefferson Airplane のサポートアクトなどを務めていたが、 Jefferson Airplaneの初代女性ボーカルが脱退したのでリクルートされて加入。このアルバムが彼女のメジャーデビューでもある。このアルバムから大ヒット曲となる「Somebody to Love」や「White Rabbit」は、彼女が旧Great Sciety時代の曲を持ち込んだもの。Jefferson Airplaneは彼女を得てから、文字通りエンジン全開で飛行を続けることになる。
この「Surrealistic Pillow」 は10代の頃から好きなアルバムの1枚で、僕にとってGrace Slickは、米国のNo.1の女性シンガー(ちなみに英国No.1は Kate Bush)。パワーだけでなく説得力がある歌唱はいつ聴いても、その音楽の内容を活き活きと伝えてくれる。
米国初期盤を偶然に入手、バキュームクリーナーで洗浄
「Surrealistic Pillow」は人気あるアルバムでオリジナルは最近見なくなったが、少し前にいつも行くゲッコーレコードの棚の奥をガサガサ探していたら、ジャケットはかなり傷んでいるものの、この米国初期盤(初回レコード番号)盤を見つけた。
なんと言っても50年以上前のレコードだし、米国盤なのでラフな扱いがされていて、盤面に擦り傷も多い。レーベル面多数の筋後はこのアルバムが何度も何度も聴かれたことを物語っている。ジャケットもレコードもコンディションが良いものもいいが、ジャケットに名前が書いてあったり、聴きこまれた雰囲気のある中古盤は、そのレコードが僕の目の前に現れるまでどこを旅してきたのか想像をかきたてるところがあって、結構好きだったりする。それで、このレコードを買って帰って、アイコールのバキュームクリーナで二度洗浄をしてみた。
バキュームクリーニングの効果で、プツプツいうスクラッチノイズは多少あるものの、音は歪むことなく以前の輝きを取り戻した。こういうレコードは、SHURE M44Gカートリッジが時代的にもピッタリ合う。 冒頭のドラムのリバーブの響きから生々しい。音楽にグッと引き込まれていく。演奏しているメンバーのパッションが伝わってくるというか、あの1967年のサンフランシスコの空気がレコード盤の中に真空パックされて詰め込まれているかのようだ。この雰囲気はレコードでしか体験できない。このレコードで聴ける「Somebody To Love(邦題:あなただけを)」は格別のものがある。
2003年リマスターCDと聴き比べると
これまで普段聴いていたのは、この2003年のリマスターCD。これも決して悪くはないのだが、初期盤のレコードを聴いた後だと、マスターテープが劣化しているためか、リマスタリングの過程によるのかはわからないが、何かこう、音がベールを被っている感が否めない。全体としてボーカルに焦点を当てたリマスターのようにも感じるところもあり、ボーカルを中心に聴くにはいいのかもしれないが、全体として凡庸な印象は拭えない。
ただ、CDを聴くときは、CECのTL5 CDトランスポーターにATOLLのDAC2000という組み合わせのややソフトな音調なので、その影響もあるかもしれない。WADIAやSTUDERのようなややハードエッジなCDプレーヤだと違った印象になるかもしれないが。
番外編:4曲入りコンパクト盤
このアルバムを聴いてたら、こんなコンパクト盤を持っていたことを思い出した。昔はLPの値段が高いので、新譜が発売されると、そのアルバムから4曲を取り出したシングル盤サイズの一種のミニアルバムが日本独自で作られることがあった。LPが2,000円の時にこのコンパクト盤は600円。学生でも買える値段。
これを捨てずに持っていたのは、曲が好きだったこともあるが、Jefferson Airplaneというバンド名にふさわしいイラストとメンバーの写真をレイアウトしたカバーが好きだったから。学生の頃はこのジャケットを勉強机の近くの壁に貼っていたことを思い出す。
「Surrealistic Pillow」の初期盤を買ったことで、こんなことをしていた1日だった。