Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

レコードを買うことよりも聴くこと - 悩んで買って繰り返し聴くことで見えてくること

COVID-19の前は仕事の打ち合わせがあると、その帰りにレコード店に寄って買っていたりしたが、パンデミックになって全てリモート会議に移行して便利になった分、そうしたチャンスはなくなり、たまに学芸大のサテライトに散歩を兼ねて行く程度になってしまった。

オンラインショップではDiskUnionの「お買い得品」を見るのが好きで月に5枚〜10枚ほど買っていたが、これも6月末に情報漏洩があってサイトを閉鎖したので(最近再開したが)、買うこともなくなった。たまにAmazonをチェックする程度。

そんなわけで、Bandcamp.comやApple Musicでいろいろ聴いてはいても、全体としては最近レコードを買うことはずっと減っている。

繰り返し聴くことが増えたが、いつも新鮮に感じる

購入ペースが落ちて良かったこともあって、昔のアルバムが繰り返しターンテーブルに載るチャンスが増えて新たな発見がある。以前は特異なアルバムと思っていたのが改めて聴くとそうでもなかったり、オーディオのコンディションも日々変わっていくので、以前は音が良くないと思っていた盤が、そんなに悪くなかったりとかいろいろ。

ただ、20年前、40年前、50年前のアルバムであっても聴いて懐かしいという思いは一切ない。僕が興味があるのは今の自分にとってどんな意味があるかだけ。もちろん音楽史的な変遷とか、位置付けや評価が変わっていることは理解するけど、その上で、その音楽を聴いている今の自分との関係性が重要だったりする。レコードに刻まれた音楽は同じかもしれないが、自分がどんどん変わっていくので、いつも新鮮に感じることができる。

このThis Heatのアルバムも、1979年のリリース当時は、Punk, New Waveの文脈の中のアバンギャルドだったが、今聴くと初期の未分化なPost Punk, Post Rockに位置付けられるのだろう。従来の価値観と新しい価値観が入れ替わる交差点にあるような音楽で、ソリッドな演奏は色褪せない。

他にもJoy Divisionはもちろん、TuxdomoonやDead Can Dance、Mgazineもそうだし、現代音楽もフリージャズも繰り返し聴いてきた。音楽は時間を超える存在になる。そして、そうした音楽を起点として、ジャンルを超えて耳を傾けるものが広がっていく。

自分の中のアルバム2,000枚のリミット

特にストリーミング時代ではスクリーンにタッチするだけで即座に聴くことができる。ただ、その全ての膨大なライブラリを聴くことは時間的に不可能だし、そこにどんな意味があるかも疑わしい。ただなし崩し的に聴くものが増えていっても量は質に転化しない。

これまでも、レコードやCDの枚数は引っ越しや生活の変化で増えたり減ったりしてきた。ピーク時は5,000枚近いときもあった。プログレに始まり、同時代のパンクやニューウェーブ、あるいは現代音楽、フリージャズ、レゲエやサイケデリックなど、一つのジャンルを集中的に聴き深める性癖があって、そうなるとただ資料的に確認するためにだけ購入して聴くものも増えていき、音楽を楽しめていない自分に気がついてしまうと、繰り返し聴くだろうものを少しだけ残して処分することになる。

そうしたことを経て、自分が所有するのは2,000枚というリミットを感じている。2,000枚を超えると、ただちょっと聴いてみたいだけで、レコードラックにあるだけのものが増えていくだけ。繰り返し聴き、自分にとって意味のあるアルバムは2,000枚までなんだろう。

専用ラックに入るところまで

レコードを入れるのに以前はエレクターのラックを利用していたが、数年前にレコードとCDの壁面収納をセミオーダーで設置してからは、「このラックに収まる範囲」というのをルールにしている。

今のところアナログレコードが1,800枚位でCDが約1,000枚、CDのうち10%はレコードと同じタイトル。何度も繰り返される『リマスタリング』再発には付き合わないことにしたので、今後重複が増えることはないだろう。

レコードラックの部分は2,000枚程度で一杯になるだろう。目下の悩みは数十年を経たレコードジャケットの痛み。ジャケットの背やレコード取り出し口が裂けてくると保護のためにビニールの外袋に入れるだが、数が増えるとビニールの厚み結構あって、2,000枚は入らないかもしれない。

そうした制限があると、「あと200枚は何を手にするのか」に慎重になる。何でもストリーミングやYouTubeで聴くことができる時代だとなおさら。つまり、そういった世界にはないもの、あるいはどうしても自分の手に持って聴き続けたいもの、という選択になっていく。

最初の気持ちを忘れないこと

1972年に自分で最初に買ったアルバムが、上のタイトル部分の写真のHawkwindの『Doremi Fasol Latido 』。裕福ではなかったので、同じレコードを何度も聴いていた。レコードが2枚、3枚と増えて行っても、学校から帰ればその数枚のレコードを何度も入れ替えてかけていくことの繰り返し。

限られたお金の中でどのレコードを買うかを悩みに悩み、繰り返し聴くことの楽しみをその時に見つけのだろう。そのときの気持ちは今でも残っているし、そうした感覚を失わないようにしたい。

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