Thinking is The Form

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

いろんなジャンルの中古レコードを購入 - レコードを聴いていると考えさせられることも多い

学芸大にある中古レコード店「サテライト」。歩いて片道30分ほどなので月に1回程度散歩を兼ねて訪ねている。そのくらいのペースがちょうどいいのか、毎回色々と購入してしてしまう。お店のサイズ感も僕にもあっているのかもしれない。今回はいろんなジャンルで8枚を選んだ。

Al Kooper / Easy Does it(米国盤)

アル・クーパーは米国のソングライターでブラッド・スウェット&ティアーズの創設メンバーであり、ボブ・ディランのバックでオルガンも引いていたし、後年はレイナード・スキナードやチューブスなどのプロデューサーでもある多彩なミュージシャン。

彼の音楽を聴くようになったはごくごく最近のことで、ちょっと変わった完全主義者というか、ほとんどの楽器を自分で演奏したり、楽曲も個性的なところあり、ポップなんだけど「奇妙なねじれ感」がある。 このアルバムは1970年の3作目で2枚組。タイトルは「あんまり気張るな」という意味か?

Marianne Faithfull / Strange Weather (米国盤)

マリアンヌ・ファイスフルがヘロイン中毒から復帰した1987年のアルバム。全編のトーンはライナーにもあるように、ロッテ・レーマンやマレーネ・デートリッヒを思わせるようなワイル、ブレヒト的なキャバレーソングのイメージ。ただ、それがハスキーな彼女の声に合っている。

演奏で特筆すべきはビル・フリーゼルのギター。彼のギターがこのアルバムを凡庸な歌モノになることを防いでいる。それに、数曲でだが、ボイドイズのギターだったロバート・クインの鋭いギターも聴ける。 10代の頃の「As Tears Go By」の再演も聴きもの。人の生きていく時間の重みを感じる。

Genesis / Seconds Out (米国盤)

創設メンバーのピーター・ガブリエルが脱退し、フィル・コリンズがシンガーとしてフロントマンとなったジェネシスの1977年のライブアルバム2枚組でピーター時代の作品を含めて演奏されている。Supper’s Ready全曲のライブはこれでしか聴けなかった。

独裁的なピーターが脱退して、民主的なバンドになったせいか、演奏ものびのびとしていて説教臭いところがなく、僕は好きなライブアルバムなのだが、コアなジェネシスファンには評判が今ひとつ。この作品を最後にギターのスティーブ・ハケットは脱退する。

Passport / Garden of Eden (独盤)

パスポートはサックスのクラウス・ドルディンガーをリーダーとするドイツ(西ドイツ)のジャズ・ロックグループ。1971年のデビュー当時はプログレッシブ色が濃かったが、1975年ごろからフュージョン色が強くなり、テクニカルな演奏と人間臭いサックスの微妙なバランスが魅力。

この「エデンの園」と題されたアルバムは、1978年の作品でイスラエル録音。タイトルからして何か劇場向けのイベント用の作品かもしれない。疾走感のある演奏で心地良い。

Stomu Yamashita’s East Wind / One by One (英国盤)

日本人パーカッショニストの「山下ツトム」の70年代ロンドン時代の1974年のアルバム。同名のF1レースを題材した映画のサウンドトラックとしてリリースされたもの。

聴きものはA一曲目の三部作でハイスピードなパーカッションを軸にヒュー・ホッパーのファズベース、ゲイリー・ボイルの早弾きのギターがドライブする。後のプロジェクトとなる「GO」への萌芽を感じさせる。

Carla Bley / Dinner Music(日本盤)

カーラ・ブレイは、アバンギャルドなジャズコンポーザー、キーボードプレーヤーだが、このアルバムでは当時人気のフュージョングループ「スタッフ」とコラボレーションしたリラックスしたアルバム。

といっても、そこはカーラ・ブレイなので一味スパイスが効いている。カーラの計算されたオルガンプレイ、ラズウェル・ラッドの説得力のあるトロンボーンなどリラックスした中でも緩まないテンションがある。

Robert Casadesus /Starlatti, Rameau(米国盤)

サテライトにはクラッシックの中古レコードもかなりある。これは1950年代後半と思われる古い米国盤で、次のショスタコビッチのレコードと同じオーナーのものだったと思われる。 年数の割にジャケットも盤面も非常にキレイでレコードを大切に扱う趣味人だったのか。1ドル360円の時代にクラッシックの輸入版を買い求めて教養として楽しんでいた裕福な方なんだろう。

ロベルト・カサドシュはフランス人のピアニストで、そのリリカルな表現はどドビッシーやラベルといったフランス音楽はもとより、この1952年に録音されたスカルラッティやラモーでも明るく響の豊かな演奏を聴かせてくれる。

Shostakovich / Plays Shostakovich (米国盤)

古いクラッシックのレコードのもう一枚はショスタコビッチの珍しい自作自演のアルバム。ショスタコビッチは、スターリン、フルチショフ、ブネジネフというソビエト連邦指導者の時代を生き抜いた作曲家。音楽をはじめとする芸術は、共産党と人民に奉仕するものである、とされた時代で、多くの芸術家が、政府の顔色をうかがい、その地位を剥奪されたり、収容所に送られる恐怖のもとで作品を作っていた。

ショスタコビッチも時には厳しい批判にさらされながらも、その時代を生き抜いた。彼の交響曲は共産党政府の意向を満足させるものでありつつ、目立たない室内楽の分野は個人的な感情が反映されている。

この「24のプレリュードとフーガ」から作曲家自らが6曲を演奏したアルバムは、非常に厳しい、思いつめたところのあるような音楽。どんなに絶望的な状況下であっても理想を求める希望を捨てないかたい意思を感じさせる。それは、この録音から半世紀以上を経た今の時代なっても相変わらず大切なことのままなのだが。

こうしてレコードを聴いていると、ただ楽しいというよりも、いろいろと考えさせられることの方が多いかもしれない。