Thinking is The Form

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

SHURE V15 Type3 の交換針を変えて音質の違いを楽しむ

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以前、「SHURE M75ED カートリッジ - 針交換で音質を変えて楽しむ」という記事を書いたが、SHURE V15 Type3カートリッジを山本音響工芸のカーボンシェルに取り付けてから、がぜん好みのサウンドになってきたので、V15 Type3でも交換針の種類を変えてサウンドの違いを試してみることに。

SHURE V15 Type3とは

このSHURE V15 Type3 というカートリッジは1973年から1979年頃まで発売されていて、当時のSHUREのハイエンドカートリッジであっただけでなく、日本でもオーディオ雑誌のレビューでMC型のDL-103と並んで評価用のカートリッジに採用されるなど幅広い人気があり、当時のMM型の頂点にあったとも言える。よく売れただけであって、今でも中古市場で多く流通しているが、近年のアナログブームの影響か中古価格が上がってきているのが気になるところ。2万円代ならいいが、3万円を超えてくるとちょっと高い気がするな。

そのサウンドは、解像度も充分高く音抜けもよく、音楽的な表現力も十分ありジャンルを問わずオールマイティに使える。流石に70年代のオーディオファイルに人気があっただけのことはある。SHURE V15 Type3は、必ずと言っていいほど「ジャズやロック向け」と紹介されるが、M44Gのような強いアクセントがあるわけではない。

ただ気をつけたい点は負荷容量が400pFあるので、これを現在一般的な100pF程度の負荷容量で聴くと高域にアクセントがあるようになる。M44G、M75シリーズ、V15シリーズに共通だが、できれば負荷容量の切り替えができるフォノイコライザーを使いたい。僕はLuxmanのE-250を使っているが、これだと100pF/220pF/300pFの切り替えができる。本当は300pFでも足りないのだが、高域の強調感はずっと緩和されて本来のサウンドに近くなる。

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SHURE V15 Type IIIの種類と交換針

当時次の3種類が発売されていた。

  • SHURE V15 Type III - 楕円針(針圧 0.75g - 1.25g)
  • SHURE V15 Type III HE - 超楕円針(針圧 0.75g - 1.25g)
  • SHURE V15 Type G - 丸針(針圧 0.75g - 1.25g)

ボディ形状は同じなので、それぞれの交換針を付け替えて違ったサウンドを楽しむことはできる。JICOの交換針の場合、次の組み合わせになる(価格は2019/09/17現在のもの)。

  • VN-35E 楕円針 / 7 ,560円 - SHURE V15 Type III
  • VN-35HE S楕円針 / 9 ,288円 - SHURE V15 Type III HE
  • VN-3G 丸針 / 6 ,480円 - SHURE V15 Type G

高音質を目指すならJICOのSAS針という選択だが、まずはサウンドの違いを楽しみたいので比較的価格が手頃なこの3周類の交換針を入手して聴き比べてみた。この3種類は同じ形状なので針ガードにカラーシールを貼って区別している。

これらの交換針の重量は同じなので、一度針圧を合わせれば、後は針を交換するだけで聴くことができるが、針圧での違いを聴くなら都度変えてもいいだろう。針圧範囲は 0.75g - 1.25g となっているが、よほどコンディションが悪いレコードでなければ1.0gで充分に再生できる。心配なら1.07g位といったところで十分。

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針圧を測るには、ぜひデジタル針圧計を使いたい。ゼロバランスをとってからトーンアームの目盛りでは合わせても大きいと0.5g位の差がある。カートリッジを交換しても確実に正しい針圧を設定できることは音質上重要だ。

VN-35E 楕円針

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これがTypeIIIとしては標準。一番聴き馴染んだサウンド。強いて言えば高域が細身で神経質な印象。低域には少しアクセントがあるが、オールラウンドなジャンルで聴ける。まずは、これで聴いてみて合わないようであれば丸針やS楕円針に変えてもいいだろう。大抵のプログレッシブロックやシンガーソングライター、ヨーロッパ系のジャズ、70年代以降のフュージョンやロックなども気持ちよく聴ける。クラッシックも悪くない。

もちろんレコードのコンディションや録音、マスタリングの音質によっても大きく変わる。高域がキツイ印象があるときは、アンプのトレブルを思い切ってグッと下げるとバランスが良く聴けることも多い。最近のアンプからトーンコントロールがなくなったのは本当に残念。

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細身で神経質なところのある高域は、Siouxsie & The Bansheedsや4ADレーベル、Factoryレーベルといったなニューウェーブに実にマッチして独特の緊張感をもたらしてくれる。

VN-35HE S楕円針

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S楕円針は音溝への追随性を高めたチップ形状で、より正確に音溝の情報を得られるようになっている。つまり盤のコンディションがダイレクトに反映されるので、ラフに扱われていたようなレコードには不向き。この針が本領を発揮するのは状態の良い高音質盤となる。そうしたレコードを再生するとハイレベルのアナログ再生を満喫できる。

音の傾向としては滲みのない正確なサウンド。低域は音像が締まっているが楕円針よりも確実に伸びている。中高域も強調感が少なくスッと伸びていながら、音楽の強弱や表情も豊かに描き出す。残念ながら、どのレコードでも高音質とはいかないが、この針にマッチしたときの再生音は素晴らしい。

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このPink Floydのキーボード奏者だったRichard Writeの最初のソロアルバムは、日本ではSONYのMaster Soundシリーズの1枚としてリリースされた。地味な印象があるが、細かいニュアンを多く含んでいて、S楕円針だとその細部まで見通しがいい。

VN-3G 丸針

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実はTypeIIIシリーズに丸針があったとは最近まで知らなくて、交換針を探していて丸針があることを知ったのだった。丸針は楕円針に較べるとレンジは限られるが、中域を中心にしたパワーのある再生音が魅力。

60年代のロックやジャズ、古いクラッシックなどは、やはり丸針が似合う。特に当時のラフな米国盤や日本盤も丸針で聴くと勢いがあっていい。同じ丸針でもM44Gのように強烈な個性で聴かせるのではなく、ある程度バランスを保っている。この点がリスナーによっては「弱い」と感じるかもしれないが、TypeIIIらしい個性は充分に感じられるし、僕は「M44Gのアップグレード版」的な感じで気に入っている。

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やはり、Ten Years Afterのアルバムは丸針がマッチする。Ten Years Afterも今年になって集めているアーティストで、以前はブルースロックバンドという先入観があったが、実際に聴いてみるとジャズの要素もあり、実験的なところもあり、と今聞くといろんな要素が楽しめてフェバリットバンドになりつつある。

このように針を変えるだけでも違ったサウンドを楽しめる。カートリッジを変えるようも針交換は簡単だし、レコードを変えたら、サッと針を変えて再生できて便利。本当なら曲ごとに変えたいほど。

そもそも時代もジャンルも違う多種多様なレコードを同じカートリッジと針で全て再生することは無理があるように思う。まあ、例えばDL-103は放送局用にそうした目的で開発されたカートリッジだが、僕も長年使ってみたけど確かにオールラウンドでそつなくどんなレコードでも破綻なく再生してみせるが、じゃ、それが音楽として面白いかというと、少なくとも僕にはそうではなかった。それで、MCではなくMMカートリッジ 、それもSHUREのカートリッジ に回帰することになったわけだ。

最近、オーディオテクニカからボディは共通で針のタイプ違いでシリーズ化したVMカートリッジ シリーズが発売になっているが、手軽にサウンドの違いが楽しめていいことだと思う。

僕の次の狙いは、M44G用のサードパーティの各種交換針を試してみることかな。