Sound & Silence

本多重夫の音楽、オーディオ、アートなどについてのプライベートブログ

Music

ベートーヴェン/後期弦楽四重奏曲 - 耳が聞こえなくなった作曲家の音楽

ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770 - 1827)は学校の音楽室にこのジャッケットのような胸像が飾ってある大作曲家。年末なれば「第九」の「歓喜の歌」のメロディが流れてくる。ドイツを除けば日本ほど第九が好まれている国はないだろう。元はドイツ…

SHURE カートリッジ V15 Type3のウッドケース化 - ハイファイからロウファイ、音楽に豊かな響きを加える

これまでもSHURE M44GやM75EB Type2をシルバーハートの黒檀やローズウッドの材質でウッドケース化を行なってサウンドの変化を楽しんできたが、いよいよV15 Type3のウッドケース化をやってみた。今回はその話を。 カートリッジとウッドケースの関係 カートリ…

Monument / Molchat Doma - 静かに溺死させてくれ、と歌うダンスミュージック

最近気になっていたレコードを偶然見つけた。それはMolchat Doma の『Monument』。このグループのことを知ったのは、YouTubeのおすすめに表示されたこのビデオを見たことがきっかけだった。 www.youtube.com チェルノブイリの跡地を思わせる共産主義を象徴す…

The Bridge / Thomas Leer & Robert Rental - エレクトリックでモノクロームな世界

1979年のリリースされたダークウェーブ、ダークアンビエント、インダストリアルテクノの原点とも言えるアルバム。この作品の影響を受けた人も少なくないだろう。最近リイシューされて入手しやすくなったのはよかった。ストリーミングでも聴けるようになって…

Pink Floyd / Animals (2018 Remix) - 混迷したハードロックバンドとしてのピンク・フロイド

リミックス、リマスターが続くPink Floyd。1977年にリリースされたアルバム『Animals』の2018年盤リミックスが単独でリリースされた。今、聴いているのはApple Musicの192KHz/24bitのハイレゾストリーム版。 コンセプトを変えて混迷の末のリリース この『Ani…

レコードを買うことよりも聴くこと - 悩んで買って繰り返し聴くことで見えてくること

COVID-19の前は仕事の打ち合わせがあると、その帰りにレコード店に寄って買っていたりしたが、パンデミックになって全てリモート会議に移行して便利になった分、そうしたチャンスはなくなり、たまに学芸大のサテライトに散歩を兼ねて行く程度になってしまっ…

スティーブ・レイシーとの対話 / ジェイソン・ワイス編 - 言葉で追う孤高のジャズミュージシャンの生涯

スティーブ・レイシー(Steve Lacy 1934 - 2004)は、ソプラノサックスの可能性を追求し続けたジャズ・ミュージシャン。生前は残念なことに、日本のジャズジャーナリズムでは、インプロバイザーとしての側面ばかりが強調され過ぎたところがある。まあ、時代…

Roger Waters / This is Not a Drill - これが訓練でないとしたら、いったい何なのか?

元Pink Floydのロジャー・ウォーターズ(Roger Waters )の4年ぶりのツアーが始まった。今回のタイトルは『This is Not a Drill(これは訓練ではない)』。前回の『US+THEM』ツアーでは、当時のトランプ大統領を激しく攻撃するのがメインテーマだった。トラ…

Camembert Electrique / Gong - 自由であれと伝えるヒッピーの伝道師

Gongは不思議なグループで、1960年代末に初期にSoftMachineがフランスで演奏した後で帰国の段になったら、メンバーのDaevid Allenがドラッグかビザの問題で英国に入国ができなくなってフランスに止まったことには始まっている。元々Daevid Allenはメンバーの…

Hellfest 2022 - 今、ヘヴィメタルは最も寛容なジャンルなんだろうか?

EUの文化事業の一環であるYouTubeのARTE Concertのチャンネルで、今年は観客を迎えて開催されたヘヴィメタルフェスティバル『Hellfest』の様子を見ることができる。『Hellfest』はフランス西部の都市で開催されるイベントで、今年は6月17日から26日にかけて…

Script of The Bridge / The Chameleons - 音楽と共に老いていく幸福なノスタルジア

この1983年にされたアルバムのことはつい最近まで全く知らなかった。The Chameleonsは英国マンチェスター北部で絶大な人気があったローカルバンドだったらしい。マンチェスターといえば、Joy Divisionを擁したFactoryレーベルの本拠地でもあり、僕も当時多く…

ウエスタン・エレクトリックのスピーカーケーブルを聴く - あるがままに音楽を聴かせる不思議なケーブル

Western Electric(ウエスタン・エレクトリック)のスピーカーケーブルの話。ウエスタン・エレクトリックのビンテージケーブルというのは、一部では絶対的な支持があり、カルトアイテム的な印象を持っていた。 ウエスタンエレクトリック社は1869年に電信設備…

STERLING刻印とMASTERDISK刻印の話 - カッティングによるアナログレコードの音の違い

アナログレコードのレーベル面がある内側の無音部分(ランアウトとも呼ばれる)には、そのレコードに関する情報が刻印されていて、コレクターや音の良いレコードを探す人にとっては重要な情報源となっている。それはレコードが制作されるプロセスとも密接に…

学芸大学「サテライト」へ久しぶり出かけて中古レコードをいろいろ買う - David Cross, Michael Hoenig, Codes In The Clouds, Steve Marcus, Michael Mantler, Olivier Messiaen

これまで何度か書いたことのある学芸大学にある街の中古レコード屋さんの「サテライト」。去年は2か月に1度くらいは行っていたが、仕事が忙しかったりいろいろあって今年になってから初めての訪問となったが、お店はいつも通りの雰囲気。あまり変わっていな…

SRSQ / Unreal - すべてのものが暗黒の中にあっても私は太陽のからの瞬き

この1年ちょっと探していた女性シンセ、ダークウェーブアーティストのSRSQ の『Unreal』とタイトルされたレコードが入手できたのでその話を。 多くの若者、アーティストが犠牲になったゴーストシップの火災 このアルバムについて書くにはまずこの事件に触れ…

シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルン、バッハ - 古いボックスセットのレコードを聴く

クラシックの箱物LPセットの話。ストリーミングの時代になってもロックやジャズのアニバーサリーボックスセットは手を変え品を変え登場するが、1960年代後半〜70年代後半に多かった豪華なクラシックのボックスセットは姿を消してしまったように思う。今では…

Scott Walker / Bish Bosch - スコット・ウォーカーは過去を振り返らず闇の中を進む -

去年の終わり頃からScott/ Walkerの晩年のアルバムをまとめて聴いている。聴けば聴くほど深みにはまりそうな音楽で、彼の晩年のアルバムに比べたらDavid Bowieのベルリン三部作ですら当たり障りのないポップなアルバムに聴こえてくる。 多くのアーティストは…

ECMレーベル - リバーブのつまみを握りしめた魔術師の世界

オーディオ雑誌の『STEREO』の特集が「ECMとオーディオ」だったので久しぶりに購入してみた。ECMレーベルとしての最初のリリースが1969年。それから50年を経てもオーナーのマンフレート・アイヒャーはずっと君臨し、レーベルのサウンドトーンも一貫している…

2021年に手にしたアナログレコードから - 音楽は言葉では説明できないものを運ぶことができる器

去年も2020年によく聴いたアルバムの記事を書こうとしたのだけど時間切れでボツにしてしまったので、今年こそ2021年版を書いてみる。間に合うかな? 今年もアナログレコードを中心に新譜も中古も100枚近く買ったのではないかと思う。昔と買い方が変わってき…

闇の中の男 / ポール・オースター - 希望の中で生きることができるなら

今年、2021年はニューヨークでの『9.11』のテロから20年の節目。日本時間では夜の11時過ぎの出来事で多くの人がテレビでリアルタイムで2機目の衝突を目撃している。僕はその前からテレビを持つのを止めてしまっていたし、インターネットも見ていなかったので…

LOW / HEY WHAT - 黙示録的な讃美歌 - 2021年ベストアルバム

『Low』は、1993年に米国ミネソタ州で、ギターとボーカルのAlan Sparhawkとドラムとボーカルの Mimi Parkerの二人で結成されたグループ。二人にベースが加わり3人のミニマル編成で音楽は非常にゆったりとした素朴なもので、所謂ローファイの代表的なグループ…

長く暗い夜を過ごすための10の音楽 - 自分を見つめ直すためのささやかな音楽の旅

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選」という企画で書いてみる。僕は子供のころから暗い音楽、普通でない一風変わった音楽が好きだった。そういった音楽を聴くと安らぎ、その場所に安心していることができる。そして、そうした音楽を聴くといつも考え…

Barbara Hannigan / Vienna: Siecle - バーバラ・ハンニガン / ウィーン:世紀末 - 100年前の音楽を今の歌として歌う

Barbara Hannigan(バーバラ・ハンニガン 1971-)は、カナダ出身のソプラノ歌手で20世紀の現代音楽作品を得意とする。もちろんテクニックは素晴らしいのだが、それだけでなく作品への理解が深く表現力にも優れ、現代音楽の声楽曲がこんなに美しいものだった…

Pink Floyd / A Momentary Lapse of Reason(2019年 リミックス版) - ノスタルジーから逃れて

最近は旧譜のリマスターも一巡したのか、リミックスブームがロックやジャズのジャンルを問わず続いている。同じアルバムを何回リリースできるかギネス記録を目指しているような往年のグループの作品もあったりするほど。僕は基本的に「リミックス」ものは買…

ものがたり西洋音楽史 / 近藤 穣 - モダニズムの終焉と芸術音楽の終わり

著者の近藤 穣(1947-)は、武満徹の1世代下にあたる作曲家で、音楽的な傾向は武満徹に似ているように思う。それは線形的な音楽でミニマリズムではないが、響きは洗練された美があり、聴き手が作品との距離を自由にできる余白がある。 また、近藤 穣は著作も…

SHURE V15 Type IVをType IIIの交換針で聴く - AC3000MCのストレートアームを復活

山本音響工芸のツゲ材ヘッドシェルに取り付けて聴いていたShure V15 Type IV、どうもJICO製の楕円針が寿命なのか、最近音の伸びいまひとつ。Type IV用にJICOのSAS針を注文しようかとも考えたが、それも当たり前過ぎるしな....と考えて時間が過ぎていたところ…

Arushi Jain, Six Organs of Admittance, William Parker, Laraaji Alan Vega - 最近、AppleMusicで聴いているもの

Apple Musicがロスレス配信になってから仕事中によく鳴らしている。仕事をしながらなのでそんなに真剣に聴いているわけではないが、それでもその音にはっとするような瞬間がある。最近リリースされたものばかりではないが、そんな中からいくつかを。 Arushi …

Sunn O))) とオリビエ・メシアンの相関関係 - 響の中のメッセージに耳をすませる

少し前に米国シアトル出身のドローンメタルバンド、Sunn O))) の2009年のアルバム『Monoliths & Dimensions』の2枚組アナログ盤の中古をたまたま見かけて購入して聴いたことから始まる。Sunn O))) が所謂メタルバンド的なフォーマットでもない(ドラムがいな…

Arte Concert - 様々な音楽が、様々なアーティストから生まれくることを目撃する

普段はあまりYouTubeを見ないのだけど、偶然この「arte concert」 というライブシリーズを見て、どれも刺激的で啓発されるものがあった。調べてみると、arte.tv というEUのファンディングを受けている組織の文化事業のようで、アートやフィルムの他、オペラ…

Tangerine Dream / The Sessions II & III - 誰もいなくなってもグループ名は残り、そしてスピリットが継承された

Tangerine Dreamの創設者でその精神的、音楽的中核でもあったEdgar Froseが亡くなったのが2015年。もうグループは活動停止だろうと思っていたら残った3人のメンバーで復活。その新生Tangerine Dreamのインプロビゼーションの演奏だけを集めたライブ音源シリ…


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