Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

四人囃子 / 一触即発 - 狂った初夏の陽射し

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日本のロックを聴かないかというと、そうではない。一番初めはTVで見たモップスから外道、遠藤賢司、コスモスファクトリー、フラワートラベリングバンド、PYG、裸のラリーズや東京ロッカーズの頃は、フリクション、ヒカシュー、自殺、8 1/2、ボルシー、プラスティックス、P-モデルなど。アンダーグラウンドでは不失者、灰野敬二、光束夜、マーブルシープ、ハイライズ、マヘル、シェシズ、イディオットオクロックなどなど、ライブハウスに毎晩のように通った時期もあったし、相当アルバムも買っていた。

僕の中で「日本のロック」を強く意識した最初のグループがこの1974年にリリースされた四人囃子の『一触即発』。全曲オリジナルで日本語の歌詞。単純なハードロックでもビート音楽でなく、プログレッシブでサウンドは洗練されていて、シャウト一辺倒のボーカルではなく、歌詞は歪んだ心象風景を描いたもの。最初に買ったのがいつだったのか思い出せないが、このアルバムを聴くと初夏の強い陽射しと『空が破れる』という『一触即発』の歌詞が今でも僕の中でシンクロしていく。

部分的には、EL&PやPink Floyd, Deep Purpleなどからの直接的な影響があちこちにあるが、楽曲全体としての完成度は高いし、なんといってもバンドのグルーブ感、ドライブ感が、楽曲を説得力あるものにしていて歌われている風景が津波のように眼前に押し寄せてくる。

40年以上たって聴き直しても、あのときのエネルギーがそのまま閉じ込められている。音楽が困難な社会の生きる若者の精神の発露であり影響力があった時代。

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この写真のレコードはポニーキャニオン(オリジナルは東宝レコード)からの再発盤で買い直したもので『空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ』のシングル盤も収録されている。

四人囃子の当時の凄さが濃縮されているのは、この1973年六本木・俳優座でのライブ。元々は東宝レコードへのデモとして録音されたものだが、後でグループの許諾なく発売されてしまったと言われている。

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ことの経緯はともかく、ここで聴くことのできる四人囃子の演奏はエネルギーに溢れており、森園勝敏のギタープレイとボーカルはスタジオアルバムを遥かに凌ぐオーバードライブで、聴くものをその遠心力で彼方へ吹き飛ばしてしまうかのようで、何度聴いても圧倒される。

そう言えば、北欧プログレッシブロックバンドのAnekdotenが2008年に来日したときに、コンサートの翌日に新宿Disk Unionプログレッシブロック館でメンバーと偶然に遭遇し、雑談をする中で日本のロックバンドのおすすめを尋ねられたので、この四人囃子の『一触即発』を推薦した。ギターの二カラスはアナログ盤で、ドラムのピーターはCD盤で購入していったが、彼らはどんな感想を持っただろうか?

四人囃子は1990年以降も何度か再結成してライブを行っているけど、興味は湧いたがどれにも行くことはなかった。僕の中では大きな音で聴いていた『一触即発』のレコードとあの初夏の狂ったよう陽射しの記憶があまりも強く一体化していて、特別なものになってしまっているからだろう。

もうちっともこわくなんかないさ
あの空のさけめから
あいつが降りてきたって
もうとってもいい気分さ
キンピカの時計がいったいどうしたって
みかん色の雲がすごい速さで
みんなを乗せてみどり色の星へと


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