Thinking is The Form

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

David Bowie / Pinups - 新たな自分を探す旅の入り口

中古レコード店での買い物は、本当に探していたレコードがあって買えそうな価格の範囲であれば嬉しいが、それだけではなくて、昔から何となく気になっていたレコードとか、以前は持っていたが手放してしまったことを後悔しているようなものが、手頃な価格であるとつい買ってしまう。むしろそうした買い物の方が楽しかったりする。 そんな最近の買い物だった中古レコードをシリーズで書いてみたい。

まずは、David Bowieの『Pinups』。彼の傑作ではないが、多分なくてはならない1枚。このアルバムを大切に思ってくれるボウイファンは信用できるような気がする。

大成功をおさめたキャラクター、ジギースターダストを止めた後、アラジンセイン続いて次なる自分自身を探していた彼が1973年10月にリリースしたアルバム。内容はボウイ自身が1960年代に聴いていた、フー、キンクス、ヤードバーズ、ピンクフロイドなどの楽曲のカバー集。いずれも当時の彼らしいキッチュなグラムロック テイストの解釈。

ジャケットに一緒に写っているのは、60年代後半の選曲に相応しいモデルのツイッギー。このカバーフォトはツイッギー後に夫となるマネージャが撮影したものらしい。素肌にビニールのラップしたような姿は、数年後の映画「地球に落ちてきた男」の異星人の風貌そのもの。あの映画では、異星人はラジオで地球のことを聞いていた、という下りがあるが、このアルバムは異星人(ジギースターダスト)がラジオで聴いていた音楽をカバーした、というコンセプトだったのかもしれない。

インナースリーブにはThe Kinksの「Where have all the good time gone」の歌詞だけが記載されている。曰く、昨日ことのようだった/僕達が幸福だった/あの良き日々はいったいどこへ消えて行ってしまったんだ.... と。

ボウイはこのアルバムの翌年、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」の影響下にある『Diamond Dogs』をほぼ一人で作り上げることになる。さらに、米国に拠点を写し、アメリカの狂気の写し鏡のようなホワイトソウルを極めた『Young American』につながっていく。そうした彼の厳しい精神の極北への旅への入り口にあるのが、この『Pinups』なのだろう。