Sound & Silence

音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

512 / William Eggleston - 黄昏時の美しさ

以前、記事に書いたアメリカを代表する写真家、William Egglestonのまさかのセカンドアルバムがリリースされた。1枚目はKorg M1をバッハ風のフリーフォームで弾いていくものだったが、この2枚目は最初の1曲以外はスタンダードナンバーを、それもかなり自由に弾いている。

1枚目のリリースは70代後半の2017年だったが、2023年で彼は84歳になる。今回はピアノ主体で、サックスやバイオリンのゲストが参加している。1曲目でチャイムを鳴らしているのはBrian Enoらしい。 確かにEnoが好きそうな音楽ではある。

William Egglestonは、アメリカの風景を撮り続けた有名な写真家ではあるけれど、音楽家としはアマチュア。ただ、今のようにアマチュアとプロの境界線が曖昧になる中で、問われるのはその音楽の在り方だったりする。その分、自由に自分の音楽を追求できるし、その音楽が求めている聴き手に到達する可能性も高くなる。偉大なるbandcamp.comの時代。

老人が、思いのままにピアノを弾く。それが美しい。辺りが静かに暗くなっていく風景の中に、ポツリ、ポツリと音が降り注いでいく。「煙が目にしみる」、「 虹の彼方に」というスタンダードナンバーが、彼の人生が濃縮されたフィルターを通して演奏されると、ノスタルジックで視覚的なものであることに気が付く。写真家だからなのだろうか?

それは、18分におよぶ「Onward, Christian Soldiers (「見よや十字架の」讃美歌)」の演奏にもよく現れている。この曲は本来は軍隊の行進曲風なものなのだが、この演奏の歩みは違う。歩みを止めたり、違う方向に進んでみたりと、まるで自分の過去を振り返りながら歩んでいく。この演奏にはブラームスの最晩年のピアノ曲を思い出させるものがある。

老いていくことが、どういうことなのか、その謎が少し理解できた気がした。

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