Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Easter Everywhere / 13th Floor Elevators - 開かれた第3の瞳は何を見るのか - 1967年の重要アルバム

テキサスのサイケデリックロックバンド、13th Floor Elevatorsのセカンドアルバムで、1967年にリリースされた最も重要なアルバム。個人的には、ツアーを止めてスタジオに閉じこもり幼年期へ後退し始めたグループが生み出した「Sgt. Pepper's」よりもこの「Easter Everywhere」のほうが遥かに時代を超えた存在のように感じる。

13th Floor Elevatorsはもちろんファーストも素晴らしく、サイケデリックサウンドを定義したアルバムだが、このセカンドはさらにそのはるか先へと飛躍を遂げている。他の同時期のアルバムとは次元が異なると言ってもいいかもしれない。

7番目のチャクラが開くとき

アルバムカバーに描かれた太陽は、東洋の原始の太陽で 、7番目のチャクラと呼ばれる第3の瞳が開いたことを象徴しており、全体の金色は仏教の宗教色でもある。タイトルの「Easter」は、仏教やヒンドゥー教による、より高次な意識(神の意識)のことで、それをキリスト教的な意識と統合しようとしたもの。メンバーで本作の多くの曲に関わったTommy Hall 曰く、

『Easter Everywhere』は、今、人々の間に響いているこの概念の組み合わせまたは集大成のようなもの。誰でもピンとくるかもしれないが、東洋と西洋の間に中間点があり、それは自分の感情の使い方を学び、感情が何であるか、なぜそれがそこにあるのか、そして自分が落ち込んだ場所に囚われるのでなく、喜びの観点からそれをコントロールする方法を獲得すること。それは、いたる所で死からよみがえるという考えです。(英語版WikiPediaから引用)

モノクロームなモノミックスとカラフルなステレオミックス

伝説のサイケデリックアルバムとして、米国オリジナル盤は表示に高価だが、中でもAM放送局向けに100枚程度プレスされたというモノミックス盤のオリジナルはさらに高価格で取引されている。僕はあまりモノミックス信仰やオリジナル盤崇拝主義者でないので、これまで入手しやすかった正体不明の再発盤LPやCDで聴いていた。

今回、何度目かの再発で、ようやくモノミックス盤とスレテオリマスタリング盤のアナログ2枚組としてリリースされたので購入。レーベルはCHARLYなので、あまり変な再発でもないだろう。盤面は写真のようなサイケデリックなカラー。

モノミックスはもうマスターテープは残っていないので、おそらくレコード盤から起こしたものだろう。それでもノイズが気になることもなく良好なマスタリング。中低域が充実したどっしりしたピラミッド型のサウンドで、虚飾を一切廃したモノクロームのリアリズム。このリアルなサウンドは確かに魅力的で、オリジナル盤が高価格で取引きされるのも分かる気がする。バンドの演奏の一体感や大きくうねるようなグルーブ感、音楽的な説得力は、このモノラルミックスにしかないものだろう。

ステレオミックスのリマスタリングも良好で、手持ちの再発盤とは雲泥の差があり、全体がクリアなだけでなく品格がある。モノラルと比較すると、ステレオミックスはリバーブなどのエフェクター処理がよくわかるし、音調は明るめで抜けがよくてカラフル。モノラルとは全体の印象が違う。モノがディープサイケなら、ステレオは万華鏡サイケデリックか。

短命に終わったグループだが、その影響力は大きい

13th Floor Elevatorsは、地元テキサスのミュージックサーキットでは成功したが、全米的な人気を獲得するまでに至らず、レーベルのInternational Artistもそこまで力のあるレーベルではなかった。バンドは1968年に『Bull of The Wood』をリリースして解散状態となる。ボーカルとギターのRocky Ericsonは、精神病に蝕まれながらもサイケデリック、アンダーグラウンドロックの生ける伝説として断続的に活動を繰り返し、2019年に亡くなる。

彼らのレガシーは、サイケデリックロックだけでなく、パンク、ニューウェーブ、シューゲイザーやポストロックバンドなどに聴くことができ、Primal Screamはこのアルバムのオープニングナンバー「Slip inside this house」をカバーしている。

13th Floor Elevatorsはたった3年の活動期間だったが、残したものは大きい。

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